男子テニスツアー「ムチュア・マドリード・オープン」(4月24日〜5月5日/スペイン・マドリード/クレーコート/ATP1000)は現地5月5日にシングルス決勝を実施。第7シードで世界ランク8位のアンドレイ・ルブレフ(ロシア)が同35位のフェリックス・オジェ-アリアシム(カナダ)を4-6、7-5、7-5の逆転で下し、四大大会に次ぐグレードのマスターズ1000シリーズで自身2度目となる優勝を飾った。

 3月の「BNPパリバ・オープン」(ATP1000)3回戦からマッチ4連敗を喫すなど苦戦が続いていた26歳のルブレフ。ところが今大会は最近の不調が嘘であるかのようなパフォーマンスで勝ち上がり、準々決勝ではディフェンディングチャンピオンのカルロス・アルカラス(スペイン/3位)をフルセットで撃破。準決勝でもテイラー・フリッツ(アメリカ/13位)に6-3、6-4で快勝し、キャリア5度目のマスターズ決勝へと駒を進めていた。

 決勝では今大会6試合中3試合で相手が棄権するという前代未聞の形で勝ち進んできた23歳のオジェ-アリアシムと対戦。試合開始直後の第1ゲームでいきなりサービスダウンを喫したルブレフは、第5ゲームでもブレークを許す苦しい展開に。直後の第6ゲームで1つブレークを返すもそのまま第1セットを落としてしまう。

 それでもここからがルブレフの真骨頂。第2セットではファーストサービスが入った時に80%の確率でポイントを獲得し、主導権を掌握。比較的楽にサービスキープを続けて迎えた第12ゲームでは、値千金のブレークを果たしてセットオールに持ち込む。ファイナルセットでもエラーをわずか4本に抑える安定したプレーを見せたルブレフ。終始緊迫の攻防が繰り広げられた中、またしても第12ゲームでオジェ-アリアシムのサービスを破り、2時間47分の熱戦をものにした。
  今大会の優勝までの道のりは決して平たんではなかった。試合後のオンコートインタビューでルブレフはまず「大会期間中に体調不良に見舞われた」と明かし、支えてくれた医師への最大限の感謝を示した。

「熱も出て自分では対処できない問題が幾つかあった。ドクターのみんなには本当に感謝している。彼らはマジシャンだ。彼らが手際良く仕事をしていた。おかげで少なくとも何とかプレーするところまでは持っていけた。そのようなことは人生で経験したことがない。これまでにツアーで出会ったドクターの中で一番良かった」

 その上で苦しい時期を乗り越えて「キャリアで最も誇りに思うタイトル」をつかみ取った26歳の名手は、次のように喜びを語った。「言葉がないよ。この9日間に僕が何を経験したかを(人々が)知っていれば、僕がタイトルを獲得するとは想像もできなかっただろう。信じられないほどうれしい」

 次戦は間もなく開幕する「イタリア国際」(5月8日〜19日/イタリア・ローマ/ATP1000)に出場予定のルブレフ。この勢いのまま今後のさらなる活躍を期待したい。

文●中村光佑

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