ドラフト会議まであと約1ヵ月となり、各球団の動向が注目される時期となった。今年は大学生の投手と高校生のスラッガーに上位候補が多いと言われているが、果たして狙うべき選手は誰なのか。各球団の現状から探ってみたいと思う。今回はパ・リーグの6球団だ。

【動画】佐々木麟太郎、火の吹くような痛烈な当たりのセンター前ヒットを放つ!

【オリックス】
細野晴希(東洋大)
武内夏暉(国学院大)

 リーグ三連覇が目前に迫っているオリックス。先発投手陣は12球団でもナンバーワンと言える顔ぶれで、また野手も主砲の吉田正尚が抜けてもFAで獲得した森友哉や急成長の頓宮裕真などの活躍でカバーした。ドラフトだけでなく的確な補強が機能しており、しばらく強さは続きそうだが、やはり気になるのはエースの山本由伸がオフにメジャー移籍の可能性が高いことだ。また、投手では左腕の絶対数が少ないのも気になる。

 豊作の大学生なら細野晴希(東洋大)、武内夏暉(国学院大)、将来性を考えて高校生なら前田悠伍(大阪桐蔭)、東松快征(享栄)などが候補となるだろう。野手で気になるのは捕手だ。森、若月はまだまだ力があるが、若手は少し手薄な印象を受ける。今年は高校生の候補が多くないが、肩に関してはナンバーワンと言える堀柊那(報徳学園)などは補強ポイントにマッチした選手と言えるだろう。【ロッテ】
佐々木麟太郎(花巻東高)
真鍋慧(広陵高)
明瀬諒介(鹿児島城西高)

 終盤に失速したものの、Bクラスだった昨年から浮上したロッテ。投手は佐々木朗希に加えて種市篤暉、西野勇士が復活したが、リリーフ陣はベテランが多いだけに補強ポイントと言える。また野手は安田尚憲、藤原恭大の2人がなかなか殻を破れず、中村奨吾も成績を落としているのが気がかりだ。

 まず狙うべきは中軸を担える可能性を秘めた野手で、佐々木麟太郎(花巻東高)、真鍋慧(広陵高)、明瀬諒介(鹿児島城西高)の名前が挙がる。安田にプレッシャーを与えるという意味でもぜひこの3人のうち1人は獲得したい。一方、リリーフタイプの投手では松本凌人(名城大)が面白い。この秋は少し調子を落としているが、好調時は150キロ前後のスピードを誇る本格派サイドスローで、大学選手権や大学日本代表など大舞台での経験も豊富だ。短いイニングであれば早くから一軍の戦力になる可能性も高い。

【ソフトバンク】
武内夏暉(国学院大)
常広羽也斗(青山学院大)

 大型補強で3年ぶりの優勝を狙いながら、オリックスに大差をつけられたソフトバンク。近年は将来性を重視してスケールは大きいものの、完成度の低い選手を上位で指名して苦しんでいる印象が強い。育成ドラフトで獲得した選手も主力になるケースはやはり少ないだけに、まずは1位で大物を狙いたい。チーム事情を考えると投手が優先で、地元の九州出身ということもあって常広羽也斗(青山学院大)、武内夏暉(国学院大)の名前が挙がる。特に左の先発が苦しいだけに、制球力が高く、試合を作れる武内は狙いたいところだ。
  他のポジションでは今宮健太の後釜となれるショートを狙いたい。昨年もイヒネ・イツアを獲得しているが、典型的な未完の大器タイプだけに、対抗馬となる選手は必要だろう。高校生なら山田脩也(仙台育英高)、大学生なら辻本倫太郎(仙台大)はともに守備力も高く、チームに少ない右打者だけに狙い目の選手である。

【楽天】
佐々木麟太郎(花巻東高)

 2年連続Bクラスの可能性が高くなっている楽天。投手も野手も年々成績を落としているベテランが目立ち、ここ数年の間に一気に世代交代を進めなければ長期低迷の危険性もある。投手ではルーキーの荘司康誠、3年目の内星龍、野手では8年目の村林一輝が主力になってきたのはプラス要因だが、上位を狙うにはあらゆるポジションで底上げが必要だ。特に野手は黒川史陽、武藤敦貴、入江大樹、ルーキーの辰見鴻之介くらいしか二軍で存在感を示している選手が見当たらず、強打者タイプは不足している。

 そうなると、やはり真っ先に狙うべきは佐々木麟太郎(花巻東高)ということになりそうだ。ただ投手も苦しいだけに上位で投手を狙うということも考えられるだけに、下位でも狙えそうなスラッガータイプも考えておきたい。そういう意味でおすすめしたいのが仲田侑仁(沖縄尚学高)だ。春、夏の甲子園でいずれもホームランを放った右の大砲候補で、パワーだけではなく技術の高さも目立つ。打つ以外のプレーは平凡だが、下位で指名できるなら面白い選手であることは間違いない。

【西武】
佐々木麟太郎(花巻東高)

 昨年の3位から大きく成績を落とした西武。長年チームを支え続けてきた中村剛也、栗山巧の2人が大ベテランとなり、主砲の山川穂高も自身の不祥事もあって去就が不透明な状況にある。昨年も上位2人で野手を指名しているが、今年もまずは中軸候補の強打者を狙いたい。筆頭候補はやはり佐々木麟太郎(花巻東高)になるが、抽選を外したとしても真鍋慧(広陵高)、明瀬諒介(鹿児島城西高)などを方針を変えずに指名し、2位でも長打力のある内野手を狙いたい。 投手で気になるのはサウスポー不足だ。隅田知一郎と佐藤隼輔が2年目に成績を伸ばしたが、リリーフの佐々木健が故障で長期離脱となり、全体的に頭数が不足している。3位以降で狙えて、比較的早く戦力になりそうな投手では平元銀次郎(日本通運)を推したい。大学では故障で苦しんだが、社会人で見違えるほど腕の振りもボールも力強くなった。まずはリリーフの方が戦力になりそうだが、先発で試してみても面白いだろう。

【日本ハム】
常広羽也斗(青山学院大)
進藤勇也(上武大)

 新庄剛志監督を迎えながら2年連続最下位が濃厚の日本ハム。ただ野手では万波中正、清宮幸太郎、野村佑希など強打者タイプが大きく成長したのはプラスである。一方で投手は上沢直之、加藤貴之の2人の去就が微妙な状況で、もしどちらも退団となれば一気に苦しくなる。高校生の大物野手を積極的に指名してきただけに佐々木麟太郎(花巻東高)に入札という声も聞こえるが、まずは常広羽也斗(青山学院大)、細野晴希(東洋大)、武内夏暉(国学院大)などの大物大学生投手を狙った方がチームのバランス的には良いのではないだろうか。

 野手で気になるのがキャッチャーだ。宇佐見真吾がトレードで中日に移籍し、交換要員で入団した郡司裕也も他のポジションでの起用が増えており、若手にも有望株は少ない。2位で残っていれば大学ナンバーワン捕手の進藤勇也(上武大)を指名して、一気に正捕手として育てるというのもぜひ検討したいところだ。

文●西尾典文

【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間400試合以上を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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