先週発表されたユーロリーグの今季アウォードで、コーチ陣の投票で決まる22歳以下の将来性ある若手選手に贈られる“ライジングスター賞”に、レアル・マドリーに所属する19歳のビッグマン、ウスマン・ガルバが選出された。

 この賞は、過去にリッキー・ルビオ(現ミネソタ・ティンバーウルブズ)やニコラ・ミロティッチ(元シカゴ・ブルズほか)、ボグダン・ボグダノビッチ(現アトランタ・ホークス)、ルカ・ドンチッチ(現ダラス・マーベリックス)らが受賞している、欧州の若手にとって登竜門と言われる賞だ。

 ガルバは現在、ヨーロッパで最も注目されている若手選手の1人。今年のNBAドラフトにエントリー予定で、モックドラフトでは15位前後と予想されている。
  アナドル・エフェスと対戦したユーロリーグのプレーオフでは、エフェスがファイナル4進出に王手をかけた勝負所の4戦目で、ゲームハイの24得点、12リバウンドをマーク。殊勲もののプレーで、チームを敗退の危機から救った。レアルは次の5戦目で敗れてファイナル4進出を逃したが、まだティーンエイジャーのガルバの大一番での勝負強さは、センセーショナルな印象を残した。

 マドリード生まれでスペイン国籍のガルバの両親は、ナイジェリア出身。ウスマンが生まれる前、両親は「より良い暮らしを求めて」故郷を離れ、ベルギーを経由して、スペインに辿り着いた。

 その後定住先となったマドリード郊外のグアダラハラにあるクラブ、バロンセスト・アズケカでウスマンはバスケットボールを始める。当時9歳。最初はフットボールをやっていたが、ぐんぐん身長が伸びた彼のポテンシャルを、地元クラブのコーチが見染めたのだった。

 その眼力は正しく、2年後には国内きっての強豪レアル・マドリーのユースチームに引き抜かれる。少年チームでは彼の能力はずば抜けていて、1試合で32リバウンドを記録した試合もあった。身長も伸び続け、14歳になる頃には2mを超えていたという。
  ガルバが一躍名を上げたのは、2016年にポーランドで行なわれたU16欧州選手権だ。当時14歳ながら、リトアニアと対戦した決勝戦では15得点、11リバウンド、そしてなんと10ブロックでのトリプルダブルを記録し、スペインの優勝に貢献。大会を通じて平均16.3点、12.4 リバウンド、 2.0 アシスト、1.9 スティール、2.9ブロックという数字を叩き出し、大会MVPにも選出された。アンダーエイジで出場した選手が、大陸選手権で大会MVPになったのは史上初のことだ。

 その後も彼の成長は、最年少記録の更新とともにある。17歳でレアルのシニアチームに正式に昇格した彼は、それまで最年少だったドンチッチよりも若い17歳6か月で先発出場を果たし、13得点、10リバウンドのダブルダブル。リバウンド10本超えも、ACBリーグで歴代最年少記録となった。
  レアル・マドリーのU18チームとリザーブチームで実戦経験を積みながら、シニアチームに徐々に同化し開花していった成長過程は、まさにドンチッチの足跡を辿っている。ドンチッチは16歳だった14−15シーズン、2002−03シーズンに創設されたユーロリーグのU18版であるアディダス・ネクストジェネレーショントーナメント(ANGT)で、レアル・マドリーを初優勝に導いた。

 そして4年後の2018−19シーズン、ガルバはレアルに2度目の優勝をもたらす。決勝トーナメント進出を決める地区決勝戦のマッカビ・テルアビブ戦では、チームハイの22得点、9リバウンドをマークし、96−58でレアルが圧勝。地区大会MVPにも選出された。ちなみに対戦相手のマッカビを引っ張ったのは、現在ワシントン・ウィザーズで八村塁のチームメイトとなっている、ルーキーのデニ・アブディヤだ。

 “ポスト○○”“○○の再来”……。このようにばかり囃し立てられるのは、本人にとってはあまり嬉しくないことかもしれない。しかしもうひとつ、スペインでは避けられないものがある。それは『ポスト・ガソル』(パウ・ガソル/無所属、マルク・ガソル/現ロサンゼルス・レイカーズ)の期待だ。
  ウスマンの2歳下の弟、セディックもレアルの下部組織に所属するフォワードで、彼もまた、ウスマンに勝るとも劣らない逸材と言われているのだ。“バルセロナ出身のガソル兄弟 vs レアル出身のガルバ兄弟”という相関図も、なんともキャッチーでメディア受けする。さらに7歳離れた妹のウキも、兄たちに負けないバスケの才を発揮しているというから、この先ガルバ一家が、スペインの男女バスケ界を牽引する存在になるかもしれない。

 そんなウスマンは、レアルの選手紹介によれば、コート内外でみんなの手本となるような天性のリーダーシップがある選手で、憧れの選手はカリーム・アブドゥル・ジャバー(元レイカーズほか)、というのも渋い。たしかに試合中の様子を観ていても、年齢を知らなければチーム内で最年少とは思えないほど、プレーに落ち着きと貫禄がある。
  また、『ESPN』のインタビューでは「自分はドレイモンド・グリーン(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)やポール・ミルサップ(デンバー・ナゲッツ)のようなプレーヤーになれると思う。よりプレーメーカー的な、ベン・シモンズ(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)やヤニス・アテトクンボ(ミルウォーキー・バックス)のような選手になりたい」と話している。

 レアルではセンターだが、身長は203cmとパワーフォワード並。リバウンドやブロック、そして垂直跳びからダンクできる驚異的なバネが大きな武器で、さらにエフェス戦では身長が20cmも違うシェーン・ラーキンの低空ドリブルをインターセプトするような身のこなしも併せ持つ。常にエネルギー全開で、身体を張ったディフェンス力も非常に高い。

 本人が課題に挙げているのはシュート、とりわけフリースローとアウトサイドジャンパーの成功率を上げること。今季のACBリーグでのフリースロー成功率が66%、2ポイントシュートは56%、3ポイントシュートは32%。とりわけビッグマンにも高いシュート力が求められる昨今だけに、シューティングには磨きをかけたいところだ。
  U16欧州選手権で注目を浴びた5年前、彼の両親はインタビューで「スポーツ選手としてのキャリアは考えていない。学業を優先してほしい」と話し、アメリカの大学に進学してバスケットボールを続ける、といった道筋を思い描いていた。その下準備か、家庭内では故郷ナイジェリアのエド語で話す環境ながら、ウスマンも弟のセディックも、英語は流暢に話せるレベルまでマスターしているという。
  その頃からNBAのスカウトマンの目には止まっていたものの、本人もNBAについて聞かれると「まだずっと先にあるもの」と答えていた。

 しかしそれから着実に成長を重ね、彼は今、NBAに手の届きそうなところに立っている。“スペインバスケットボール界の真珠”と期待されるウスマンの未来は、光り輝いている。

文●小川由紀子

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