現地11月25日、南米チリで開催のエキジビジョンマッチで、アレハンドロ・タビロ(チリ/世界ランク86位)に勝利した元世界王者のラファエル・ナダル(スペイン/現2位)が、試合後の記者会見に出席。現在開催中のカタール・ワールドカップ(W杯)で広がっている人権問題への抗議活動について私見を述べた。

 連日熱戦が繰り広げられ、サッカーファンを興奮の渦に巻き込んでいる4年に1度の祭典。ところが、今大会の開催地であるカタールは、外国人労働者への非人道的な扱いやLGBTQ(性的少数者)への非寛容的な態度をはじめ、人権問題が根深い国の一つであり、現在も世界各国から様々な批判を浴びているのだ。

 カタール大会開幕に伴っては、当初、ドイツやイングランド、ベルギーなど欧州7か国は主将が「One Love」という文言とハートマークが入った、差別反対や多様性を示す虹色の腕章を身に着ける予定だった。

 ところが、ワールドカップを主催するFIFA(国際サッカー連盟)は政治的なメッセージを禁止するという規定や、カタール国内ではそうした行為に及んだ該当者を書類送検にするという背景などを理由に、「腕章を着用した選手には警告を課す」と通告した。

 だが、現地11月23日に実施された1次リーグE組、日本対ドイツの試合前に行なわれた写真撮影では、この通告に納得がいかなかったドイツ代表の選手全員が「我々の声を潰すことはできない」を意味する口を塞ぐポーズを取り、FIFAに抗議の意を表明。ちなみにドイツ国内ではカタールにはびこる人権問題を受け、今回のW杯に関心を持っている人が非常に少ないという。
  そんななか、大のサッカー好きとして知られる36歳のナダルは、会見で初めに「FIFAのイベントだから、FIFAが下したルールや態度によって決まる」と前置きしたうえで、「スポーツのイベントではサッカーをする、テニスをするといった感じで、そのスポーツのプレーに終始することが重要だと思う」と主張した。

 続けて「それ(スポーツ)以外は、世の中を良くするためのプラットフォームに過ぎない。このようなスポーツイベントが開かれている時は、やはりスポーツがメインになる。その他の事柄は、世界がより良い未来へ進むために改善していかなければならないことだ」ともコメント。世間一般の共通認識も踏まえ、W杯における一連の抗議活動を支持するのは少々難しいとの見方を示した。

 しかし、国際的なスポーツイベントで国を取り巻く問題に対して、声を上げることを全否定しているわけではないようだ。「グローバルな世界では、人々がより多くの権利を持たなければならないことは明らかだ。スポーツはメディアへの露出が多いから、ある種の要求ができる場でもある。その意味で、誰もが自分の感情を表現する自由を持ち、常に他人を傷つけないようにしなければならないのだと理解している」とも述べている。

 ちなみにナダルは、この後もエキジビジョンツアーの名目でコロンビアやメキシコといった中南米各国に足を運ぶ予定だ。新シーズン開幕に向けて順調に調整を進めてもらいたい。

文●中村光佑

【PHOTO】「その判定、ちょっと待った!」ナダルはじめ、試合で見かけるトップ選手と審判の熱いやりとり