今、NPBは空前の“村上ブーム”だ。

 昨季、“村神様”こと村上宗隆(ヤクルト)が史上最年少で三冠王となったのに続き、今季は村上頌樹(阪神)が開幕から快投を続けている。この、村上が最もアツいタイミングに乗じ、「オールタイム・ベスト村上」を決定すべく、過去にNPBでプレーした17人の村上(うち現役4人)の中から、ベスト5を選んでみると以下のようになった。

5位 村上之宏(元南海)&村上頌樹(阪神)

 前者の読み方は「ゆきひろ」。日本通運浦和から1976年ドラフト4位で南海から指名され、翌年の交渉期限ギリギリに入団した右腕投手だ。

 スリークウォーターから投じる角度のある速球とカーブを武器にルーキーイヤーから先発にリリーフにとフル回転。やや調子の波は激しかったが、最終的に40登板で5勝8敗3セーブを記録。ルーキーでは唯一規定投球回に到達し、「一生に一回だから何とか獲りたい」と宣言していた新人王を見事受賞した。

 一方、2021年ドラフト5位から這い上がり、大卒3年目にして開幕から31イニング無失点のプロ野球タイ記録を達成するなど、快進撃を続ける頌樹のことは、いまさら多くを語るまでもないだろう。インパクトはセ・リーグのルーキーの中でも随一だけに、今の勢いを持続できれば、之宏と宗隆に次ぐ村上史上3人目の新人王を受賞できる可能性は高い。
 4位 村上隆行(嵩幸/元近鉄ほか)

 リストの強さを生かした勝負強い打撃で、1990年代の近鉄いてまえ打線の一角を担ったスラッガー。大牟田高時代は強打の二刀流選手として活躍し、元首位打者の球団の英雄・佐々木恭介の強い推薦を受けて83年ドラフト3位で近鉄に入団した。プロ入り後は遊撃手にコンバートされ、名コーチ中西太の指導を受けて85年にレギュラーを手中に収めると、以後9年間で8度の2ケタ本塁打を記録した。

 故障が多く、規定打席到達は17年で3度のみながら、通算147本塁打のうち、サヨナラ弾は3本、満塁弾も2本と、ここぞという場面に強かった。87年にはオールスターに選ばれて2打席連続ホームラン、88年には負ければ優勝の望みが断たれる「10.19」のダブルヘッダー第1戦の8回に、起死回生の同点二塁打を放って2戦目に望みをつなぐなど名場面も多く、タイトル獲得こそないが「プロ野球村上史」に欠くべからざる1ページを刻んだ選手だ。

3位 村上公康(元ロッテほか)

 強肩強打で2球団の扇の要を担った捕手。西条高では3年時に甲子園ベスト4入りに貢献し、立教大(中退)、日本楽器でも活躍。66年ドラフト4位(第1次)で西鉄ライオンズ(現西武)に入団した。1年目から一軍入りし、3年目の69年に正捕手の座をつかんでキャリアハイの14本塁打を放っている。

 70年に勃発した八百長事件、黒い霧事件にかかわったとの疑惑をかけられ、72年にトレードでロッテへ放出されるも、新天地でも再び正捕手の座を奪取。村田兆治の落差のあるフォークをノーサインで捕球するなど、卓越したキャッチングと強肩で投手陣を引っ張り、74年には94試合で9本塁打、盗塁阻止率49.4%と攻守にわたる活躍で球団の日本一に貢献。ベストナインとダイヤモンドグラブ賞(現ゴールデン・グラブ賞)を受賞した。村上姓ではほぼ唯一の実績豊富な捕手だ。
 2位 村上雅則(元南海ほか)

 野茂英雄より30年先にMLBでプレーした日本人史上初のメジャーリーガー。法政二高から63年に南海入りし、翌年に渡米。当初はジャイアンツ傘下の1Aフレズノでプレーしていたが、8月にメジャー昇格が告げられ、通算660本塁打のウィリー・メイズや、同243勝のホアン・マリシャルら錚々たるレジェンドとともにプレーした。2年間で計54試合に登板し、65年にはサイ・ヤング賞3度のサンディ・コーファックス(当時ドジャース)から日本人史上初の安打(バントヒット)も放った。

 帰国後も南海や日本ハムで引き続き活躍し、68年には最高勝率のタイトルを獲得、77〜78年には2年連続リーグ最多登板と先発にリリーフにと役割を問わずフル回転。18年間で566試合に登板し、103勝を挙げている。また、高校時代から定評のあった打撃でも活躍。70年には打率.306&4本塁打を記録している。
 1位 村上宗隆

 今季は例年にない絶不調に苦しんでいるとしても、史上最高の村上は“村神様”をおいて他にない。19年には36本塁打で高卒2年目の最多記録に並んだのを皮切りに、数々の記録を樹立。21年には史上最年少で通算100本塁打に到達するなど、リーグ最多タイの39本塁打を放ってヤクルトの日本一に貢献、MVPも獲得した。

 そして何より、昨季の大活躍だけでも他のすべての村上を圧倒したといっていい。7月に5打席連続本塁打、史上最年少22歳での三冠王は「村上史」だけでなく、プロ野球史に燦然と輝く偉業だ。25年シーズン終了後のメジャー挑戦を表明しているが、それまでにNPBでどれだけの成績を残すのか、そしてアメリカでどれだけの活躍を見せてくれるのかが今から楽しみで、今後しばらく「史上最高の村上」の座はゆるがないだろう。

文●筒居一孝(SLUGGER編集部)