4月29日、この夏開催されるワールドカップの決勝の地、フィリピンのマニラで予選グループの抽選会が行なわれた。今回は前編で紹介したグループA〜Dに続き、日本とジャカルタで試合が開催されるグループE〜Hの顔ぶれと展望を見ていきたい(カッコ内はワールドカップ出場回数)。

■グループE 会場:沖縄(日本)
1 ドイツ(6回)
2 フィンランド(1回)
3 オーストラリア(12回)
4 日本(5回)

 昨年のユーロバスケット3位のドイツ、同7位のフィンランド、東京オリンピック銅メダルのオーストラリア。“この3国の中から、第1ラウンドで脱落するチームが出るのか”と嘆かれるくらい、強豪が揃ったグループだ。

 ロサンゼルス・レイカーズの司令塔デニス・シュルーダーはユーロバスケットでも傑出した働きを披露し、フランツとモリッツのヴァグナー兄弟(ともにオーランド・マジック)に欧州組と、近年のドイツ代表は黄金期と呼べるほど優秀な人材を携えている。
  フィンランドも同様で、ラウリー・マルッカネン(ユタ・ジャズ)は絶対的なチームリーダーではあるが、ほかにもガッツのある好プレーヤーが集まり、マルッカネンのワンマンチームでは決してない。欧州から一番乗りで本戦出場を決めた彼らは、好調の波に乗っている。フィジカルとアスレティック能力に長けたオーストラリアの実力も周知の通りだ。

 八村塁(レイカーズ)、渡邊雄太(ブルックリン・ネッツ)と2人のNBAプレーヤーを擁する日本にとっては厳しいグループとなったが、彼らもまた、全敗に終わった前回大会と比較すると、選手、そして新HC(ヘッドコーチ)にトム・ホーバスを迎え、チームとして大きく成長している。オリンピック出場権が得られるアジア勢でNo.1のポジション確保を目標に、まずは1勝を目指したい。

 ちなみに、“wolf pack”ことフィンランドチームの応援団は、とても明るくて賑やかなことで知られている。沖縄会場を大いに盛り上げてくれるだろう。■グループF 会場:沖縄(日本)
1 スロベニア(3回)
2 カーボベルデ共和国(初)
3 ジョージア(初)
4 ベネズエラ(4回)

 初出場組が2チーム揃ったこのグループで、スロベニアの首位通過はほぼ確実。今季NBAのプレーオフ出場を逃したルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)は、マインドをワールドカップに向けていることだろう。

 ただ、ジョージアはユーロバスケットではすでにお馴染みの国。アメリカ生まれのサド・マクファデンが加わり、ベテランのギオルギ・シェルマディニ、トルニケ・シェンゲリアと形成するトリオの破壊力は、今大会の予選でも絶大だった。

 初出場のカーボベルデを牽引するのは、欧州リーグで活躍するトップセンター、レアル・マドリーのウォルター・タバレス(元アトランタ・ホークスほか)だ。同じくワールドカップデビューとなるジョージアとの第1試合は注目の一戦となるだろう。

 前回大会もグループ予選を突破しているベネズエラは、国内でプレーする古参のメンバーが中心でチーム力が高いのが強み。新参の2チームとどう与するのか。
 ■グループG 会場:ジャカルタ(インドネシア)
1 イラン(3回)
2 スペイン(12回/優勝2回)
3 コートジボワール(4回)
4 ブラジル(18回/優勝2回)

 ディフェンディング・チャンピオンのスペインと、昨年のアメリカップ準優勝のブラジルがいるこのグループで、イランとコートジボワールのグループ突破はかなり厳しい。

 昨年のユーロバスケットの覇者スペインは、リッキー・ルビオ(クリーブランド・キャバリアーズ)がケガで不在ながら、帰化したロレンゾ・ブラウン(元トロント・ラプターズほか)とヴィリ―(ニューオリンズ・ペリカンズ)&ファンチョ(ラプターズ)のエルナンゴメス兄弟、38歳のベテラン、ルディ・フェルナンデス(元ポートランド・トレイルブレイザーズほか)がいぶし銀の活躍と、改めて層の厚さを見せつけた。

 その彼らと初戦で対戦するコートジボワールは、アフリカ大陸から一番乗りで本戦出場を決め、勢いはある。フランスリーグでプレーする選手が主力を占め、ヘッドコーチはスロベニア人と、国際バスケへの対応力は高い。前回大会は0勝で終えた彼らは、今回はアフリカ勢No.1の座を狙っていることだろう。

 イランは、今年2月のアジア最終予選で日本と中国に2連敗したが、オーストラリアがカザフスタンを破ったおかげで出場権を得た。2010年の初参戦から4大会連続の出場だが、主力は世代交代の時期を迎えている。大会時には38歳になるイラン初のNBA選手、ハメド・ハッダディ(元メンフィス・グリズリーズほか)は、前3大会すべてに出場しているチームの支柱。昨年のアジアカップもハッダディの活躍で、予選ラウンドは日本戦を含む3戦で3勝している。中国リーグでプレーしている彼は負傷中とのことだが、経過が気になるところだ。■グループH 会場:ジャカルタ(インドネシア)
1 カナダ(14回)
2 ラトビア(初)
3 レバノン(3回)
4 フランス(8回)

 かなり面白そうなグループだ。

 ニック・ナースHC率いるカナダは、この大会と来年のパリ五輪を視野に入れ、シェイ・ギルジャス・アレキサンダー(オクラホマシティ・サンダー)、ジャマール・マレー(デンバー・ナゲッツ)、RJ・バレット(ニューヨーク・ニックス)、ディロン・ブルックス(グリズリーズ)ら、NBAで活躍中の選手を代表チームに組み入れるプロジェクトを立ち上げた。勢いのある若手の揃ったカナダは、今大会の注目チームだ。
  その彼らと初戦でぶつかるフランスには、大会時に来季プレーするNBAの球団が決定しているであろうヴィクター・ウェンバンヤマがいる。2021年の東京五輪では初戦でアメリカを破り、昨年のユーロバスケットでも準優勝と、今大会も優勝候補の一角。両者の対決はエキサイティングな戦いになることだろう。

 その両雄に割って入りそうなのがラトビア。ワールドカップは初のお目見えだが、ユーロバスケットではすでにお馴染みで、2017年大会は5位という好成績も残している。今予選では、セルビアとの初戦に100−101と僅差で敗れた後は11戦全勝と絶好調。本戦ではそのチームにクリスタプス・ポルジンギス(ワシントン・ウィザーズ)も加わる。

 レバノンのグループ突破は厳しそうだが、昨年のアジアカップ準優勝の実力を引っ提げた彼らは、順位決定戦で日本の難敵となりそうだ。

文●小川由紀子

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