オリンピックが東京で始まって以来、私は眠れぬ日々を過ごしている。

 大会4日目となったこの日曜日(現地時間)は、とくにイギリス勢にとって素晴らしい日となった。競泳のアダム・ピーティーと飛び込みの水泳男子飛び込みのトム・デイリー(27)とマティ・リー(23)のペア、さらに男子クロスカントリーのトム・ピッドコックがそれぞれ金メダルを獲得したのだ。

 とくに私にとって感慨深かったのは、トム・デイリーだ。

 2008年の北京オリンピックにイギリス史上最年少となる14歳で出場した彼には、それ以来、「飛び込みのプリンス」として国内で人気を博してきた。そして2013年には自身が同性愛者であるとカミングアウトし、その勇気は世界中の人々から賛辞が送られた。
  そんな英国民にとっても誇らしい存在である彼が4度目のオリンピックで、ようやく金メダルを手にしたのだ。

 私は決して飛び込みの専門家ではなく、専門的な技術に関しては分からない。ただ、私を含めた多くのイギリス人は、テレビのリアリティーショー(ITV「スプラッシュ!」)などに出演して、そのキャラクターと飛び込みの素晴らしさを広めてきたデーリーを親戚の子どもようによく知っている。それだけに彼の悲願達成は、エモーショナルな気持ちにならざるを得なかった。

 もちろん、オリンピックに関して伝えられているのは、選手たちの活躍だけではない。各メディアから現地へ派遣されているイギリス人記者たちは、連日のように日本のボランティアが東京でどれだけの仕事をしているかという報告をしている。

 私の知り合いでもある記者のひとりは、「我々はいつも手助けの申し出を受ける。そして彼らはいつだって笑顔で迎えてくれる」と日本人のホスピタリティを称え、「激しい猛暑のなかで、蛍光ジャケットを着て、メディアの人間や大会関係者が使用するシャトルバスをアテンドする日本人がいる。彼らは誰よりもメダルに値する」とも言及した。

 私はこれまでに幾度となく来日を経験。そのたびに日本人の心優しき振る舞いには感心させられてきたが、このコロナ禍にあっても変わらない彼らの姿勢には改めて感服させられた。

文●スティーブ・マッケンジー

Steve MACKENZIEスティーブ・マッケンジー/1968年6月7日、ロンドン生まれ。ウェストハムとサウサンプトンのユースでプレー経験がある。とりわけウェストハムへの思い入れが強く、ユース時代からのサポーターだ。スコットランド代表のファンでもある。大学時代はサッカーの奨学生として米国で学び、1989年のNCAA(全米大学体育協会)主催の大会で優勝した。現在はエディターとして幅広く活動。05年には『サッカーダイジェスト』の英語版を英国で手掛け出版した。