ロシア体操界の期待の星が、日本で経験した前代未聞の事態に、複雑な心境を漏らしている。

 事の発端となったのは、10月24日に北九市立総合体育館で行なわれた体操世界選手権「種目別床」の決勝における採点だ。

 最終演技で日本の村上茉愛(日体ク)は、H難度の大技「シリバス」(後方抱え込み2回宙返り2回ひねり)を成功させるも、直後の採点結果は「13.966」。この時点で暫定トップに立っていたアンジェリーナ・メルニコワ(RGF=ロシア連盟)に0.034点差だけ及ばなかった。

 ここで村上陣営が、採点の再確認を求める「インクワイアリー」(問い合わせ)を行使。これによって、Dスコアが「5.7」から「5.8」に修正されて総得点は14・066に。これでメルニコワを抜いての金メダル獲得が決まった。
 
 現役最後の演技で、見事に有終の美を飾った村上。その一方でやりきれないのが、メルニコワだ。大会後のフラッシュインタビューで「ターンに関して完全な難度評価が得られなかった。このファイナルには苛立っている」と明かした21歳は、大会後に自身のインスタグラムを更新。そこで思いのたけを打ち明けた。

「私のキャリアで、このターンに関して問題があったことはない。はっきり言って何が起こったのかは分からない。なぜそうなったのかの説明もないし、インクワイアリーも一切受け付けられなかった。かなりひどい扱いを受けたと思っているし、非常に残念でならない。私自身はできることをし、最高の床演技ができたと思っている」

 さらに「たしかにインクワイアリーは提出した。それなのに、記録にはそれが一切明記されてない。本当に奇妙な状況だった」と当時を振り返ったメルニコワは、最終的に勝利した村上へのリスペクトを示しつつ、こう続けた。

「マイはキャリアを終えようとしていて、これが彼女にとって最後の大会になることは知っていた。そして実際に世界チャンピオンとしてキャリアを終えたのは、本当に素晴らしいと思う。それに私はマイの演技には何の不満もない。ただ、審判については何も言えない。こんなおかしな経験をしたのは、人生で初めてだから」

 村上の歓喜の優勝で締めくくられた大会だった。それだけにメルニコワの採点を巡る問題には、後味の悪さを感じざるを得ない。

構成●THE DIGEST編集部