個人タイトルの対象ではなくとも、プロの凄みが詰まった今季の部門ベスト3を紹介する。今回はパ・リーグの野手編だ。(※率系部門は規定打席到達者22人が対象)

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■OPS(出塁率+長打率)
1.近藤健介(ソフトバンク) .959
2.森友哉(オリックス) .893
3.頓宮裕真(オリックス) .862

 打撃三冠に迫った近藤が総合的な打撃指標OPSでリーグダントツ数字を残した。出塁率(.431)は3度目、長打率(.528)で初の1位に立ち、自身初の本塁打王と打点王を手にした。新天地へ移った森と首位打者に輝いた頓宮は、出塁率と長打率の順位がいずれもOPSと同じ2、3位。4位の柳田悠岐(ソフトバンク)も同様で、優れた打者たちがし烈な打撃タイトル争いを展開した。

■四球率(四球÷打席)
1.近藤健介(ソフトバンク) 17.8%
2.浅村栄斗(楽天) 12.5%
3.森友哉(オリックス) 11.9%

 リーグ最多の109四球を選んだ近藤は全打席での割合もトップで、7敬遠も誰よりも多かった。2位に入った浅村だが、楽天へ移籍した2019年以降では最も低い数値で、どちらかと言えば今季は2度目の本塁打王を獲得したパワーが目立った。規定打席未到達者では佐藤龍世(西武)が16.3%、柳町達(ソフトバンク)は15.5%と、2位相当の高水準。ちなみにリーグワーストは今宮健太(ソフトバンク)の5.6%。■三振率(三振÷打席)
1.中村晃(ソフトバンク) 9.1%
2.松本剛(日本ハム) 10.2%
3.宗佑磨(オリックス) 11.5%

 6年ぶりに1位へ返り咲いた中村は、2ストライクカウントでも打率.257の粘り強さ。松本は首位打者を獲得した昨季と同じ2位で、有走者時の三振率6.5%はリーグベスト。ただし、追い込まれてからは三振が増えて、全体的には成績を落とした。規定打席未満では、荻野貴司(ロッテ)が7.9%と優れた数値をマークして前年に続く“隠れ首位”に。

■BB/K(四球÷三振)
1.中村晃(ソフトバンク) 1.13
2.近藤健介(ソフトバンク) 0.93
3.森友哉(オリックス) 0.89

 BB/Kで上位に来るのは 選球眼とバットコントロールを兼備した打者。中村は12球団の規定打席到達者で唯一、四球の数が三振を上回った。規定打席未満では、清宮幸太郎(日本ハム)が自己ベストの0.77を記録するなど、打撃アプローチが大きく向上した。対照的に、愛斗(西武)は267打席でわずか3四球しか選べず、BB/Kは0.05と悪い意味で異次元の数字だった。

■得点圏打率
1.近藤健介(ソフトバンク) .373
2.森友哉(オリックス) .363
3.マルティネス(日本ハム) .344

 チャンスでも滅法強かった近藤は、打点王を争った柳田悠岐(ソフトバンク)の得点圏打率.273を1割も上回り、タイトルを手中に収めた。森は特に三塁に走者を置いた場面で、わずか2三振と驚異的な集中力を発揮。マルティネスは得点圏に走者を置いた場面とそうでない時との打率の差が実に.098もあった。リーグワーストは野村佑希(日本ハム)の.192。
 ■内野安打
1.小深田大翔(楽天) 29本
2.源田壮亮(西武) 23本
2.辰己涼介(楽天) 17本

 新人年から毎年15本以上を記録していた小深田が初めて1位に。今季はリーグ最多の6三塁打に初の盗塁王獲得と、足で大いに躍動した。源田は三塁打や盗塁を大きく減らしたが、WBCで負った右手小指骨折も内野安打の数には響かなかった。和田康士朗(ロッテ)は26安打のうち9本を内野安打で稼いだ。右打者では松本剛(日本ハム)の16本が最多。

■盗塁成功率
1.鈴木将平(西武) 100.0%
2.和田康士朗(ロッテ) 95.2%
3.外崎修汰(西武) 89.7%
※10盗塁以上

 1位の鈴木は失敗なしで10盗塁。一軍では昨季までの4年間で2盗塁に対して失敗7だったが、減量して臨んだ今季は走塁指標も向上させた。和田は20盗塁をわずか失敗1で成功させ、成功率61.1%と攻略された昨季からの巻き返しでスペシャリストの本領を発揮。元盗塁王の源田壮亮(西武)は5盗塁に終わったばかりか、成功率45.5%も低迷した。
 ■補殺(外野手)
1.近藤健介(ソフトバンク) 7
1.柳田悠岐(ソフトバンク) 7
1.小郷裕哉(楽天) 7

 3人の外野手が7捕殺で1位に並んだ。近藤は新天地で持ち前の打力だけでなく、元捕手の肩も披露。柳田はDHでの出場が全体の約半数を占めながら、初めてリーグ最多を記録した。レギュラー定着でブレイクを果たした小郷は2併殺も完成させたが、リーグワーストの5失策は要改善。肩で何度も球場をどよめかせ、ゴールデン・グラブも獲得した万波中正(日本ハム)は5捕殺だった。

■盗塁阻止率(捕手)
1.古賀悠斗(西武)    .412
2.太田光(楽天) .357
3.甲斐拓也(ソフトバンク) .329
※規定試合以上

 2年目の古賀がリーグ最多の盗塁阻止28を記録し、率でもトップ。昨季は14回走られて一度も刺せなかったが、大きく飛躍した。FA加入の嶺井博希(ソフトバンク)は11盗塁を許して阻めたのは1回だけ。チーム別でワーストの67盗塁を許した日本ハムは伏見寅威、マルティネス、清水優心がいずれも阻止率1割台と、バッテリーでの見直しが必要とされそう。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。ツイッターIDは@Struggler_AKIRA。

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