テニスの全仏オープンで起きた騒動はいまだ収まる気配を見せていない。

 現地6月4日の女子ダブルス3回戦で、加藤未唯/アルディラ・スチアディ組(日本/インドネシア)が失格処分となった問題で、一部メディアからは騒動の発端となったボールキッズが無用化しているとの論調も出てきている。
  この騒動は、試合中に加藤が相手コートに向けて緩やかに打ち返した球が、ボールガールに直撃したことがきっかけ。審判からは加藤に警告が発されたものの、ショックを受けて泣き止まないボールガールの様子から、レフェリー判断で加藤組に失格処分が言い渡された。これを受けて、審判を煽り加藤組の失格を促すようなスポーツマンシップに欠けた言動をしたとされる対戦相手のマリエ・ボウズコワ/サラ・ソリベストルモ組(チェコ/スペイン)は、激しい非難に晒されている。

 こうした一連の流れを受けて、オーストラリアのニュースサイト『news.com.au』は「テニス界はボールキッズに“甘く”なり、彼らを消滅させるために最善を尽くしている」との見出しで、ATPツアーで優勝経験もあるオーストラリア人選手ジョン・ミルマンのコメントを掲載している。

 記事では今回の騒動に関して、「対戦相手を不戦勝に追い込むべく主審を煽り、その恥ずべき行為が全面的に露呈したことについては、もう十分に語られてきた。加藤は悪意なくボールを返しただけであり、だからこそこの判定は大きく間違っていた」と指摘したうえで、「ボールキッズへの敬意と安全の両方が不可欠だが、今回の出来事を見て私は考えさせられた…ボールキッズがいる意味とはなんなのか、彼らに現在求められている能力(役割)ではボールキッズの必要性はあるのだろうか?」とボールキッズの存在自体に疑問を呈した。

 ミルマンがボールキッズを“不要”とする理由は、近年彼らを“守る”という意識が強くなったために、担うべき役割が減少し、その存在を「あまりにも無用なものにし過ぎている」からだとして、次のように述べている。

「ここ数年、私たちは主にメディアや保護者からの訴えによって、ボールキッズの役割が減少するのを目の当たりにしてきた」
「ボールキッズは選手のタオルに触れたり、チェンジエンドで水筒を取ったりすることが禁止されている。細菌に対する恐怖は、あまりにも大きな抑止力であることが判明した」

 このように語る同選手は、コロナ禍における役割の減少や対外的な接触あるいは外出を制限する風潮はボールキッズの“過保護”を助長し、結果的にその役割を無用なものとして「彼らは不要になるだろう」と指摘している。

 今回の問題によって、審判団が下した不可解な判定やボウズコワ/ソリベストルモ組のスポーツマンシップに欠けた言動が大きくクローズアップされてきたが、ここにきてボールキッズの存在意義への疑問まで浮上。果たして、この騒動はいかなる決着を見ることになるのだろうか。

構成●THE DIGEST編集部
【動画】ボールガールを直撃…加藤未唯に失格処分が下されるまで

【画像】加藤組が協議するなか、ベンチで“ほくそ笑む”ボウズコワとソリベストルモ

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