JR北海道から「札幌駅」のリニューアルが発表されました。札幌駅が現在の5代目駅舎になったのは、桑園駅・琴似駅とともに高架化された1988年(昭和63年)のことで、36年ぶりの大規模な改修となります。
今回は、札幌駅リニューアルの概要に加え、新幹線札幌駅や駅周辺で行われている再開発事業、地下鉄南北線さっぽろ駅のホーム増設、歴代の札幌駅舎の振り返りなどをお伝えしていきます。

駅舎開業から35年以上、新幹線工事とともにリニュアルを計画

札幌駅は、1988年の高架化から既に35年以上が経過し設備の老朽化が進んでいます。
そこで、現在実施している新幹線工事に伴う改修を契機に、「インバウンド需要の回復への対応」と「新幹線札幌延伸を見据えた北海道の新たな玄関口として相応しい駅」を目指すため、札幌駅全体のリニューアルを計画したということです。

リニューアル後の札幌駅北側外観のイメージ (画像:JR北海道)

札幌駅北側の外観改良、及び改札内トイレの移転と改修、駅機能の再配置やエキナカの商業施設の拡大等、お客様の利便性の向上と老朽設備の更新を行い、環境にも配慮した駅を目指しての改修計画になり、2024年度から開始されます。

2024 年度に行われる工事の概要
1. 駅北側の改良
デザインコンセプトを「サツエキ × ヒトトキ」として、駅を訪れる 人(ヒト)の時間(トキ)を憩える(ヒトトキ)空間 となるように、ガラス面を多く採用することでホーム空間を明るくして、ホームから広場を眺めることができるようになります。1階はレンガの暖かみと憩える滞留空間を創ることにより、広場と一体となる空間を創ります。
また、新幹線駅と接続するホーム階は、新幹線駅と連続したデザインとなっています。(※滞留空間の利用開始は、現在工事で使用している広場の整備後となります)

2. 改札内コンコーストイレの改良
改札内のトイレを1か所に集約して、 キッズトイレ等を新たに整備します。 より利用しやすく、明るい 清潔なトイレに改修されます。

北海道の魅力を発信するエキナカ商業施設の開発

改札口南側に商業ゾーンを集積し(2018 年度比約2倍)、北海道の魅力を発信するエキナカ商業施設にリニューアルすることで駅及び地域の賑わいを創出します。

(画像:JR北海道)

※本資料記載の時期や画像は現時点のイメージであり、実際と異なる場合があります

リニューアル工事のスケジュール
現在の完成時期予定ですが、改札内トイレは2024年度末、駅の北側外観が2027年度末、駅施設・商業施設のリニューアルは2028年度末の工事の完成を見込んでいます。
(※時期や画像は現時点のイメージであり、実際と異なる場合があります)

東側に設置される北海道新幹線 札幌駅

札幌駅の東側(苗穂駅側)では、新幹線の札幌駅の整備も進んでいくことになります。
既に報道されているように、2024年5月8日に鉄道・運輸機構(JRTT)が2030年度末と掲げてきた北海道新幹線新函館北斗〜札幌間の開業目標についての達成は困難であると報告をしています。

北海道新幹線の札幌駅舎は「大地の架け橋」をイメージしてデザインされ、創成川上空に設置されます。

新幹線札幌駅の外観南側のイメージ(画像:JR北海道)

新幹線駅の場所に関しては、様々な議論が繰り広げられた末、JRの在来線ホームよりも東側の位置に決まったという経緯があります。在来線や、さっぽろ地下鉄・特に南北線への乗り換えには、少し移動距離が出そうです。

新幹線札幌駅 (画像:JR北海道)

北海道新幹線および新幹線札幌駅の新しい開業見込みがいつになるのかは、今のところまだ見通されていません。

新幹線札幌駅の外観・内観イメージ(画像:JR北海道)

札幌駅前の整備など、駅周辺の再開発事業

駅施設以外の札幌駅の周辺エリアに関しては、札幌市や各地区の再開発組合の参加企業などが整備を進めていきます。
各街区における再整備へ向けた具体的な検討は既に進んでおり、それらの案を踏まえつつ、エリア全体としての整合の取れた駅まち空間を実現するための共通の目標として「札幌駅周辺エリア再整備の基本的な考え方」を札幌市が策定、公開をしています。

画像:札幌市(札幌駅周辺エリア再整備の基本的な考え方、令和3年11月)

それによると、札幌駅前広場の再整備や、地下レベル・地上・2階レベルのそれぞれに、歩行者導線を整備することなどが予定されています。

周辺地域では既に着工している区域もあり、駅南側の「ESTA/エスタ」があった北5西1・西2地区ではJR北海道グループなどにより市街地再開発組合が設立され、約245m・地上43階というJRタワーよりも高層となる複合施設の工事が進んでいます。バスターミナルや商業施設の他、オフィス、ホテル、スカイガーデン、展望施設等ができる計画になっています。当初は2028年度の工事完了を目指していましたが、2年程度の工期延長が検討されているようです。

北5西1・西2地区の複合再開発ビルイメージ(画像:札幌市)

この地区には、新幹線札幌駅と接続する「アトリウム空間」などが設置される予定です。

3つの明るいアトリウム空間が設けられる (画像:JR北海道)

また、北5西1地区から創成川を挟んだ北5東1地区との間には、創成川・通りをまたぐ歩行者通路が設置される予定で、北5東1地区の一部は準大手ゼネコンのフジタが土地を取得し、開発を進めるとされています。

南口駅前広場の南側の「五番舘 西武」があった場所、北4西3地区では、ヨドバシカメラや平和不動産などが市街地再開発組合を設立し、地上10階/地下7階(北棟)+32階/地下5階(南棟)の複合施設の事業を計画しています。隣接する地下鉄南北線さっぽろ駅改修工事と一体的に進めることにより、駅周辺の交通利便性と回遊性が向上する予定です。

北4西8地区・完成予想パース・断面イメージ(今後変更となる可能性があります)画像:平和不動産

地下鉄南北線さっぽろ駅のホーム増設計画

札幌市では、混雑が激しい市営地下鉄南北線さっぽろ駅のホームを増設する計画を進めています。
現在、南北線さっぽろ駅のホームは、北方向の麻生方面行きと、南方向の真駒内方面行きの乗降を1つのホーム(島式ホーム)で運用していますが、混雑が問題になっていました。そこで、東側に新たにホームを1本新設して方面別にホームを分けることで、混雑緩和を図るという計画になっています。

南北線さっぽろ駅の真駒内方面ホーム増設 (画像:札幌市)

こちらは、2024年度に着工、2028年度の完成を予定しています。

このように、札幌駅の周辺では、北海道新幹線の札幌延伸を前に、様々な駅周辺地域の開発が行われております。

北海道・札幌市の玄関口、巨大ターミナル札幌駅の歴史

ここで、周辺地域を含め様々な開発が進行中の札幌駅の歴史を少し振り返ってみましょう。
(2018年10月のJR北海道資料より引用)

・1880(明治13)年に、幌内鉄道の手宮〜札幌間が開通し、1 代目札幌駅舎(札幌仮停車場)が開業。
・1882年(明治15)年 幌内鉄道の札幌〜幌内間開通。2代目札幌駅舎開業。
・1908(明治41)年 3代目札幌駅舎開業。

(写真:JR北海道)

・1952(昭和27)年 4代目札幌駅舎(札幌民衆駅)開業。
・1978(昭和53)年 札幌ターミナルビル、そごうおよび商店街営業開始(そごうは2000年に閉店しエスタにリニュアル)
・1987(昭和62)年 国鉄分割民営化により「北海道旅客鉄道株式会社(JR北海道)」が発足。
・1988(昭和63)年 函館本線苗穂〜琴似間、札沼線桑園〜新川間連続立体交差完成。札幌駅高架化。 5代目札幌駅舎開業。
・1990(平成2)年 札幌駅高架下商業施設パセオ グランドオープン。
・2003(平成15)年 JRタワーが開業。札幌駅は、ほぼ現在の姿に。

(写真:JR北海道)
(写真:JR北海道)

現在使用されている5代目駅舎が完成したのは、国鉄が民営化されJRになった翌年1988年ということで、既に35年以上利用されていますので、色々な箇所で老朽化が進んできている時期でしょう。
今回のリニューアルにより生まれ変わり、北海道新幹線開業時には快適に過ごせる駅になっていることを期待しましょう。

(鉄道チャンネル)