WBC日本代表のショートとして、3大会ぶりの世界一奪取に貢献した西武の源田壮亮が3月26日に本拠地ベルーナドームに凱旋。練習開始前には、ともに日本代表として戦った山川穂高、幹賢道トレーナーとWBC優勝記念セレモニーに出席し、奥村剛球団社長や松井稼頭央監督、選手、スタッフ、球団職員から祝福を受けた。
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 慣れ親しんだ本拠地は、生憎の雨で少し肌寒いことも含めて懐かしい感覚。チームメイトとは約1か月半ぶりの再会だ。

「みんな、おめでとうって言ってくれました。向こうの球場の雰囲気とか、選手はどうだったのかとか、そういう話をしました」

 侍ジャパンが世界制覇を成し遂げたWBC。だが、源田にとっては決して楽な大会ではなかった。1次リーグの韓国戦で右手小指を骨折するアクシデントに見舞われた。

「(治療で)ベンチ裏に戻って、走塁用の手袋を外した時に『これはちょっとこのままでは無理だな』と思ったんですけど、走塁は多分いけると思ったので、近くにいた中野選手に『走塁行ってくるから、その間に準備しておいて』と言ってグラウンドに戻りました。一流の選手ですし、あとは任せたっていう感じで行きました」

 その後、源田は栗山英樹監督の意向もあって1次リーグ残り2試合を欠場。そのまま離脱かと思われたが、負ければ終わりのイタリア代表との準々決勝にはスタメンで出場。離脱の可能性を報道で知っていたファンの集まった球場をどよめかせた。

「やっぱり、WBCという本当に野球人にとって一番憧れの舞台。ちっちゃい頃から夢見てきましたし、また今回、栗山監督から最初の12人のメンバーにも選んでいただいたので、もうショートを自分が守り切るんだっていう気持ちはすごくありました」

 ただ、思いだけでどうにかなる問題ではない。そんな源田の背中を押したのは、他ならぬ西武球団だった。

「球団も『ゲンちゃんの意思を尊重するよ」って言ってくれました。『途中で抜けたら、多分一生後悔するだろう』って。本当に感謝しています」

 源田の思いと、それに応えた西武球団の思い。全てをしっかり受け止めたうえで、日本代表の栗山監督は、スタメンに源田の名前を書いたのだろう。そして、3大会ぶりの優勝という最高の結果へとつなげていった。
  決勝戦を目前に控え、ロッカールームで大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)が「憧れるのはやめましょう」とチームを鼓舞していたが、対戦相手となるメジャーリーガーたちをどう見ていたのか。

「本当に名前くらいしかわからない状態だったので、あまり気にならなかったです。練習も一切見ませんでした」

 メジャーの選手たちを知らないことで、特別な意識を持たなかったという源田。さらに、代表合宿中のダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)の言葉も戦う上では力になったと振り返る。

「日本の合宿の時から、ダルさんが『絶対このチームはアメリカの選手だったり、メジャーの選手に負けてない。絶対、何も劣っている部分はない』ってずっと言ってくれていたので、そういう部分で、すごくみんな自信を持って、試合に臨めていたと思います」 骨折を押してまで出場し続けたWBCで、源田は多くのことを学んだ。

「大谷選手とか、ダルビッシュさんとか、あれほどの選手が、ああいう姿を見せてくれると、やはり選手たちもすごく気持ちは高ぶりますし、いい時間になりました。やっぱり超一流の選手たちは、試合までの準備であったりとか、試合中の動きはすごく僕自身勉強になりました。そういうものを(チームに)伝えていけたらいいかなと思っています。」

 さらに、こうも付け加える。

「やっぱり、ジャパンのユニフォームをまた着て野球をしたいと、すごく思わされました。『絶対、あそこ(日本代表)を目指した方がいいよ』という話を、(ライオンズの選手)何人かと話しましたが『選ばれるように頑張りたい』という選手もいました。本当にシーズンを戦ううえで、すごくモチュベーションになりますし、活躍してジャパンのユニフォームを着るんだっていうものは、みんなの気持ちをあげるんじゃないかと思います」

 世界最高峰の舞台。実際にそこに立ってプレーした源田だからこそ、得られた感覚を今度はシーズンを通して、チームに還元していくつもりだ。
  WBCでの激闘は終わった。ここからは30日に開幕を控えるパ・リーグのペナントレースが待っている。チームを離れ、代表で戦っていた期間も、西武の試合映像は全てチェックしていたという源田。今後の出場はどうなるのか。

「(復帰は)今、話しているところですが、本当にライオンズファンの方に心配をかけてしまっていると思うので、シーズンでまた元気にプレーする姿を見せたいですし、ひと回り成長した姿を見せられるように頑張ります」

 練習合流を含めて、今後は骨折箇所の状態を見ながらの判断となるようだが、激戦の傷を癒し、これからやってくる春の陽気と共に、世界に見せつけた“源田のチカラ”がベルーナドームで堪能できる日を楽しみに待ちたい。

取材・文●岩国誠

【著者プロフィール】
岩国誠(いわくにまこと):1973年3月26日生まれ。32歳でプロ野球を取り扱うスポーツ情報番組のADとしてテレビ業界入り。Webコンテンツ制作会社を経て、フリーランスに転身。それを機に、フリーライターとしての活動を始め、現在も映像ディレクターとwebライターの二刀流でNPBや独立リーグの取材を行っている。

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