今季の大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)は、二刀流で凄まじいシーズンを謳歌した。ゆえに相手から露骨に勝負を避けられる場面は少なくなかった。いわゆる「四球攻め」だ。
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 四球の数はリーグ3位の96を数えた。とりわけ本塁打王争いが佳境を迎えていたシーズン終盤は、相手から“敬遠”された。現地時間9月22日のヒューストン・アストロズ戦では2つの申告敬遠を含む自己最多4四球、翌日の同カードは3四球、そして24日のシアトル・マリナーズ戦では2つの敬遠を含む4打席連続四球を記録。3試合で10四球以上を記録したのは、過去50年間でも3人だけで、大谷を除いては2003年のバリー・ボンズ、2016年のブライス・ハーパーしかいない。

 もっとも、自ら際どいボールを選んで得た四球もある。だが、タイトル獲得に向けて1打席が重要になってくるなかで、まともに勝負をしてもらえない状況は間違いなくフラストレーションが溜まるものだったはずだ。しかし、27歳のサムライは、少なくともグラウンド上で、負の感情をほとんど見せなかった。

 ただ、もとより温厚な性格の持ち主でもある偉才が一度だけ苛立ちを相手に向けたシーンがあった。それは今年4月5日のアストロズ戦、3-5で迎えた8回裏、無死一二塁の場面で代打として登場した時だ。相手右腕ジョー・スミスがカウント0-1から投じた一球は大きくすっぽ抜け、大谷の足に直撃したのである。

 チャンスの場面での打席を死球で不意にされた大谷は、珍しく怒りの表情を浮かべた。そして、ゆっくりと一塁方向へと歩き出すと、試合後に「ランナーがふたりもいる状況で、わざとぶつけるなんてことはしない」と語った37歳のスミスをギロッと睨みつけたのだ。
  その時である。ベテラン投手との遺恨が残りかねない行動を見せた大谷を咄嗟に止めたのが、かつてバッテリーを組んだ”兄貴分”であり、アストロズの正捕手を務めているマーティン・マルドナードだった。

 メジャー11年目の名捕手は「あのような振る舞い方は良くないし、僕は好きじゃない。(大谷の性格を知っているから)本当に驚いた」と、相手の不興を買って不用意なトラブルが起きないようにするためにあえて注意したのだ。

 もちろん、相手の主砲にこうしたアドバイスを送るなど稀有な例である。しかし、効果はあったように思える。マルドナードの注意後、大谷が対戦相手に対して露骨に怒りを見せるシーンはなくなったのだ。むしろ優しく微笑みかける時すらあったぐらいである(主審の明らかな誤審に不満を見せたことはあったが……)。

 とくに今季は「聖人君子」のようにもクローズアップされた。大谷のそんな清々しい振る舞いを生み出したのは、メジャーで初めてバッテリーを組んだ”女房役”が送った苦言なのかもしれない。

構成●THE DIGEST編集部

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