7月23日、新国立競技場で、ついに東京五輪の幕が上がった。

 新型コロナウイルスの感染拡大による影響を考慮し、無観客で実施された開会式。直前の“トラブル”などもあったが、催しは日本の伝統や文化、さらには世界中に蔓延る問題など様々なテーマに切り込んだ興味深い内容となった。

 そのなかで小さくない存在感を放ったのが、式の序盤に登場した日本人アスリート、津端ありささんだった。

 現役の看護師で、ボクシング女子ミドル級で東京五輪出場を目指した津端さん。今年5月の五輪最終予選では最後のチャンスをかけて出場切符を狙っていたが、コロナ禍で大会が中止となり、夢の舞台への挑戦を断たれた。

 そんな彼女は、国立競技場に盛大な花火が打ち上がるなかで登場。四季を表したプロジェクションマッピングに照らされながら、ランニングマシンに乗り、黙々とトレーニングを重ね、コロナ禍で多くのアスリートたちが抱いた不安や葛藤を表現した。
  医療従事者とアスリート。その両方の葛藤を知り、開会式の舞台に立った津端さんの姿は、海外メディアの胸を打つものがあったようだ。米紙『New York Post』は「延期になってから1年間、努力を続けてきたけど、争うチャンスすら与えられなかった」という本人のコメントを伝えたうえで「栄えあるオリンピックの開会式で、大会に参加しないアスリートがショーの前半部分の注目を独占した」と絶賛した。

 また、アルゼンチンの放送局『TN』も「オリンピック参加という夢を断たれた彼女の姿は、多くのアスリートたちの心情を表現した」とレポートした。

「日本のアリサ・ツバタは、東京オリンピックに参加するという夢を実現するために、懸命な練習を重ねてきた。だが、IOCが予選を一時停止するという決定を下し、看護師とボクサーを両立する彼女のすべての希望は打ち砕かれていた」

 コロナ禍という世界的な問題に人生を狂わされたのは間違いない。しかし、「大小を問わず、どんな大会が開催されても、一歩ずつ頑張っていく」と未来を見据えた津端さんの姿は、世界に特大のインパクトを残したはずだ。

構成●THE DIGEST編集部

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