11月28日、東京競馬場で第41回ジャパンカップ(GⅠ、芝2400m)が行われ、単勝1.7倍の圧倒的1番人気で、これが引退レースとなるコントレイル(牡4歳/栗東・矢作芳人厩舎)が後続に2馬身差を付けて圧勝。2着には3番人気のオーソリティ(牡4歳/美浦・木村哲也厩舎)が入り、2番人気に推されたシャフリヤール(牡3歳/栗東・藤原英昭厩舎)は3着に敗れた。

「完璧なレースができましたが、勝った馬はメチャ強いです」(オーソリティのクリストフ・ルメール騎手)
「来年への希望が持てるレースでしたが、今回は完全に負けました」(シャフリヤールの藤原英昭調教師)

 他馬のスタッフがこう口にするほど、今年で41回目を迎えたジャパンカップはコントレイルの力が抜けていた。

 レースを振り返ろう。

 絶対的な逃げ馬が不在と言われていた本レース。前へ行くと見られていたキセキ(牡7歳/栗東・辻野泰之厩舎)は最後方を進むという意外な展開となり、押し出されるようなかたちでアリストテレス(牡4歳/栗東・音無秀孝厩舎)が先頭に立ち、ワグネリアン(牡6歳/友道康夫厩舎)やシャドウディーヴァ(牝5歳/美浦・斉藤誠厩舎)がそれに続く。上位人気馬は、オーソリティとシャフリヤールは先団に位置し、コントレイルはその後ろの7〜8番手で折り合って進んだ。
  1000mの通過ラップは1分02秒2という超スロー。それにたまりかねたように、キセキが向正面で一気にまくって出て先頭を奪い、さらには後続を引き離して逃げる。それでも後続馬群は自分のポジションをキープしたため、直線での”上がり勝負”の色が濃くしながら直線へと向いて追い比べが始まる。

 キセキが坂下まで粘るが、それを交わしてオーソリティが先頭を奪うと、進路を外へとったコントレイルとシャフリヤールが満を持してスパートを開始。勝負は3頭の争いに持ち込まれたが、ここからのコントレイルの爆発力は別格だった。シャフリヤールを突き放し、その勢いのままで一気にオーソリティを飲み込んで先頭に躍り出ると、ゴールでは後続に2馬身差を付けて有終のゴールへと飛び込んだ。上がり3ハロンの推定33秒7という数字は、2、3着のオーソリティとシャフリヤールの34秒4を0秒7も上回る凄まじさ。まさに”格の違い”を見せつけるような圧勝劇だった。
 「今日で終わりだと思うと込み上げるものがあったし、コントレイルは立派でした。いままでの2年2か月は夢のような時間でした。これまでのジョッキー人生のすべてのこの馬に注ぎ込みましたし、それに応えてくれました。素晴らしい馬と巡り合えたことに感謝しかありません」

 ゴール後に人目をはばからず落涙した福永祐一騎手は、その理由をこう語ると、さらに熱く言葉を継いだ。それは、菊花賞のあとに敗戦を続けるなかで嫌でも耳に入ったであろうコントレイルの能力に対する疑問符への反発心が滲み出るものだった。

「この馬が強いということをみんなに知ってほしかったんです。何が凄いって、(本来は)3000mを走れる馬じゃないんですよ、これまでの三冠馬と違って。調教次第では1200mでも走れるぐらいの馬ですから」

 そうした思いが凝縮した、冷静にして沈着な騎乗ぶりが、20年を超える経験のすべてを表現した福永騎手の騎乗、また、”負けられない”ラストランに向けて愛馬に渾身の仕上げを施した矢作芳人調教や厩舎、牧場スタッフにも頭が下がる思いだ。
  サンデーサイレンス直仔の後継種牡馬が現役を去るなか、これからサンデーサイレンス系という血をつなぐのはディープインパクト産駒となる。すでに結果を出しているキズナに続き、コントレイルであることは間違いないだろう(生産牧場がともに㈱ノースヒルズであることも興味深い)。

「コントレイルの子どもで凱旋門賞を取りたい」とコメントした矢作調教師の思いは、多くのファンが抱く夢と同じはずだ。その日を楽しみに待ちたいと思う。

 2、3着に続いたオーソリティ、シャフリヤールのレース内容は、来年以降に望みをつなぐものだったことを評価したい。なかでも、勝負所で”物見”して追いづらくなる幼さも見られたシャフリヤールの伸びしろは大きいはずで、中距離戦を引っ張る存在になっていきそうだ。

 また、最後に触れておきたいのは和田竜二騎手が手綱をとったキセキの、向正面からの大胆な”まくり”だ。このコンビのダイナミックな動き(もしくは、キセキの予測不能な走り)が緩んでいたペースを引き締め、レースを格段に面白いものにしてくれた。個人的には殊勲賞を贈りたいと思う。

構成●THE DIGEST編集部