6月5日(現地)、ルイス・アライズ(マーリンズ)がロイヤルズ戦で3安打を放って、打率はついに.399まで上昇。夢の4割が見えてきた。

 MLBでは、1941年のテッド・ウィリアムズ(レッドソックス)が打率.406を記録して以来、4割打者は出ていない。それ以降、名だたる安打製造機たちが大記録に挑戦しながら、そのたびに壁に跳ね返されてきた。

 しかし、アライズの打撃を見ていると、「彼ならやってくれるかもしれない」と思えてくる。

 昨季、打率.316をマークしてメジャー4年目にして初の首位打者に輝いたアライズは、ツインズからマーリンズへ移籍した今季も開幕からヒットを量産した。

 4月終了時点の打率は.438で、これは1942年以降では歴代7位の高水準。5月に入って失速し、打率も一時は.371まで落ち込んだが、そこから再び上昇気流に乗ると、6月3日のアスレティックス戦ではキャリハイの5安打を記録して打率は.390へ回復。今日の3安打で、大台到達が間近に迫った。

 アライズの類稀な打撃センスを印象付けたのが、5月27日のエンジェルス戦だった。 この日、投手・大谷翔平と対戦したアライズは第1打席は一塁ゴロ、第2打席はピッチャーゴロに打ち取られたが、1対1で迎えた5回表、2死一、三塁のチャンスで入った第3打席は違った。

 初球は99マイルの高めの4シームに空振り、2球目も同じく高めの99マイルの4シームをファウル。だが、カウント0−2と追い込まれた3球目、外角低めへのスプリッターを見事にライト前に弾き返す勝ち越しタイムリーを放った。

 最近はスイーパーに影に隠れているが、昨季は空振り/スウィング率50%近くを誇った大谷のウイニングショットに対し、まったくタイミングを狂わされることなく打ち返した。的確な配球の読みと高度なバットコントロール。まさに超一級品のバッティングだった。
 ちなみに、ウィリアムズの達成以降で最も4割に近付いたのは1994年のトニー・グウィン(パドレス)で打率.394。もっとも、この年はストライキによりシーズンが途中が打ち切られた年で、フルシーズンを戦った選手としては80年のジョージ・ブレット(ロイヤルズ)の打率.390が最も近い。

 あのイチローですら、キャリアハイは年間最多安打記録(262)を樹立した2004年の.372。打率4割への道がいかに険しいものかよく分かる。そのイチローも一目置くアライズの快進撃はどこまで続くだろうか。

構成●SLUGGER編集部