今季よりF1にデビューしたスクーデリア・アルファタウリの角田裕毅。ここまで出場した14戦中5戦で入賞して18ポイントを獲得した一方、多くのミスを犯して自らチャンスを逸するなど、レース毎の浮き沈みが激しい印象だ。

 その状態でも、イタリア・グランプリの前には来季のチーム残留が決定した。角田は「何度もクラッシュを喫してチームに多くの出費(修理代)を強いたので、この判断には少し驚いている」と正直な気持ちを会見で語ったが、これに対して元F1ドライバーが厳しい目を向けているようだ。専門メディア『GPBLOG』が報じている。

 日本人ルーキーを批判したのは、ウィリアムズ、マクラーレン、レッドブルでF1に参戦し、13回の優勝を記録しているデイビッド・クルサードだ。英公共報道『Channel4』の取材に対し、「彼はどの惑星からやって来たのか? レーシングドライバーがあんなことを言うべきではない。小さなバッグに荷物を詰めて、すぐに家へ帰るべきだ」と主張した。
  その後も「クラッシュを繰り返すツノダをアルファタウリが残したことにショックを受けた」と続けたクルサードは、「もし私が彼だったなら、今すぐに飛行機を早めの割引で予約をしておくだろう。なぜなら、来季終了後には彼にF1に居場所はないだろうから」とまで訴えている。

 クルサードにとって、角田の発言はF1ドライバーとして弱気すぎるということであり、それがこの非難に繋がったようだが、インタビューに立ち会ったベテランジャーナリストのトム・クラークソン氏は「私はツノダの正直さが好き」と語っている。また、SNS等でも「クルサードは、自分の過ちを素直に認めて謝罪する日本人の精神性を知らないのだろう」との指摘が目立っている。

 ただ、クルサードに限らず、角田の残留について否定的な見方をしている者は少なからず存在するだろう。これに対し、専門メディアの『planetf1』は「ツノダを引き留めたことが正しい理由」と題した記事で、「日本人ドライバーのルーキーイヤーはこれまでのところ、控えめに言っても期待外れだろう」と記しながらも、最終的にチームの決定は正解だと主張している。
  その理由は、まず彼が下部カテゴリーで傑出したドライバーであり、さらに欧州のF3、F2でそれぞれ1年を過ごしただけでレースの最高峰にまで到達したという成長過程にある。

 つまり、角田は抜群の才能を有する一方で、経験が極めて乏しいという実情があり、これを鑑みれば、モンスターマシンとF1のコースに慣れさえすれば、今よりはるかに良いパフォーマンスと結果を残すだろうということだ(「チームにとってはちょっとした賭けでもあるが……」と綴ってはいるが)。

 実際、F1デビューレースとなったバーレーンGPでは、幾つかのオーバーテイクと冷静なドライビングで9位入賞を果たし、F1のロス・ブラウンTDをして「ここ数年で最も優れたルーキー」と言わしめた。

 この事実は、次戦のイモラで自信を喪失し、徐々に下降線を辿っていったとしても、決して変わることはない。何かきっかけがあれば、状況が変わる可能性があることを意味してもいると言えよう。
  さらに同メディアは角田の残留が、レッドブル・グループにとっても大きなメリットになったと指摘している。

 これはリザーブドライバーの座に甘んじていたアレクサンダー・アルボンが来季、ウィリアムズの一員となることを指しているとおり、「グループの誰かを犠牲にすることなく、ドライバーをグリッドに戻すことで、よりドライバーの成長を促し、自分たちのオプションを増やすことができる」という。

 また、来季のレギュレーションが大きく変更されることも残留になった要因としてありうる。このタイミングで角田を外し、レッドブル・ジュニアプログラムからユーリ・ヴィップスやリアム・ローソンといった若手ドライバーを起用することは、チームにとって理想から程遠い状況を引き起こす可能性が高いという。

 様々な見地から、角田残留の正当性を同メディアは主張しているが、はたしてこれが適当な指摘だったと、実際に彼が証明できるだろうか。今週末のロシアGPで成長ぶりを示すとともに、後半戦、さらには来季へ向けて自信と弾みをつけるようなレースに期待したい。

構成●THE DIGEST編集部