「単純に2つ(二刀流を)やっている人がいなかっただけかなと思うので。もしかしたら普通の数字かもしれないですし」

 米球界の歴史に残る偉業を成し遂げてなお、大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)は冷静に語った。

 しかし、彼が現地時間8月9日のオークランド・アスレティックス戦でやってのけた「シーズン2桁本塁打&2桁本塁打」は、本人の言う「普通の数字」ではない。なにせ過去にこれをやってのけたのは、1918年のベーブ・ルースのみ。この1世紀以上もの間、誰もやり遂げていなかった。

 では、ルースと比べてみてはどうか。実際に1918年に残されたスタッツと比較すると、大谷の凄みが浮き彫りになる。

 第一次世界大戦下、なおかつスペイン風邪が世界的に流行していたという時代。世界が大きな不安に包まれていたなかで、メジャー5年目、当時23歳だったルースは投打でスターの片鱗を見せつけた。投げては20試合に登板。13勝(7敗)を挙げ、防御率2.22をマーク。打っては95試合で打率.300、11本塁打、61打点を記録した。
  ただ、すでに当時の「投手・ルース」は全盛期を過ぎていたとも言える。というのも、16年と17年にはシーズン300イニングを投げ、いずれも20勝(16年は23勝、17年は24勝)を超えていた彼のスタッツは、18年以降に急降下。19年からは2桁勝利はなく、21年を最後に本格的な投球はやめている。

 そんな偉人の経歴を見ても、大谷が図抜けているように感じられる。今季の彼は投手としては10勝(7敗)、防御率2.68、奪三振率12.73を記録。打っても打率こそ.256ながら、ルースのそれを凌駕する年間36本ペースで打っている本塁打数は25。もはや“野球の神様”は超えたのではないかとすら思えてくる。

 多岐にわたる娯楽性を提供する二刀流スター。そんな大谷の凄みは、鵜の目鷹の目の全米のメディアの心も鷲掴みにしている。それを物語るのは、米老舗紙『The Wall Street Journal』が掲載した一文だ。

「オオタニがやっていることは、ルースのそれよりもはるかに印象的だ。彼は、『和製ベーブ・ルース』なんかではない。本塁打数でメジャーリーグをリードし、投手と打者としてオールスターに選出された史上初の選手である。伝説と語り継がれるベーブでさえも、このようなことはやったことがないのである」

 もはや“神を越えた”とも評される大谷。その燦然と輝き続けるパフォーマンスは、やはり「普通」ではない。

構成●THE DIGEST編集部

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