今年4月19日(日本時間20日、日付は以下同)から5月17日にかけて放送された『ザ・ラストダンス』は、アメリカ国内だけでなく、世界中で大きな反響を呼んだ。

 同作は“G.O.A.T.”(史上最強)と称されるマイケル・ジョーダンを中心に、1990年代に2度の3連覇を成し遂げたシカゴ・ブルズをフィーチャーした珠玉のドキュメンタリーで、ファンはもちろん、NBA選手たちも虜になっていた。

 現在ジョーダンはシャーロット・ホーネッツのオーナーを務めているが、引退後もそのカリスマ性と絶大な影響力は健在。依然として世界で最も知名度のあるバスケットボール選手と言っていいだろう。

 ところが、そのホーネッツに所属する選手の口から驚きの言葉が発せられた。

 7月4日に『Bleacher Report』へ掲載された記事の中で、司令塔のテリー・ロジアーは「あのドキュメンタリーを観ていて、俺はものすごく多くのことを学んだよ」と切り出すと、信じられない言葉が続いた。

「俺はブルズが3連覇(を2度も)したことを知らなかったんだ。このリーグでそんなことをしてしまうんだから、本当にスペシャルなことだよね」

 ロジアーは94年生まれの26歳。オハイオ州で生まれ、高校はバージニア州、大学はケンタッキー州にあるルイビル大でプレーしていたとはいえ、バスケットボールをプレーしていればジョーダンやブルズについて友人やコーチと話すような気もするが、まさかの答えが返ってきたのだ。
  もちろん、ロジアーはジョーダンの凄さは知っていたのだが、おそらくこれまではYouTubeなどでハイライトシーンを中心に観ていたのだろう。

 激しい闘争心を前面に出したプレーが売りのロジアーは昨夏にホーネッツに加入し、ここまで自己最高となる平均18.0点、4.4リバウンド、4.1アシストをマーク。

 ただロジアーの健闘むなしくチームはイースタン・カンファレンス10位の23勝42敗(勝率35.4%)と低迷。7月30日からフロリダ州オーランドでスタートする第二幕の出場権を逃し、残念な思いで今季を終えた。

 だがそれ以上に、この衝撃的な発言により、オーナーのジョーダンを悲しませただけでなく、怒りの感情を生み出してしまったのかもしれない。
  ちなみに今季ロジアーとガードコンビを組んだデボンテ・グラハムは、「僕はすべてのストーリーを聞いたし、(ジョーダンについて)映像やハイライトで観てきた。でも実際に『ザ・ラストダンス』を観てみると、彼がどんな選手でどのようにプレーしていたか、どうやってチームを導いてきたか、そして彼がどれだけ偉大な選手なのかを広い視野から見ることができたよ」と優等生のように語っていた。

 キャリア2年目のグラハムは、今季平均18.2点、7.5アシストと急成長を遂げた有望株。今年2月にジョーダンから「彼がここまでの活躍を披露するとは誰も予想していなかった。それでも、彼はきっと昨シーズンより『自分はできるんだ』と信じていたんだろう。彼の活躍は世界を驚かせたね」と絶賛されており、“上司”を喜ばせようと慎重な構えでインタビューに臨んだのかもしれない。
  このドキュメンタリーを観たことで新たなモチベーションを手にし、より一層の激しいトレーニングへと駆り立てられた選手もいる。だがマイアミ・ヒートのジミー・バトラーは「俺はMJのドキュメンタリーは観てない。皆が観ていることは知ってるけど、俺は外に出てワークアウトをしたり、サッカーボールを蹴ったりしていた」と話していたように、外部からのモチベーションを必要としない選手もいる。

 ロジアーは闘争心旺盛なだけに、バトラーのようにひたすら身体を苛め抜き、スキル向上に時間を割いていたのではないだろうか。

文●秋山裕之(フリーライター)

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