3月のフィギュアスケート世界選手権で日本のアイスダンス最高成績(11位)をマークした”かなだい”こと、村元哉中&高橋大輔組が5月1日にオフィシャルチームアカウントのインスタグラムで今シーズンをもって、フィギュアスケート競技から現役を引退することを発表。翌2日、都内で引退会見が行なわれた。

 二人は晴れ晴れとした表情で会見に臨んだ。今季最後の公式戦だった世界国別対抗戦後、来季について問われたときには「これから考えます」と明言を避けていたカップルが、競技会から退くことを発表した。

 会見では、テレビカメラに向かって高橋が「僕としてはまた新たなスタートだなと感じている」と話し、村元は「3季終えて、いろんなことを経験してアイスダンスの競技生活から引退することを決断しました」と語った。

 引退を決断した高橋はバンクーバー五輪のプレシーズン(2008年)に右膝の前十字靭帯断裂と半月板損傷の大怪我を負ったことに触れ、「右膝が限界を感じた」と話した。「体がついていかないというのが、今季感じてしまった。もう続けても、成長の部分でやっていけない」と理由を説明した。

 村元は「これ以上のパートナーはいない」と断言。「新しいパートナーを探すことは全く考えなかった」と言い、ともに引退することを受け入れたと明かした。
  国内でも屈指の人気を誇るアイスダンスカップル、”かなだい”の現役引退発表は、海外メディアからも脚光を浴びている。フランスの国際ニュース専門チャンネル『France 24』は「2010年にアジア人初のフィギュアスケート世界王者となった日本のダイスケ・タカハシが、アイスダンスのパートナーだったカナ・ムラモトと同時に現役引退を発表した」と報じている。

 記事では、高橋のこれまでのキャリアにスポットを当てており、「37歳のタカハシは、2010年のトリノ大会でカナダのパトリック・チャン、フランスのブライアン・ジュベールを抑えて世界選手権のタイトルを獲得し、バンクーバー五輪で日本人初の銅メダルを獲得した」と高橋のシングル時代を振り返った。

 続いて、「2014年に一旦引退したが、4年後に再びスケート靴を履き、2020年にはムラモトをパートナーにアイスダンスに転向した」と説明。「”かなだい”の愛称で親しまれる二人は、インスタグラムに動画を投稿し、引退発表を『良いタイミングを探している』と述べ、『発表する時期が来たんだ』とタカハシは付け加えた」と引退時期を模索していた高橋のコメントを引用している。

 他にも、日本フィギュアの歴史を変えた37歳に熱視線を送ったメディアがある。オリンピック公式サイト『The Olympic Games』だ。同サイトは2日、高橋が銅メダルを獲得したバンクーバー五輪のショート演技の動画を投稿した。

 文面には「元世界チャンピオンのダイスケ・タカハシが、カナ・ムラモトとのアイスダンスなど20年のキャリアを経て引退した。ユヅル・ハニュウ、ショウマ・ウノら若い世代へ道を切り開いた」と綴り、「日本初の男子フィギュアスケートオリンピックメダリストである」と、日本フィギュアの歴史を刻んだレジェンドへ敬意を込めている。

「今は次にやりたいことも明確にある」と話す高橋。「(今回は)全部準備ができての引退。2回目は戻れないので、もう大丈夫。十分やりきった。すっきりしてます」と、その表情は晴れやかだった。

 日本の男子フィギュアを牽引し、限界まで氷上に立ち続け、アイスダンス界にも多大な軌跡を残したレジェンドが、再びスケート靴を置いた。

構成●THE DIGEST編集部

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