「フリースクール」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。フリースクールとは不登校などで学校に通うのが難しい子どもたちに、学習や体験活動の場を提供する民間の施設のことです。そうした子どもたちをサポートする活動が広がっています。仙台市内のフリースクールを取材し見えてきたことは。

「PASS ON」の活動とは

仙台市青葉区にある「はちまんこどもクリニック」。休診日だったこの日は、不登校の子どもたちのためのフリースクール「PASS ON(パスオン)」になります。現在、小学3年生から中学3年生までの5人が通っています。

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中学3年生の女子生徒:
「今は塗り絵をしています。学校だと先生があまり話しかけてくれないとか、寄り添ってくれる人があんまりいなかった。ボランティアの人が優しくて恵まれている感じがする」

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「PASS ON」の代表・今野朝奈さんです。協力してくれる小児科の一室を借りて週2回、不登校に悩む親子を受け入れています。

PASS ON 今野朝奈代表:
「私自身、娘が不登校という経験があって、すごく悩んだんですね。自分を責めたくなったり、周りを責めたくなったりして。(子どもだけではなく)お父さん、お母さんもとても悩んでいる場合が多いです」

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スタッフは今野さんを含め全員、ボランティアです。公認心理士や社会福祉士の資格を持つスタッフが遊びや学習を通して子どもたちの心のケアに努めています。

PASS ON 今野朝奈代表:
「やっぱり人と関わることで自分らしさというか、それぞれのその子らしさというか、このままでいいんだよって思えるような関わり方をしている。自分らしさを好きになるというか、それがきっかけで次の意欲に繋がればいいなと思う」

「不登校」の現状は…

「不登校」について、文部科学省は年間に30日以上学校を欠席した児童や生徒を認定しています。県内では、2022年度の調査で小中高合わせて7740人が不登校となっていて、千人あたりの人数は全国平均を上回っています。

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不登校の理由については「勉強が分からない」や「人間関係がうまくいかない」などが多くを占めています。

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仙台市内の私立高校に通う長谷川魁意さん(18)です。中学2年生の途中から3年生までの間、不登校でした。

なぜ不登校になったのか…

長谷川魁意さん:
「周りのみんなと合わせて何かをするというのが苦手で、かと言ってその周りと合わせられない自分を認めてくれるわけではないので、すごく嫌だなって居心地が悪いなって。出席だけとって帰ってきて、ずっと家にいて心も閉ざされていた」

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そうした中、母の勧めもあり今野さんらが運営するフリースクールへ通うことになったのです。

長谷川魁意さん:
「人と合わせられないとか、そういうのはマイナスイメージだけど、PASS ONの人はそれも魁意くんの個性だしそれを認めてくれる」

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母の晃記子さんも魁意さんの不登校が心配だったものの、PASS ONに通うようになってからは気持ちが前向きになったといいます。

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魁意さんの母 長谷川晃記子さん:
「周りの人には話ができなかったりとか、相談しても相手の方のお子さんが普通に学校に行けてたりすると、なかなか話がかみ合わない。私も自然体で相談できて、パスオンに来ているお母さんにも相談できて、そういうのですごく救われた」

魁意さんがフリースクールで気づいたこと

幼いころから絵を描くことなど自分を表現することが好きだという魁意さん。

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ペンのみで描く絵は個展を開くほどの実力。打ちあげられた花火を様々な花で表現した絵は、仙台七夕のポスターや広告などのコンテストで入賞しました。

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長谷川魁意さん:
「スタッフの皆さんと遊んだり絵を描いたりすることで自分の心が癒される。ずっと家にいても何も生まれないので(PASSON)に行って良かった。こんなにも自分の表現を褒めてくれて、自分を認めてくれる人がこんなにたくさんいたんだなって気づきもあってすごく良かったと思う」

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PASS ONに背中を押されたという魁意さん。今は高校にも楽しく通っています。

PASS ON 今野朝奈さん:
「みんなデコボコがあって、それを好きになれたら、そこが自信になって、例えば学校に戻るとか、自分の夢を見つけるとか、意欲の原動力になると思う。自分らしさを好きになるって全部の土台になると思う」

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子どもたちの背中を押すだけではなく、その個性に寄り添い安心できる場所を提供するPASS ON。不登校が増えているいま、それぞれに合わせたサポートが求められています。

魁意さんは不登校のままだったら絵を描くことも、絵を褒めてもらえることもなかったと話していました。PASS ONでは不登校に悩む親子の相談を電話やSNSで受け付けています。家族だけで悩まないでほしいと話していました。