【ヤクルト】
 3連覇を目指すヤクルトでは、クローザーのスコット・マクガフが退団してメジャーへ復帰した。後釜候補として、テキサス・レンジャーズ時代に年間24セーブを挙げたこともある一方、いろいろと問題を起こした過去もあるケラを獲得。もし期待通りの働きができなければ、抑えは清水昇が任されることになるだろう。

 その他ピーターズ、エスピナルと2人の先発候補も手に入れ、即戦力と見込まれるドラフト1位の吉村貢司郎も併せ、投手メインの補強に終始した。断然リーグ1位の得点力だった攻撃陣にはそれほど梃入れは必要ないとの、王者の余裕による判断か。

【DeNA】
 中日から京田陽太が加入。正遊撃手レベルの選手を中継ぎ左腕(砂田毅樹)との交換で手に入れたわけだが、いくら守備が良くても昨年のような打撃成績ではレギュラーとしては使えない。移籍による心機一転でバッティングが復調することを期待したい。

 正捕手格だった嶺井博希のソフトバンク移籍もダメージ。ドラフト1位入団の松尾汐恩は上々の評価で、開幕スタメンもあり得る――との報道も見られる。とはいえ、高卒新人にレギュラーマスクを任せるのは、チームのためにも本人のためにもなるとは思えない。じっくり育てるほうが、長い目で見ればプラスになるはずだ。昨年は2位とは言っても得失点差−37は4位だったこともあり、現有戦力のレベルアップがないと、ヤクルトに対抗するのは難しい。
 【阪神】
 昨季の得失点差+61は優勝したヤクルトも上回っただけに、チームとしての地力はかなりある。今季は4人の新外国人が加わり、野手のノイジーは高出塁率、ミエセスはパワーが持ち味。昨年は外国人野手3人合わせて12本塁打とパワー不足に泣いたが、ドラフト1位の森下翔太と合わせて、その4倍くらいの数字を望みたい。

 投手ではB・ケラーが退団したガンケルに代わる先発候補で、三振奪取率が高いビーズリーはリリーバータイプ。小幡竜平が遊撃に定着し、一番の泣き所だった内野守備が安定すれば優勝も見えてくる。
 【巨人】
 例年であれば、ソフトバンクに負けないくらい大金をかけて補強にいそしむ巨人は、Bクラスに終わったにもかかわらず、FA選手も積極的には取ろうとしなかった。こちらは阪神を上回る5人の新外国人を入団させ、うち4人が投手。リーグ最下位の防御率3.69だった投手陣の強化を目指してのものだが、解雇したメルセデスやルビー・デラロサ以上の活躍ができるかどうか、現段階では確かなことは言えない。

 同じことが打線にも言え、唯一の新外国人野手であるブリンソンは、24本塁打/OPS.763だったポランコを上回ることができるのか? 萩尾匡也、門脇誠ら新人が評価を上げてはいるものの、今のところ他チームよりも不確定要素は多い。

【広島】
 坂倉将吾が捕手に戻り、代わりの三塁手として新外国人デビッドソンを獲得した。昨年は3Aでの86試合で32本塁打を放ったパワーヒッターで、昨季途中加入の秋山翔吾ともども、得点力アップに貢献してくれそうだ。

 また、防御率3.54で5位だった投手陣強化のため、ドラフトで益田武尚、河野佳、長谷部銀次と社会人投手3人を指名。2年目の黒原拓未らが刺激を受けて成長すれば層の厚みも増し、上位進出への期待も膨らむ。
 【中日】
 最下位に終わった中日は大規模な血の入れ替えを断行した。一昨年までの正二遊間だった阿部寿樹と京田陽太の放出は思い切ったものだったが、代わりに取ったのは投手で、これでは最大の弱点である攻撃力の向上にはつながらない。

 ドラフトで指名した村松開人、田中幹也あたりが即戦力になればいいが、そう簡単にいくかどうか。新外国人として獲得した大砲のアキーノ、出戻りのアルモンテらがよほど頑張らないと、低迷から抜け出すのは難しいだろう。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。