テニスの元女王キャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)の父でコーチのピョートル氏が、ツアーにおける母親選手へのサポート不足を批判している。クレーシーズンのWTA1000大会「イタリア国際」と四大大会「全仏オープン」でワイルドカード(WC/主催者推薦枠)が与えられなかったことを受けての訴えだ。

 世界1位在位71週の記録を持つウォズニアッキは、2019年にNBA選手のデビッド・リーと結婚し、翌年の「全豪オープン」を最後に現役生活に別れを告げた。だがその後、21年に長女オリビア、22年に長男ジェームズの出産を経て、昨年8月にカナダの「ナショナルバンク・オープン」に出場。10年に優勝した同大会からWCを得て、約3年半ぶりの復帰を果たした。

 復帰後3大会目の「全米オープン」で4回戦へ進出すると、今季も「BNPパリバ・オープン」でベスト8入りするなど、2度目のキャリアは順調で、ランキングも現在117位まで戻している。また、今回WCを得られなかったイタリア国際では11年に4強、全仏では10年と17年に8強と、大会実績も決して悪いものではなかった。

 それだけにピョートル氏の憤りは大きい。今回の決定に関する彼のコメントが海外メディア「tennisuptodate」に掲載された。

「(イタリア国際では)8枚のWCは全てイタリア人に与えられた。自国の選手をアピールするのはわかるが、まだマスターズに出場できるとも思っていないような少女たちに出場権を与えるなんて……。

 対するは完全なるテニスプレーヤーだ。(娘は)偉大な功績を成し、テニスの人気を確実に高めた人であり、自身多くのお金を稼ぎつつ、彼らにもお金を稼がせた人物だ」
  18年、WTA(女子テニス協会)は選手が妊娠や出産、深刻なケガから復帰した後に不利を被らないようルール改正を行なった。子どもの誕生から最長3年間スペシャルランキング(救済目的の順位)を使うことができ、大きな大会におけるシード付けで特別措置も可能、といった内容だ。今回、ピョートル氏が特に批判しているのは、大会側がWCを与える際の不明瞭さだ。

「全てが人間関係や知り合いであるかによって決められ、明確なルールに基づいていないから、こんなことが起こる。主催者やトーナメントディレクターと知り合いであれば、プレーするチャンスが得られるが、どこかの誰かと知り合いでなければ、来てほしくないということなのだ」

 父親の憂いは、娘と自身の問題を越えて、出産やケガを経験した多くの選手たちの復帰過程に及ぶ。

「今のルールでは、一度トップ20に入り長い休養を経て戻ってきた選手に、もはや必須のWCはない。このカードは出産や大きなケガから復帰した選手にとって、本当に役に立ったが、現在キャロラインやアンジェリーク・ケルバー、大坂なおみは、誰かの決定だけに左右されている。昨年来、全てのWCは大会の所有物であり、WTAは手を引いてしまっている」

 素晴らしいプレーを見せるべく、厳しいトレーニングを積んで準備をしてきたウォズニアッキ家の落胆は相当に大きい。果たして「ウインブルドン」は、元女王にワイルドカードを与えるだろうか。

構成●スマッシュ編集部

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