物価高もあり、大学など高等教育にかかる学費の負担感が増している。国は2024年度から、奨学金など修学支援の対象となる世帯の年収の上限を引き上げたが、その仕組みは複雑だ。ファイナンシャルプランナーの山内真由美さん(55)にポイントを聞いた。

新たに「中間層の多子世帯」が対象に

 「今は制度改正の過渡期。支援を受けるには自ら調べ、申し込まないといけません」。首都圏などで高校生の保護者向けに進学資金ガイダンスの講師を務める山内さんは呼びかける。

山内真由美さん


 国は返済不要の給付型奨学金と入学金・授業料の減免を実施。従来、住民税非課税か、それに準じる世帯が対象だった。だが、2024年度から3人以上の子を扶養する多子世帯と私立の理工農系の学生については、世帯年収の上限を約380万円から約600万円(中間層)に引き上げた。

 新たに対象となった中間層の多子世帯は、住民税非課税世帯の4分の1まで奨学金と減免を受けられる。

来年度は所得制限なしで「無償化」へ

 多子世帯ではない私立理工農系の場合、奨学金は給付されないが、学費が比較的安い文系との差を是正するため、学校種別によって住民税非課税世帯の3分の1か4分の1までの減免を受けられる。成績や学習意欲も要件となる。

 中間層の世帯年収の上限とされる600万円はモデル世帯(4人家族)の目安。子どもが3人いる5人家族だと「798万円」が上限となる例も示されており、人数や親の働き方によって大きな差が生じる。

 2025年度からは多子世帯の子の入学金・授業料が、所得制限なしで「無償化」される予定。ただ、対象額に上限があり、超過分の支払いは必要になる。「常に最新の情報を得て、申し込みそびれのないよう気をつけて」(山内さん)

奨学金は?シミュレーターでチェック

 日本学生支援機構の奨学金は、高校3年生や卒業から2年以内の人向けの「予約採用」と、進学後に手続きする「在学採用」がある。予約採用は学校ごとに締め切りが異なるものの原則例年春、在学採用は春と秋の決められた募集時期に申し込む。

 毎年6月に更新される所得(住民税)の情報で判定するため、高校生の時に対象外となった場合も、進学後の秋以降に申し込むと奨学金を受けられることがある。対象になりそうかは、日本学生支援機構のホームページにある「進学資金シミュレーター」で大まかに把握できる。

 「奨学金は、入学手続きのための資金に充てられない点にも注意を」。大学の一般入試は2〜3月が多いが、推薦や総合型選抜なら早ければ前年の11月ごろ、専門学校なら10月ごろにも合格が決まり、入学金や前期授業料を支払うことになる。「前もっての準備が必要です」

 中学生くらいのころから、子どもと高校卒業後の進路や資金について話し合うことを山内さんは勧める。「『親が用意できる学費はこのくらいだから、あとは奨学金やアルバイトで協力して』と包み隠さず、早めにお願いすることが大切。進路を決める時期に突然伝えると、動揺を与えかねません」と指摘する。

教育ローンや貸与型の奨学金も利用可

 教育ローンや貸与型の奨学金も考えられる。

 日本政策金融公庫の教育ローンは、当面の1年間で必要となる費用が対象。山内さんは「まとまった額を一括で借りられるのが利点。入学後から月々振り込まれる奨学金とは異なり、受験や入学に必要なお金も賄えます」と説明する。固定金利で、5月1日現在の利率は年2.4%。1年前は1.95%だった。民間の教育ローンは変動金利が多く、多様な商品がある。

 日本学生支援機構の有利子の貸与型奨学金の利率は「固定方式」と、利率を5年ごとに見直す「見直し方式」から選ぶ。上限は年3%と決められているが、申し込み時点ではなく「貸与終了時」の利率が適用される。「借り終わるまで利率が分からず、上限の3%を前提に返済計画を立てると安心です」と山内さん。

 まだ子どもが小さい人に山内さんは「学費は必要となる時期が明確。まず、こつこつ準備し、その上で借りる際は返せるかどうか試算し、安易に借り過ぎないことが大切」と助言する。