開幕から負けなしの7連勝。絶好調の男子バレー日本代表、個々の力が結集したチームワークもさることながら、ファンタスティックなプレーで世界を魅了しているのがアウトサイドヒッターの高橋藍だ。

【動画】ブラジルを撃破! 高橋藍の好プレー集

 東山高校を卒業して間もない2020年に日本代表へ初選出されたが、当時は「東京オリンピック出場を目指したい」という高橋の目標を聞いても、まだまだ遠いことだと誰もが考えていた。しかし東京オリンピックが1年の延期となり、飛躍的な成長を遂げた彼は19歳で代表入りしオリンピックに出場。主将の石川祐希と同じアウトサイドヒッターとして試合に出場し、29年ぶりのベスト8進出に貢献した。

 さらなる進化を遂げたのは東京オリンピック直後の21年12月。日本体育大学の選手として全日本インカレに出場した高橋は、大会を終えるとイタリアへ。セリエAのパドヴァからオファーを受ける形で、石川と同様に現役大学生でありながら海外リーグを主戦場とした。簡単ではない挑戦ではあるが「東京オリンピックで自分の課題を確認した。パリ・オリンピックでもっと高いレベルに到達するために、海外の高さと戦うことで自分の力をつけたい」と目標を掲げた。
  すでにリーグが開幕してからの合流であったために、アウトサイドヒッターとしての評価は上がらず、守備力を買われリベロとして起用される機会もあったが、高橋は腐らなかった。逃したチャンスはもっと大きなものにしてつかめ、とばかりに翌年の22年にもパドヴァへ。しかもシーズン開幕直前にチームへ合流し、開幕から終了までの1シーズンをイタリアで戦い抜いた。

 その覚悟が本物であり、得られた大きさを形にして見せたのがネーションズリーグだろう。石川の対角に入り、ディフェンス面での貢献はもちろんだが、前衛、後衛、攻撃面でもこれまでとは比べ物にならないほどの存在感を発揮した。打点も高くなり、2mを超えるブロックに対しても時に上から決めるなど、イタリアで培ったテクニックを至るところで見せつけている。
  攻撃だけでなくスピードと重みの増したサーブでもポイントを重ね、二段トスも打ち切る。次世代のエースとはもはや誰も見ず、石川と共に日本の両エースと世界に示す活躍で、連日世界を驚かせた。

 象徴的だったのが、キューバ戦で見せたアンダートスでのフェイクセットだ。これまでの試合でも、セッターの関田誠大がレシーブした後、2本目のボールをバックセンターから高橋や石川が飛び込み、打つと見せかけてオーバーで両サイドの選手にトスを上げる場面は何度もあった。だがキューバ戦では高橋のジャンプとボールの高さがやや合わず、トスを上げるのは難しいと思われたボールを、なんとアンダーハンドでトス。そのボールを西田有志がバックから押し込むと、スタンドから大歓声が起こり、21歳も満面の笑みを浮かべた。国際連盟の公式SNSで、その動画が公開されると「この技の名前は何にしようか」と自身のSNSで呼びかけるお茶目な一面を見せ、ファンを沸かせた。

 常日頃から「これまでいなかったような選手になりたい」「誰もやっていないことを自分がやりたい」と口にしてきたように、新たな挑戦を恐れず楽しむ。勝っているからだけでなく、レベルアップしたプレーが世界で通用する実感を楽しむ姿も、世界中のファンを魅了している。

 22日のブラジル戦は2セットを先取した後、2セットを取り返され、第5セットもデュースにもつれたが最後は石川からの二段トスを高橋が決めて30年ぶりとなる勝利を収めた。
  直後にコートで行なわれたインタビューでは、流暢な英語で興奮気味に「信じられない」と語った後「ブラジル戦のためにたくさんのトレーニングを重ね、勝つことを目指してきた」と喜びを噛みしめた。自信と余裕にあふれた振る舞いは、日本のエースとして堂々たる姿でもあった。

 東京オリンピックでは最年少だったが、現在のチームには現役大学生の甲斐優斗もいる。大会直前まで合流した同じく現役大学生の麻野堅斗は同じ東山高校の後輩でもある。強くなった背中を後輩に見せ、チームを引っ張る。高橋の進化が、日本の進化につながっているのは間違いない。

構成●THE DIGEST編集部

【PHOTO】バレーボールネーションズリーグ2023男子日本代表、龍神NIPPON・髙橋藍を特集!

【PHOTO】バレーボールネーションズリーグ2023男子日本代表、龍神NIPPONのキャプテン・石川祐希を特集!

【関連記事】「歴史が変わった瞬間!」日本代表、ブラジル撃破で無傷の7連勝! 30年ぶりの大金星に感動の嵐「なんという結末だ!!」【男子バレーVNL】