日本の角田裕毅、ミハエル・シューマッハの息子、ミックら注目のルーキーがデビューする2021年。プレシーズンテストの日数が半分に減らされ、また、2022年の大幅なレギュレーション変更を控え、前年型をベースにしたマシンで争われるため、新規参入するドライバーにとって難しい年になるとも囁かれるが、この中から次代のチャンピオン候補として抜け出すのは誰なのか、それとも中堅、ベテランドライバーが意地を見せられるのだろうか? 

【スクーデリア・アルファタウリ・ホンダ】
#10 ピエール・ガスリー
#22 角田裕毅

 レッドブルのセカンドチーム、アルファタウリは、昨年のイタリアGPで初優勝を飾ったピエール・ガスリーとF2ルーキーイヤーで鮮烈な走りを見せ、20歳でF1に昇格した角田裕毅とのコンビでコンストラクターズランキング5位以上を狙う。

 エース格のフランス人ドライバー、ガスリーは2019年半ばにレッドブルから降格を言い渡される憂き目にも遭ったが、親友である故アントワーヌ・ユベールの「実力を証明して見返してやればいいじゃないか」という言葉を胸に2020年は計10回のシングルフィニッシュ。「これまでにないほどトレーニングをしている。2021年は5位以内に何回も入り、常時10位以内で走ることが目標」とモチベーションも高い。

「ユベールが亡くなった2019年のスパが僕にとってターニングポイントでした。その日は彼のためにレースをして、FIA-F3で初めての表彰台に立ったんです」と語る角田とチームメイトになったのも何かの縁だろうか。
  その角田はまず予選でガスリーと同等の速さを発揮し、シーズン後半には10番手以内を争う予選Q3に安定して通過できるようになることが当面の課題となる。チーム代表のフランツ・トストは「F1の新参者にとって最初の1年は非常に厳しいものになる。時差ボケ、初めて走るサーキット、メディアやマーケティング活動への対応……。技術面ではレースウィークを通してのプロセスを理解するのにしばらく時間がかかるだろう」と話す。

 シーズン前の公式テストが3日に短縮されたこともルーキーにとって逆風だが、チームはイモラでの2回の追加テストを予定。1月末のテストでは規定により2018年型、「フィルミングデー」にかこつけた2月末のテストでは2021年型のマシンを走らせると予想されている。トストは「F2で走ったことがあるカタルニア、シルバーストン、レッドブル・リンク、ハンガロリンクでユウキがピエールに挑戦し、近くにいることを願っている」と期待する。

 リアエンドのセンシティブな挙動に苦しんだレッドブルと比べ、相対的にバランスが取れていたAT01を踏襲し、リアエンドにはそれほど手を加えず、細めのフロントノーズを投入する模様だ。
 【スクーデリア・フェラーリ・ミッション・ウィノウ】
#16 シャルル・ルクレール
#55 カルロス・サインツ

 2020年、コンストラクターズランキング6位に沈んだフェラーリは、若手実力派2人を擁して逆襲を誓う。在籍3年目となるシャルル・ルクレールは、競争力の足りないマシンで去年の開幕戦オーストリアGPで2位、第4戦イギリスGPで3位と2度の表彰台。計10回入賞し、レースでの強さを印象付けた。

 同世代の好敵手、ランド・ノリスと同じく今年に入って新型コロナウイルスに感染してしまったが、2勝を挙げた2019年のような輝きを見せて欲しいところだ。

 マクラーレンから移籍したカルロス・サインツは、落ち着いたレース運びが持ち味だ。去年も第8戦イタリアGPでの2位表彰台を含む、計12回の入賞を果たした。F1界きっての名門は、速さ、安定感はもちろんのこと、マクラーレンでのチームとのコミュニケーションの取り方、仕事の進め方についても詳細に調査。チームに貢献できることを確認し、獲得に至ったという。

 昨シーズンはダウンフォースと空気抵抗のバランスに苦しんだため、ニューマシン、SF21はリアエンドの気流を最適化する方向で開発が進められ、燃料流量に関する技術の変更により2019年に比べて50馬力ほど出力が下がってしまっていたパワーユニットの開発も順調のようだ。しかし、メルセデス、レッドブルとの差は依然として大きく、2021年の現実的な目標はコンストラクターズランキング3位を獲得することだろう。
 【アルファロメオ・レーシング・オーレン】
#7 キミ・ライコネン
#99 アントニオ・ジョヴィナッツィ

 ルノー製パワーユニットにスイッチするという情報も流れていたアルファロメオだが、引き続き、今後数年(2025年まで?)、フェラーリのものを継続使用する方向で話がまとまりつつあるようだ。キミ・ライコネンとアントニオ・ジョヴィナッツィのコンビは3年目を迎える。

 昨年はフェラーリ製パワーユニットの出力不足により2人のドライバーは共に苦戦を強いられたが、チャンピオン経験者のライコネンは雨に見舞われたポルトガルGPのオープニングラップで10台抜きのオーバーテイクショーを繰り広げるなど、走りの切れ味は健在。このレースでの走りは、世界中のモータースポーツファンの投票によって決まる『FIAアクション・オブ・ザ・イヤー』に選ばれた。

 現在41歳の“アイスマン”は、329回の歴代最多出走記録を保持しているが、今シーズン、全23レースに無事出走すれば記録は352回まで伸びることになる。

 昨シーズン、ジョヴィナッツィはライコネンと同じ4ポイントを獲得したが、フェラーリ・ドライバー・アカデミー(FDA)のドライバーたちがそのシートを虎視眈眈と狙っており、そろそろ印象に残る結果が欲しいところだ。
 【ハース・F1チーム】
#9 ニキータ・マゼピン
#47 ミック・シューマッハ

“皇帝”ミハエルの遺伝子を受け継ぐミック・シューマッハとロシア出身のニキータ・マゼピンのF2を卒業した同い年のルーキーコンビで参戦する。

 シューマッハはF2参戦2年目となる昨年、2勝ながら計10回の表彰台でタイトルを獲得した秀才型。一方のマゼピンも参戦2年目で2勝、計6回の表彰台でランキング5位と成績にそれほど差はないが、対象的なのはその性格だ。レースでもたびたびアクシデントを起こしているが、特に印象に残るのは、2020年のF2・第7戦レース1でのトラブルだ。自身のペナルティーにより優勝を角田裕毅に譲ったマゼピンは、パルクフェルメにマシンを止める際、順位ボードを跳ね飛ばすようにヒット。先にマシンを降りていた角田をボードがかすめた。また、最終戦のレース1で追い抜こうとする角田をコースの外に押し出す形でブロックし、やはりペナルティーを受けている。先日も自身のSNSに不適切な動画をアップし、ハース首脳陣に大目玉を食らった。

 チームはパワーユニットに加え、ギアボックス、独自に製造することが義務付けられていないノンリステッドパーツの供給をフェラーリから受け、関係を強化。フェラーリのシャシー部門責任者だったシモーネ・レスタを迎え入れ、跳ね馬のセカンドチーム化を押し進めている。
 【ウィリアムズ・レーシング】
#6 ニコラス・ラティフィ
#63 ジョージ・ラッセル

 チームを創設したウィリアムズ一族がチームの運営から退き、再スタートを切った名門は、ジョージ・ラッセルとニコラス・ラティフィのコンビで最下位脱出を目指す。

 2018年のF2王者でメルセデスの育成ドライバーでもあるラッセルは、ハミルトンの代役でメルセデスから参戦したサヒールGPではファステストラップを記録。チームの作業ミス、タイヤのトラブルが無ければ優勝という走りを見せたが、ウィリアムズから出走した決勝レースではいまだに結果を残せていない。F1初ポイントに手がかかったエミリア・ロマーニャGPでは、セーフティーカーが入ったタイミングでバリアに激突。あまりのショックでその場に座り込む様子が国際映像に大きく映し出された。

 その潜在能力から2022年のメルセデス入りも噂されるが、メルセデスのチーム代表、トト・ウルフは「もっと経験を積み、ミスから高いレベルで学び続けることが必要」と冷静に評価しており、決勝レースでまずは確実にポイントを獲ることがトップチーム移籍への最初のハードルだ。

 ラティフィはラッセルに予選で全敗しており、一矢報いることがチームへのアピールとなる。ラッセル同様、ウィリアムズでの初ポイントが早く欲しい。

 チャンピオン経験者のジェンソン・バトンがシニアアドバイザーとして加わったことも若い2人のドライバーにとって心強いだろう。

文●甘利隆
著者プロフィール/東京造形大学デザイン科卒業。都内デザイン事務所、『サイクルサウンズ』編集部、広告代理店等を経てフリーランス。Twitter:ama_super

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