バドミントン男子シングルス世界ランク1位の桃田賢斗(NTT東日本)が、昨年1月のマレーシア遠征中に起きた交通事故で右眼窩底を骨折して以来、1年2か月ぶりの国際大会となる「全英オープン」(3月17〜21日、英国バーミンガム)に出場し、ベスト8で敗退した。

 桃田は実戦復帰となった昨年12月の全日本総合選手権では、苦しんだ試合もあったがきっちりと優勝を果たし、貫録を示した。今回の全英オープン前は「痛いところもないし、調子も良い。完全に復活した自分を見てもらいたい」と状態の良さを感じながらの出場だったが、思い描いた通りの結果とはならなかった。

 この結果を踏まえ、五輪開幕まで残り約100日余りとなったこのタイミングで全英オープンを振り返りつつ、見えた課題を確認しておきたい。

 全英オープンの桃田はまず1回戦で、世界ランク26位のカシャプ・パルパリ(インド)と対戦したが、この試合では久々の国際大会という緊張感から、随所に余分な力が入ってしまったようだ。開幕前に新型コロナウイルス陽性者が出たことで、試合開始時間が直前まで決まらなかった影響もあったに違いない。

 序盤は連続ポイントを奪ったが、相手がギアを上げると対応が遅れ出し、第1ゲームを21−13で取った後、第2ゲームは20−20まで粘られた。最後は22−20で突き放してストレート勝ちしたが、桃田は「(自分の)以前のパフォーマンスに届いていない実感がある」と話していた。

 それでも1試合をこなしたことで身体の反応などにスイッチが入り、世界ランキング31位のプラノイ(インド)との2回戦は、21−15、21−14と危なげなく勝利した。
  だが、調子を上げつつ迎えた準々決勝で足元をすくわれた。相手は世界10位の22歳、リー・ジージャ。マレーシアの第1シングルスであるリーは、身長186センチを誇り、高い打点から打ち下ろす高速スマッシュを武器とする選手だ。とはいえ、これまでの対戦は桃田が6戦全勝。桃田がしっかりと力を出せれば、問題はないものと思われた。

 ところが第1ゲーム、前半は先行する展開だったが、15−12から7連続でポイントを失うなどして16対21でこのゲームを落としてしまう。続く第2ゲームは終盤まで粘ったが、19−19から相手の勢いに押されて19対21。ゲームカウント0−2でストレート負けを喫した。
  全英オープンに出場するにあたっては、国内でしっかりと練習をこなせたと語っていたが、リーほど打点の高い選手の球を受ける機会がなかったせいか、クリアの距離が短くなって攻め込まれる場面も多々あった。さらには、桃田が得意とするヘアピンでも相手に上回られることがあった。国内合宿では見えなかった繊細な技術のずれが、海外選手を相手にしたときに浮かび上がってきたのだろう。

 桃田の国際大会での敗戦は、19年10月のフランスオープン準々決勝で、アンソニーシニスカ・ギンティン(インドネシア)に敗れて以来、1年5か月ぶり。「簡単なミスが多すぎた。主導権を握ったラリーがなかったのが敗因」と唇を噛んだ。

 それでも、「この大会を通じて緊張感を味わうことができた」と語ったように、得られた収穫は多い。試合勘を取り戻せたことや、ここで見つかった具体的な課題は、すべて五輪に向けてプラス材料とできるものばかりだ。朴柱奉ヘッドコーチも「リフレッシュして、五輪へ向けてもう1回イメージができれば優勝を目指せると思う」と語っている。
  敗戦後、桃田はSNSで「課題がたくさん見つかり、やらなきゃいけないことが山ほど見つかりました。そう思えるってことはまだまだ進化できることだと僕は自分を信じています。ゼロから出直して強くなって帰ってきます。チャレンジャーとしてこれからも頑張っていきます」と思いを発信した。

 今後は東京五輪100日前となる4月14日から富山県で行なわれる合宿に参加し、5月のインド・オープン出場を目指す予定だ。東京五輪まで残り100日余り。この先は右肩上がりの復活ロードを歩んでいってくれるのではないか。王者がチャレンジャーになったときほど強いものはない。

文●矢内由美子

【PHOTO】チャレンジャーとして臨む東京五輪!男子バドミントン界のエース、桃田賢斗ギャラリー
 

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— 桃田賢斗 (@momota_kento) March 20, 2021