現地時間6月7日に行なわれたNBAファイナル第3戦、マイアミ・ヒートはデンバー・ナゲッツに94−109で敗れて、再びホームコート・アドバンテージを失った。

 1勝1敗でホームに戻ってきたこの試合で、ジミー・バトラーはシリーズ最多の28得点に4アシスト、バム・アデバヨも22得点、17リバウンド、3アシストと奮闘するも、ほかに2桁得点に達したのはケイレブ・マーティン(10得点)のみ。チーム全体のフィールドゴール成功率は37.0%(34/92)、3ポイント成功率も31.4%(11/35)と、いずれもシリーズワーストに沈んだ。

 ヒートは第2戦と同様に、ナゲッツのジャマール・マレーとニコラ・ヨキッチの2メンゲームに対してダブルチームを仕掛け、マレーから7ターンオーバーを誘発。しかしナゲッツも修正を施し、アーロン・ゴードンやクリスチャン・ブラウンら他選手が効果的なカッティングからイージーショットを重ねた。

 また、リバウンドではヒートの33本に対してナゲッツが58本、ペイントエリアの得点でも34−60と大差をつけられた。
  試合後の会見で、記者からチームのエナジーが欠けていた理由を問われたバトラーは、「分からない。俺には答えられない」とコメント。さらに次のように続けた。

「俺たちのホームで、何かがあったんだと思う。こんなことは起こらない。また、起きてはいけないんだ。すべては俺から始まるから、ディフェンス面で集中していかなきゃいけない。(ディフェンスに)戻って、ルーズボールも取りにいかないといけない。俺がそうやってプレーし始めれば、チームのみんなもついてきてくれる」

 ナゲッツはマレーがゲームハイの34得点に10リバウンド、10アシスト、ヨキッチが32得点、21リバウンド、10アシストと、2人揃って30得点超えのトリプルダブルというNBA史上初の快挙を達成。

 抜群の連携を見せる両輪は、ファイナル3試合を終えて合計で平均59.3点、20.7リバウンド、19.3アシスト、どちらもフィールドゴール成功率50.0%、フリースロー成功率85.0%以上という好スタッツをマーク。『ESPN Stats & Info』によると、ここまでの3試合でナゲッツはペイントエリアで48得点もヒートを上回っている。これは2001年のファイナルでロサンゼルス・レイカーズのシャキール・オニールがフィラデルフィア・セブンティシクサーズ相手に記録した時以来の大差だという。
  ヒートはバトラーやマーティン、ゲイブ・ヴィンセントらがマレーに対峙しつつ、アデバヨがダブルチームを仕掛けて攻撃の起点を潰そうとしたが、ヨキッチとの2メンゲームを止められず。両選手によるピック&ロールの特異性について、アデバヨは「ひとつはヨキッチがパスを捌けること。そしてジャマールはゴールを狙ってくる。そこが彼らをよりダイナミックなデュオにしている」と話していた。

 また、カイル・ラウリーが「ジャマール・マレーから始まった。彼がヨキッチの仕事を楽にしていたと思う」と語ったように、第3戦ではマレーがルーズボール争いやリバウンドなどでエナジーを注入し、チームを盛り立てていた。
  ヒートは右手骨折で離脱中のタイラー・ヒーローの復帰時期に注目が集まっているが、第4戦も欠場が発表されており、現有戦力で現状を打破しなければならない。

「俺たちはさらなるエナジーを持ち込んでコートに入り、もっと努力しなきゃいけない。それは修正可能なことだ。俺たちにかかっている。戦術を修正することなんかじゃないんだ。フロアにダイブしてルーズボールへ飛び込み、ディフェンシブ・リバウンドを奪っていくこと。そうすれば、きっと違ったゲームになる」とバトラーは言う。

 明日の第4戦、ヒートは2日前の完敗から立ち直ることができるのか。次戦を落とせば王手をかけられてしまうだけに、必勝態勢で臨んでくるだろう。

文●秋山裕之(フリーライター)

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