“爆買い”の果てに…中国の“ブランドバブル”崩壊 背景に「共同富裕」政策も

TBS CROSS DIG with Bloomberg6/17(火)7:00

“爆買い”の果てに…中国の“ブランドバブル”崩壊 背景に「共同富裕」政策も

“爆買い”の果てに…中国の“ブランドバブル”崩壊 背景に「共同富裕」政策も

近年、高級ブランド市場は芳しくない状況に直面しています。その大きな原因は、長らく成長の牽引役を担ってきた中国市場で異変が起きた為です。一体何が起きているのでしょうか?

高級ブランド市場は2年で5000万人の顧客を喪失

これまで中国市場は世界の高級ブランドの成長を支える最大の市場であり、その売上は数百億ドル規模にまで達していました。

2023年の世界収益を見ても、アジア市場が北米市場や西ヨーロッパ市場を凌駕するほどでした。

この変化には、パンデミックの影響が大きく関係しています。

2019年、中国人が購入した高級ブランド品の約3分の2は、ロンドンやパリなどの海外旅行先で購入されていました。

しかし、コロナ禍で国境が閉ざされたことで、その多くが中国国内での購入にシフトしました。

結果として、2020年から2023年にかけて中国国内での高級品消費が急増し、高級ブランド業界は不安定な中国経済への依存を深めることになったのです。

そして、その依存は、いま裏目に出ています。

世界の高級ブランド市場は売上が落ち込み、この2年で約5000万人もの顧客が高級ブランドから遠ざかりました。

LVMH、ケリング、モンクレール、バーバリーといった欧州の主要高級ブランドは、2024年に市場価値で数千億ドルを失いました。

特に業界最大手のLVMHは、工事が止まったままの店舗が象徴するように、2008年の金融危機以来となる最悪の業績に直面していると言われています。

何が問題で、このような結果になったのでしょうか?

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不動産市場の低迷と若年層の高い失業率

中国経済の減速の引き金となっているのは、不動産市場の低迷です。

中国の消費者たちは不動産を資産形成の手段としてきましたが、不動産危機により多くの中間層の家計資産が失われました。

さらに深刻なのは、中国の若年層の高い失業率です。

これまで、意欲的な若手専門職は高級ブランドの成長を支える重要な顧客層でした。

近年、中国の富裕層購買者の半数以上が、1990年以降生まれであることからも、彼らが市場に与える影響の大きさがわかります。

そして若者の失業率は全体の失業率を上回っており、これが市場回復の大きな壁となっています。

高級品を望んでいた顧客の多くが、今や財布の紐を締め、高額商品への支出を控えるようになっているのです。

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中国の消費者は「買いすぎていた」

かつてJPモルガンに勤めていた35歳のチェン・ジューリンさんは、中国のSNSでファッションとライフスタイルに関するブログを書き、多くの海外デザイナーズブランドとのつながりを築き、中国の消費者が「何でも買っていた」時代を経験してきました。

しかし、Eコマース市場の急速な成長とインフルエンサーによる商品紹介の氾濫の中で、人々は「買いすぎていた」ことに気づき始めたと言います。

それは本当の幸せではなかった、と。

チェンさんが目にしたトレンドは、中国の若者たちの間で、モノの所有から体験重視へと消費行動が変化しているという事でした。

彼女の読者からは「今はメンタルヘルスにより注目していて、自分自身を探求しようとしている」「エリートや成功者になることを求めているわけではない」といったメッセージが届くようになったと言います。

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類似品「デュープ」の影響

多くの企業が、若者の消費が贅沢から体験重視へと変化した恩恵を受けています。

例えば、ルルレモンやアークテリクスのようなアスレジャーブランドの「天猫」(ECサイト)での年間売上は、2024年に急増しています。

さらに、「デュープ」と呼ばれる、高品質な“類似品”がEコマースプラットフォームで盛んに取引されています。

多くの消費者がこうした「デュープ」商品を購入するようになり、見た目は同じで、むしろ控えめな印象を好むためロゴも不要で、はるかに安価に購入できることがその要因です。

この傾向は中国で急速に広まっており、価格表示がなければオリジナルとの違いを見分けるのは困難だと言われています。

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「共同富裕」政策の影響と高級ブランドが模索する新たな戦略

もう一つ、重要な要因として習近平国家主席が掲げる「共同富裕」の考えがあります。

これは、富や社会的地位において人々が比較的、平等であることを望む政策です。
この政策の影響で富裕層の消費行動も変化し、贅沢な消費を控える傾向が見られ、高級ブランド離れが進んでいます。

このような状況下で、高級ブランドは今、戦略を転換しています。

彼らが注力しているのは、世界で最も裕福なVIP顧客です。

今でも高級品を買い続ける限られた層に対し、豪華な展示会やショー、さらにはコンサートまで開催するなど、念の入ったアプローチを展開しています。

中国での異常な成長期は終わりを告げ、長く続いた祭りは終演を迎えました。
未完成の旗艦店が、この新しい現実を如実に映し出しています。

世界第2位の経済大国である中国での高級ブランド売上は、2025年も回復の見通しは立っていません。

そのため、LVMHなどの企業は、インド、中東、東南アジアに目を向け、新たな成長の可能性を探り始めています。

中国市場の変貌は、世界の高級ブランド業界に新たな挑戦と機会をもたらしていると言えるでしょう。

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6/23(月) 20:13更新

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