家族について話す俳優の枝元萌さん(内山田正夫撮影)


「もう誰でもいいわ」と結婚

 鹿児島出身の父(77)は中学卒業後、大阪に集団就職しました。5人きょうだいの三男ですが、兄(次男)に「僕はもう勉強はいいから、働くから。お兄ちゃん大学行って」と支援したそうです。

 口数が少なくて、何考えてるか分からへんくらい。でもいっつも人に好かれてて友だちがめちゃくちゃ多い。聞き上手だから、周りの人が何でもしゃべってしまうみたい。居心地がいい人っていう感じ。陽気なのに無口な人もいるんだなと思って。

 今もサッシを取り付ける仕事をしていて、さらにゴルフ、野球、釣り。もうじっとしていない。スイカ、トウモロコシ、ジャガイモ、タマネギ…。趣味で、家の畑で何でも作ります。しかも、食べた後の種をまいて無農薬で自生させる。できた野菜を大量に送ってくれるのが楽しみで。ありがたいですね。

 母(74)はそんなアグレッシブな父を見て冷や冷やしているわけですよ。高齢でも車に乗ってすいすい遠出もするし。母は20回お見合いして父が20人目やった。もうなんか、誰でもいいわって思ってたんですって。そしたら、母のお母さんが「あの人は目がきれい」ってゆうたんです。それで結婚したらもう、たばこもギャンブルもしない、ただただ真面目に働く人。母が洗濯物をたたみながら私に言ったのが忘れられないんです。「あんたなあ、結婚はギャンブルやで。私はそのギャンブルに勝った!」

 こんな仲良しの夫婦はあんまり見たことないかも。母は野球に出かける父のために早く起きて必ず弁当を作る。父が会社で働いていたときも欠かしたことはない。冬も朝早く起きて、寒いからと父の服を温めるんです。一方の父は、母に口答えしない。ただ、にこにこと聞いている。

朝ドラ出演、認めてくれた母

 私は就職した酒造会社を辞めて上京し、劇団のオーディションを受けました。母は「まあ好きなことやったらいいんちゃう?」って言ってたのに、2、3年たつと「いつまでそんな遊びみたいなことやってんの」とかずっと言う。NHKの朝ドラに出た時、ようやく「あ、仕事してんねんな」って思ってくれたみたい。今は大阪で公演があると、夫婦そろって来てくれます。

 私は一人っ子なので、もし両親の介護が必要になったら仕事をしながら故郷に帰って面倒を見ます。私、両親に「もし介護が必要になったら施設に入れさせて」って冗談っぽく言ったんですよ。父は黙ってました。母は「うん、分かった」って言って悲しそうな顔をするんです。じゃあもう、行けるところまで自宅で面倒を見ようって。

枝元萌(えだもと・もえ)

 1976年、滋賀県出身。加藤健一事務所俳優教室修了後、舞台やテレビなどで活躍。2017年にNHK連続テレビ小説「わろてんか」、今年は映画「こんにちは、母さん」などに出演している。22年度芸術選奨文部科学大臣演劇部門新人賞受賞。11月24日〜12月3日(11月28日は休演)に東京・三軒茶屋で上演される「モモンバのくくり罠(わな)」に主演する。