11日で東日本大震災の発生から13年となりました。宮城県気仙沼市にある洋菓子店の店主が83歳の誕生日を迎えました。震災によって2度の岐路に立ちながらもお菓子作りに励む店主の13年、そして、いま思うこととは。

廃業の危機を救ったのは…

気仙沼市の内湾にある洋菓子店「ブリアン」。店主の千葉秀男さんは、3月11日が誕生日です。

TBC

洋菓子店ブリアンの店主 千葉秀男さん:
「83歳になったぞ。良いことすると長生きするんだ…」

洋菓子店ブリアンの店主 千葉秀男さん

千葉さんは、震災によって2度大きな岐路に立ちました。13年前のあの日、津波で店と自宅が全壊。廃業の危機を救ったのが、震災から1か月後にガレキから見つかった手書きのレシピです。

TBC

千葉秀男さん(当時71):
「真っ黒くなってしまって、全部拭いて。(Q どれくらい書き溜めていたのか?)何十年間の汗だね。宝物みたいな感じ」

2度目の試練が…

奇跡的に見つかったレシピに背中を押され、2012年10月に再建を果たした千葉さん。しかし、その4年半後、2度目の岐路が訪れます。

TBC

気仙沼市の区画整理事業に伴い、店を取り壊すことになったのです。

千葉秀男さん:
「しょうがねえんだ、俺ばっかりでないからな。やめようとは思わなかったけど、休むって言ったら注文がいっぱい殺到してさ」

TBC

3年以上の休業を経て2020年7月、前とほぼ同じ場所で再スタートを切りました。

TBC

千葉秀男さん:
「忘れないでみんなが待っていてくれてね。お客さんへの感謝が一番。お客さんが来るのが一番うれしいことだから」

22年になる千葉さんの相棒

震災前からこれまで千葉さんとともに厨房に立ち続ける人がいます。ブリアンで22年働く、千田佑香里さんです(42)。千葉さんのことを「仕事の鬼」と評します。

従業員 千田佑香里さん:
「仕事はすごく厳しいし絶対妥協しないし、強いし」

従業員 千田佑香里さん

時にはケンカをすることもあるけれど「愛情だとわかっている」と笑顔で語る千田さん。22年の師弟関係、あうんの呼吸でケーキやパンを仕上げます。

千葉秀男さん:
「(佑香里さんは)よくやっているなと思って…。褒めてつかわす」

83歳の誕生日、3月11日

そして、3月11日。地震が発生した午後2時46分。鎮魂のサイレンがなる中、千葉さんは店の外で海に向かって静かに手を合わせました。

TBC

千葉秀男さん:
「誕生日だけどね素直に喜べないんだな。見つからない人もいるしさ。大変なところを生きている人もいるし…」

複雑な思いを巡らせながら3月11日を過ごした千葉さん。83歳。変わらず厨房に立ち続ける職人の胸にあるものとは。

TBC

千葉秀男さん:
「俺の使命だからお菓子を作るのは。おいしいおいしいって言われるのがやっぱり一番職人は嬉しいことだから」