現地時間11月21日に行なわれた2026年ワールドカップの南米予選で、ブラジル代表はアルゼンチン代表に0-1で敗れ、10か国中の6位まで順位を落としている。

 リオデジャネイロのエスタジオ・ド・マラカナンに宿敵を迎えた「セレソン」は、7万人近い観衆の後押しを受けて幾つもチャンスを掴んだものの、今年のレフ・ヤシン賞を受賞したGKエミリアーノ・マルティネスの牙城を崩すことができず、逆に63分にCKから空中戦を制したニコラス・オタメンディのヘディングシュートを浴び、このリードを守り切られた。

 試合前には、アルゼンチン国歌斉唱時のブーイングに端を発してスタンドで両国サポーター同士の暴力沙汰が起こると、これを鎮圧しようとした憲兵隊によって負傷者も出るなど騒然となったマラカナン。リオネル・メッシがスタンドに近寄って冷静になるよう観客に求めるも、事態が改善されなかったため、チームメイトを促してロッカールームに引き上げるという一幕もあった。
  予定より30分ほど遅れて始まった試合では、前半でブラジル側に3枚のイエローカードが提示されるなど荒れ模様。ブラジルのサポーターもハイテンションで自国代表を応援するとともに、宿敵に対して敵意をむき出しにしたが、試合が進み、63分にアウェーチームが先制すると、苛立ちがセレソンに向けられ、「恥知らずのチーム」と罵声を浴びせるとともに、アルゼンチンのパスワークに対して「オーレ!」と歓声を上げるようになった。

 1点が遠いブラジルはそれでも諦めなかったが、81分に交代出場のジョエリントンが、彼の腕を掴んで執拗なマークを仕掛けてきたロドリゴ・デ・パウルを荒っぽく振り払ったことで一発退場を食らい、数的不利まで負って万事休す。これで今予選3連敗を喫し、前述の通り順位を落としたのである。

 この結果は、ブラジルにとっては幾つかの点で歴史的なものとなった。まず、W杯予選でのホームでの敗戦は史上初。この試合の前まで予選のホームゲームでは、通算64試合を戦い、51勝13分け・173得点29失点の成績を残しており、無得点で終わった試合(スコアレスドロー)すらわずか5試合しかなかった。 そして、予選での3連敗も、このサッカー大国にとっては初めての屈辱的な経験となった。この3つの敗戦の中には、これまで一度も負けたことがないコロンビア相手のものが含まれている。さらに付け加えるなら、3連敗の前にはベネズエラと1-1で引き分けており、4戦連続未勝利もブラジルの負の新記録である。

 試合後に思わず手で顔を覆ったジニス監督は会見で、敗北を「不公平な結果」だとして、「チャンスは多くあったが……決め切れなかった。シュートが幾度かポストを叩き、CKやFKの回数は増えていったが、残念ながらボールは相手ゴールに入らなかった」と語り、「アルゼンチンが世界王者であることを考えると、ブラジルにとって過去最高ではないものの、最高の試合のひとつだった」と、プレー内容では優れていたことを強調した。

 とはいえ、2023年のAマッチ9試合で5敗を喫し(3勝1分け5敗)、1940年以降で最悪の敗北率(55.6%)を記録してしまった後としては、いかに指揮官が強がっても説得力は弱い(ジニスが指揮権をラモン・メネゼスから受け継いだのは今年7月だが)。ちなみに守備でも、予選6試合終了時点での7失点は歴代最多であるという(チッチ監督が率いたカタールW杯予選では全17試合で失点5)。
  ブラジルの総合メディア『Globo』は、「ウルグアイとコロンビアに敗北を喫した際のプレーに比べると、ジニス暫定監督のチームは実際に成長を示し、よりバランスの取れた試合を見せた」と、主に守備面の改善については評価したものの、「その進化は、2023年に5敗を喫し、マラカナンで最大のライバルチームに対して予選史上初の敗北を喫したことで傷ついたファンたちを満足させるには、あまりに物足りなかった」と綴っている。

 セレソンといえば、現在はレアル・マドリーを率いるカルロ・アンチェロッティの来夏の監督就任が決定的と現地メディアで報じられる一方で、スペインではマドリーが2年の契約延長を打診するというニュースも流れており、首脳陣の人事も先が見えない状況にある。予選で苦戦して本大会優勝という前例は何度もあるセレソンだが、このままではネガティブな意味で初のケースを生み出してしまう可能性もあるだろう。

構成●THE DIGEST編集部

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