何度目の「なおエ」なのか――現地時間6月28日の試合を見てそう思ったファンは少なくないだろう。

 この日、大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)は今季17号となる豪快アーチを叩き込んだ。さらに2本の二塁打を放ち、3打数3安打2打点の大活躍。がしかし、投壊したチームは4対11で大敗し、「なおエ」が日本のツイッタートレンド上位に入ることになった。

 ご存じない方のために「なおエ」を説明しよう。ニュース記事やスポーツ番組などで大谷の活躍ぶりが報じられると、あたかもチームも勝ったように感じてくるが、最後にそっと「なお、エンジェルスは敗れています」という形で触れられる“現象”を指す。エンジェルスは大谷加入前の2016年から6年連続負け越し中とあって、必然的に「なおエ」を聞く回数も増えてしまうのがより広まる要因にもなっているのだろう。
  ともあれ、「大谷がホームランを打ってもダメだ」という認識を持っている方は少なくないと思うが、果たして本当にチームは勝てていないのだろうか。28日の一打で大谷はメジャー通算110号に到達しているのだが、マルチ本塁打が10試合あり、実は「本塁打を打った試合数」がちょうど100の大台になった。その記念(?)として、「なおエ」がどれだけの割合なのか振り返ってみよう。

 大谷のメジャー第1号は、本拠地で行われた2018年4月3日のクリーブランド・インディアンス戦(現ガーディアンズ)。初回2死二、三塁からカーブをうまくすくい上げての3ランとなった。翌日もサイ・ヤング賞右腕のコリー・クルーバー(現タンパベイ・レイズ)から一発を放つなど、3戦連発でチームも3連勝。結果的に1年目は大谷の本塁打とチームの勝利は連動することが多く、マルチ弾2試合を含めて計20試合で一発を放ち、14勝6敗、勝率7割という数字だった。

 2年目の19年は、シーズン5号を放った6月5日から6試合連続で本塁打試合で勝利と「なおエ」を回避していた。しかし、同月30日のオークランド・アスレティックス戦で初めてマルチ弾をはなった試合での敗戦を経験。それでも最終的に11勝6敗、勝率.647とまずまずだった。

【動画】「大谷は2本塁打8打点の活躍でした。なおエンジェルスは…」の象徴的な試合をチェック コロナ禍による短縮シーズンとなった20年は、大谷自身の成績も振るわず、打率.190、7本塁打、OPS.657。本塁打を打った試合でも4勝3敗でギリギリ勝ち越す程度に終わっている。そしてMVPを獲得した昨シーズン。大谷が日米をまたにかけるセンセーションを巻き起こすと同時に、「なおエ」が大きく浸透した一年でもあったが、やはりこの年は“ひどい”結果となっている。

 偉才が快調に本塁打を量産する裏でチームは負けまくり、10号に到達した時点で3勝7敗。前半戦を終えても本塁打試合での勝敗は15対15のイーブンで、以降も勝った負けたを繰り返した結果、何と21勝22敗(マルチ試合3)の負け越しに終わったのだ。両リーグ3位の46本塁打を稼いで、である。しかもエースとしての役目も果たしながら。このジレンマを考えれば、やはり「なおエ」が浸透するのも納得できるかもしれない。

【動画】「大谷は2本塁打8打点の活躍でした。なおエンジェルスは…」の象徴的な試合をチェック
  そんな中で迎えた今季は、7戦全勝(計9本塁打)の好スタート。ようやく「なおエ」を脱したかに思えたが、5月29日のトロント・ブルージェイズ戦、6月21日のカンザスシティ・ロイヤルズ戦でマルチ本塁打をしながらも敗戦。特にロイヤルズ戦は9回に同点3ラン、自己最多8打点を記録しながらというあまりにもどかしい結果となり、この日も当然(?)「なおエ」がトレンドしていた。

 果たして、大谷の節目となった本塁打を放った試合数「100」における勝敗は、通算59勝41敗、勝率.590。この数字が高いと感じるか低いと感じるかは人それぞれだが、大谷の放つ輝きと比例しているかと言われればそうではないだろう。ちなみに、マルチ本塁打を打った試合では6勝4敗と、直近の負けが大きく影響している。

「なおエ」が話題になるということは、つまりエンジェルスが負けているわけで、大谷が、マイク・トラウトが切望するプレーオフ進出が着実に遠ざかることを意味する。願わくば、「なおエ」がトレンド入りする日が来ないことを祈るばかりである。

構成●SLUGGER編集部

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