水辺にすっくりと立つ「うまそうな棒」。ユニークすぎる水沢植物、ガマの穂が成熟期です

水辺にすっくりと立つ「うまそうな棒」。ユニークすぎる水沢植物、ガマの穂が成熟期です

夏から秋にかけて、川べりや休耕田などの湿地・浅い水辺に、棒に刺さったソーセージのような変わった形の穂をつける植物が群生するのを、見たことがあると思います。
ちくわみたいとか、フランクフルトみたいとか、きりたんぽみたいとか、あるいは有名な某棒状ロングランスナック菓子にそっくり!とも噂されるその植物が、蒲(がま)です。草が生い茂る夏よりも、今頃からのほうが目立つかもしれません。そして晩秋から初冬のこれからの時期、この美味しそうな茶色い棒は劇的な変貌を見せます。

注意!そのフランクフルト、爆発するぞ!

ガマ(蒲 香蒲  Typha latifolia L.)は、ガマ科ガマ属に属する多年草で、日本全土の沼や池の水深の浅い場所や湿地、休耕田などに自生します。属名種のガマのほか、ヒメガマ(姫蒲 Typha domingensis Presl)とコガマ(小蒲 Typha orientalis L.)が日本全土に分布します。
草丈は1.5〜2メートルになる大型の挺水(ていすい)植物で、葉は幅2センチほどの線形、7〜8月ごろ、水中の基部からまっすぐの花茎を伸ばして、茎の先に円柱状の花穂をつけます。花萼(かがく)と花冠(花びら)はなく、茎のてっぺんに鉛筆のキャップのように雄花穂が、その下に雌花穂が接続する、変わった形状を持ちます。
雄花穂部分と雌花穂部分が離れずにくっついているのがガマとコガマで、ヒメガマは2〜10センチほど離れているのが見分けるポイントになります。秋になるにつれて花穂は結実して30万個以上もの小さな果実の集まりとなります。外見的には、開花期に黄色い花粉を飛ばしていた雄花はしおれて茎とほとんど同じ太さまで縮み、一方雌花穂は、太さはそのまま、花期の黄緑色から茶褐色に変化し、誰もがよく知るあのフランクフルトのような外形になります。
穂の茶褐色の色は、花のときの雌花の柱頭(雌しべの先端)がカラカラに乾いたもの。内側に透明な小さなタネを一粒ずつつけた実が、ぎっしりと詰まっていますが、それぞれに白い綿毛が備わっていて、フランクフルトの中では細く畳まれて、果実同士がラグビーのスクラムのようにぎゅうぎゅうに押さえあっています。
この状態で、茎が強風でたわんだり、生き物がぶつかって揺れるなどの衝撃が加わると、スクラムが崩れて、畳まれていた綿毛が一気にひろがって、果実が飛び出します。自然に放置していてもいずれ穂ははじけて今度は屋台の綿菓子のような姿になりますが、どうも何だか常に「うまそう」なのは、ちょっと笑ってしまいますよね。
この穂の仕組みから、成熟したガマの穂を手でぎゅっと握りこむようにつぶすと、大量の綿毛が一瞬で破裂したようにはじき出るので、これが「ガマの穂の爆発」と呼ばれ、一部では有名な現象です。ただし、成熟していなければ「爆発」はしません。ちらちらと綿毛がはみ出しかけているような穂が狙い目です。面白いので是非ガマの穂の爆発を体験してみてください。細い穂から、信じられない量の綿毛が飛び出してびっくりしますよ。

フランクフルト、焼きあがりました!
フランクフルト、焼きあがりました!


面白いだけじゃない。ガマは全草有用の優れもの

ガマの穂をフランクフルトやアメリカンドッグと喩えましたが、昔の日本人も「うまそうな棒だ」と感じていたのでしょう。今で言うチクワはかつて蒲鉾と呼ばれていましたが、この蒲鉾の「蒲」はもちろん、ガマの穂に由来します。ガマの穂と、竹筒に魚のすり身を塗りつけて焼き上げるチクワが似ているためです。
ウナギの蒲焼の「蒲」も、身を開いて焼く現代のような大かば焼きが発案されるまでは、棒に丸のままぶつ切りにしたウナギを刺して焼くのが普通で、この形状もガマの穂に見立てられ、「蒲焼」と名づけられました。
「蒲団」という文字も、もとはガマの葉を編みこんで作った敷物から来ています。後に寝具である掛け布団や敷布団の意味に変わりましたが、ガマの穂綿は木綿が栽培流通するようになるまでは、萱(カヤ)などの藁とともに、寝具の詰め物としても利用されていたそうです。
ガマの別名である御簾草(ミスグサ)は、王朝時代の宮殿や寺院などで間仕切りや装飾に使われた御簾から来ていますが、ガマの茎は「蒲芯」と呼ばれ、しっかりと中の詰まった蒲芯で編んだスダレは遮光性が高く、何年もの使用に耐える頑丈なスダレとして知られます。中が中空のヨシ(葦)の茎で編んだ風通しが良く軽いヨシズなどよりは湿気に弱いのが弱点ですが、高級感のあるインテリアとして現在でも人気があります。

確かにちくわにも似ています
確かにちくわにも似ています

日本最初の医療譚で使用されたのもガマだった

大きな袋を 肩にかけ だいこくさまが 来かかると
ここにいなばの 白うさぎ 皮をむかれて あかはだか
だいこくさまは あわれがり きれいな水に 身を洗い
がまの穂わたに くるまれと よくよく教えて やりました
(「だいこくさま」より 作詞・石原和三郎/作曲・田村虎蔵)
明治38(1905)年に発表された唱歌「だいこくさま」。古事記の「因幡の白兎(稻羽之素菟)」の逸話をもとにしていますが、ここで皮をはがれた上に、塩水と寒風で傷を悪化させてしまったウサギを、だいこくさま=大国主命が「体を真水で洗った後でガマの穂綿にくるまりなさい」と教えてやります。この逸話は、日本で最初の医療行為ともされ、この伝説と、日本書紀に登場する少彦名尊(すくなひこなのみこと)とタッグを組んだ病の治療指導の記述から、大国主命は医療の守護神でもあります。ただ、歌では「ガマの穂綿」ですが、古事記の原文では、「今急往此水門、以水洗汝身、取其水門之蒲黄、敷散而、輾轉其上者」、つまり「ただちに水辺に行き体を洗った後、そこに生えているガマのおしべの花粉『蒲黄』を採り、敷き詰めてその上に寝なさい」とあり、穂綿ではなく花粉をつけなさい、と指導しています。実際、穂綿には何も薬効成分はなく、蒲黄(ほおう)といわれる花粉には、血流を妨げない優れた止血効果と痛みの緩和作用があるとされ、やけど、切り傷、炎症に効能のある民間薬として、古くから利用されてきました。作詞の石原和三郎もそれはわかった上で、白ウサギの真っ白な被毛とガマの白く輝く穂綿のイメージの重なり・対比を大事にして、内容を改変したのでしょう。
ガマは、長く人々の生活にさまざまな利用価値のある優れものでしたし、現在ではヨシなどとともに、池や川の水質の改善にも役立つ有用植物の一つです。
(参考)
薬草カラー図鑑 (主婦の友社)
日本の童謡・唱歌「大黒様 だいこくさま」
種がぎっしり ガマの穂

ガマの穂綿。こちらも触りたくなりますね
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