世界女王は、”気配り”も世界一。そう思えるワンシーンだった。

　フィギュアスケートの世界選手権は24日、女子フリーが行なわれ、日本の坂本花織が優勝した。昨年に続き、大会２連覇を達成した坂本。日本人選手の同大会２連覇は史上初で、日本女子フィギュア界の歴史に大きな金字塔を打ち立てた。

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　演技後はジャンプミスを悔やみ頭を抱え、キスクラでも悔し涙を見せていた坂本だったが、表彰式では満面のカオリ・スマイルを見せ、さいたまスーパーアリーナの声援に応えた。金メダルを授与されると、ようやく世界一になった実感を得て表情が和らいだ。

　ところが表彰式後、坂本が周りをキョロキョロしていた。普段ならウイニングランとしてすぐに氷上を周ったり、観客の声援や記念撮影に応じるところだが、坂本は表彰台を降りると、会場を一周せずに客席に向かって一生懸命何かを叫んでいた。理由は、銅メダルに輝いたルナ・ヘンドリックスのベルギー国旗を探していたのだった。

　金メダルに輝いた坂本と、銀メダルを獲得した韓国のイ・ヘインには、それぞれ日の丸と太極旗が手渡されたが、ヘンドリックスだけはベルギー国旗を持っていなかった。それにすぐに気付いた世界女王は客席へ駆け寄り、声を張り上げて「ベルギー国旗を持ってるひとー!?」と叫び、同選手のために一緒にベルギー国旗を探していた。

　坂本のこの”神行動”で、すぐに客席から母国の国旗を受け取ったヘンドリックスは笑顔を見せると、メダリスト３人はウイニングスケートで羽織るための大きな国旗を持ち、一緒に記念撮影に収まった。
 　優勝インタビューでは「４年前と同じミスをしてしまい、悔しさが残る」と語った坂本。しかし、表彰式後に見せた優しい”気遣い”は世界女王にふさわしいプロフェッショナルな行動と言えるだろう。記者会見では、イ・ヘインとヘンドリックスに「坂本選手について、どう思うか？」と質問が飛んだ。

　ヘンドリックスはまず、「憧れの選手」と答えた。「今日、坂本選手と一緒に出場して、同じ表彰台に登れて光栄に思っています。プログラムにスピードがあって、ジャンプも大きい。彼女から学べることがまだまだたくさんある。本当に素晴らしい選手だと思っています」と絶賛した。

　イ・ヘインも「彼女は素晴らしい尊敬するスケーターです」と笑顔で答えた。「アメリカでのグランプリシリーズで会えて嬉しかった。本当はその時に一緒に表彰台に乗りたかったが、叶わなかった。でも、今日はそれが叶った」と喜んだ。

　日本女子史上初の２連覇を飾った坂本。海外スケーターからも尊敬され、愛される人柄を垣間見たワンシーンだった。

取材・文●湯川泰佑輝（THE DIGEST編集部）

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