6月6日(日)、春のマイル王決定性である安田記念(GⅠ、芝1600m)が東京競馬場で行なわれ、激しい追い比べの末、単勝オッズ47.6倍で8番人気のダノンキングリー(牡5歳/美浦・萩原清厩舎)が、1番人気のグランアレグリア(牡5歳/美浦・藤沢和雄厩舎)をクビ差で降し、念願のGⅠ初制覇を成し遂げた。3着には4番人気で、NHKマイルカップ(GⅠ)からの連勝を目指したシュネルマイスター(牡3歳/美浦・手塚貴久厩舎)が入り、3連単の払戻金は11万420円という波乱となった。

 単勝オッズ1.5倍という圧倒的な支持率で分かるように、多くのファンはグランアレグリアの”勝ち方”に注目していたわけだが、そうした期待は僅差で打ち砕かれた。

 五分のスタートを切ったグランアレグリアは序盤から行きっぷりが悪く、好位置が取れなかったばかりか、10〜11番手のインに閉じ込められ、動くに動けない不本意なレースを強いられる。鞍上に促されながらインを追走した彼女はそのまま外からフタをされる形で直線へ向かう。外へ持ち出して一気の末脚を繰り出す”勝ちパターン”とは違い、馬群のなかへ突っ込んでいかざるを得なかった。

 それでも直線半ば、グランアレグリアは強引に進路を確保して目の覚めるような瞬発力を見せて、いったんは先頭をうかがったが、そこへスムーズな競馬で外から脚を伸ばしたダノンキングリーが急襲。2頭の激しい叩き合いになるなか、末脚の勢いに勝ったダノンキングリーに軍配が上がったのだった。
  勝ったダノンキングリーは3歳時、共同通信杯(GⅢ)を制すると、皐月賞(GⅠ)でタイム差なしの3着、日本ダービー(GⅠ)でもクビ差の2着に健闘。その後、一昨年の毎日王冠(GⅡ)、昨年の中山記念(GⅡ)を制し、大阪杯(GⅠ)で3着に食い込むなど、クラシックで好戦を続けていた能力の高さを随所に見せていた。

 今レースで評価が低かったのは、昨年の天皇賞・秋(GⅠ)で12着に大敗し、7か月にもわたる長期休養を経ての復帰戦だったからだ。ただそれでも、いまや乗り馬を選べる立場にある川田将雅騎手が、ダノンプレミアム(牡6歳/栗東・中内田充正厩舎)よりも本馬を選んだところに、その状態の良さが窺い知れたのも確かであった。

 川田騎手が「こういうメンバー相手でも勝ち切れる能力の高さがこの馬の本来の姿だと思う」と語れば、萩原調教師は、「今日はジョッキーの好騎乗に尽きる。現状の力を十分に発揮させてくれた」とコメントして、愛馬とともに鞍上の手腕を称賛した。
  一方で敗れたグランアレグリアは、手綱をとったクリストフ・ルメール騎手が、「前走と手応えがまったく違っていた。呼吸も苦しそうだった」と語り、スポーツ紙の報道によれば、藤沢調教師「(馬体に)余裕があったみたいだ。もう少し調教をしたほうが良かったかもしれない」とコメントしたという。

 馬体重は前走比で+4㎏にすぎないが、筆者の目には、好調時の研ぎ澄まされたシャープさがなく、ややコロンとして映った。ヴィクトリアマイル(GⅠ)圧勝のあとは、中2週という短いレース間隔を考慮して調教の場をコースから坂路に移し、ソフトな仕上げをしていたことが影響したのか。その真実は知る由がないが、名伯楽の誉れ高い藤沢調教師でも筆を誤ることはある、というべきか。

 シュネルマイスターがアタマ+半馬身差の3着に食い込んだのは立派のひと言。大きな成長の余地を残しているのは明らかで、秋のマイル路線、また来年に対して明るい展望が一気に開けた。
  4着となった2番人気のインディチャンプ(牡6歳/栗東・音無秀孝厩舎)は、前目につけて直線勝負をかけたが、最後に末脚が鈍ってしまった。道中、やや行きたがる様子を見せたのが終いの伸びに響いたのかもしれないが、力の衰えがないのを示したことで、秋への期待をつないだとも言える。

 3番人気に推されたサリオス(牡4歳/美浦・堀宣行厩舎)は、中団のまま伸びを欠いて8着に終わった。松山弘平騎手が「スタートで踏ん張りがきかず、好位置が取れなかったため、脚を矯めることができなかった」と悔やんだように、レースの流れに乗れないままで終わってしまった印象。低迷する馬を立て直すことにも秀でた堀調教師だけに、今後の巻き返しを期待したい。

 安田記念のプレビュー記事で推奨したラウダシオン(牡4歳/栗東・斉藤崇史厩舎)だが、期待を大きく裏切って最下位に惨敗した。ただ、直線に入って伸びかかったところでグランアレグリアに進路をカットされ(ルメール騎手は過怠金3万円)、続いてギベオン(牡6歳/栗東・藤原英昭厩舎)からも不利を受けて(西村淳也騎手は戒告)レースにならず、最後にミルコ・デムーロ騎手は追うのを止めてしまった。これで本馬を見限るのは早計で、筆者は今年いっぱい、しつこく追い掛けていくつもりだ。

文●三好達彦

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