女優・黒島結菜が、2022年度前期の“朝ドラ”こと連続テレビ小説「ちむどんどん」(NHK総合ほか)でヒロインを務めることが発表された。黒島は沖縄県出身、1997年3月15日生まれの23歳。これまでに、朝ドラ「マッサン」「スカーレット」、大河ドラマ「花燃ゆ」「いだてん〜東京オリムピック噺〜」などに出演。着実に国民的女優への道を歩む黒島について、フリーライターでドラマ・映画などエンタメ作品に関する記事を多数執筆する木俣冬が解説する。


■“朝ドラ経験者”のヒロイン抜擢は視聴者もうれしい

「ちむどんどん」のヒロインに決定した黒島結菜。3月3日放送の「あさイチ」でお披露目され話題になった。

沖縄のことばで“前むきで肯定感に満ちた、わくわく感”という意味をタイトルにした「ちむどんどん」は沖縄の本土復帰50年を記念したドラマで、ヒロイン・比嘉暢子(ひがのぶこ)は沖縄出身、やがて沖縄料理の料理人になるという。自身も沖縄出身である黒島にぴったり。


二十代前半のフレッシュな時期に出身地を舞台にした朝ドラヒロインを演じる機会を得るとは、黒島結菜、“持ってる”と思う。

「いつか(朝ドラ)ヒロインができたらいいな」と思っていたという黒島。朝ドラヒロインはかつて、これから期待の新人がやるものと思われていたが、近年はある程度の実績を積んだ俳優がオファーされることが増えた。有村架純(「ひよっこ」)、広瀬すず(「なつぞら」)、戸田恵梨香(「スカーレット」)、杉咲花(「おちょやん」)などがそうで、黒島結菜もそのひとりとなった。

オファーヒロイン――とりわけ朝ドラ経験者(貢献者)は視聴者にとってもうれしいもの。

黒島もそうだが、ほかに、「とと姉ちゃん」でヒロインの妹役を演じてから「おちょやん」ヒロインになった杉咲花や、「あさが来た」で女中役、「なつぞら」でヒロインの妹を演じてから次作「おかえりモネ」のヒロインになった清原果耶のように、過去、朝ドラに出番は短いながら強烈な存在感を示した俳優たちに、次なるヒロインになってほしいと視聴者は願うものなのである。

言ってみれば、視聴者は親戚気分で、目を細めながら若い親戚を応援している。そんな思いに応えてくれるのが朝ドラ経験者のヒロインロードである。また、週5日、半年という長丁場のドラマの撮影経験があらかじめあるほうが大役をやるにあたって何かと都合がいいこともあるだろう。

■NHKの土曜時代ドラマ「アシガール」で注目浴びる


2012年に本格デビューした黒島結菜が朝ドラに初めて登場したのは「マッサン」(2014年度後期)。

外国人のエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)が日本人・マッサン(玉山鉄二)と結婚し日本で生活する物語だった。戦時中は外国人であることを咎められるなど苦労もあったが、どんなことがあってもマッサンと添い遂げた。

黒島が登場したのは116回から。エリーの娘エマ(優希美青)と仲良くなる少女・秀子役だった。愛称がデコと額に触れる仕草だとか、エマとおしゃべりしているときにお菓子を頬張っている仕草だとか、ちょっとつんつるてんの着物姿などが愛らしい登場だった。

その後、一躍俳優として注目されたのは同じくNHKの土曜時代ドラマ「アシガール」(2017年)。

現代から戦国時代にタイムスリップした高校生・唯(黒島)が、戦国武将(伊藤健太郎)に恋をして、彼を守るため足軽として戦場を駆け回る。陸上部のエースという設定でその健脚ぶりを大いに発揮するという展開はわくわくした。

黒島が全力で走り回る姿は見ていてとても爽快だった。とにかく、懸命で、泥だらけになりながら恋に全力でぶつかっていく黒島の演技は見る者の心を勇気づけた。また、足軽・唯之助という男性のフリをするところなどのジェンダーレス感も現代的だった。

そして、数年ぶりの朝ドラ出演は「スカーレット」(2019年度後期)。「アシガール」と同じプロデューサーによる朝ドラで、出演者にもイッセー尾形や伊藤健太郎などアシガール出演者が参加し、「アシガール」ファン(アシラバ)も大注目のなかで、黒島は第81回から登場。主人公(戸田恵梨香)の陶芸の弟子・三津役を演じた。

師匠を尊敬しつつ、その師匠の夫(松下洸平)に惹かれていき、苦しんだすえ身を引くという、複雑な心模様を演じて成長を見せた。ファッションも70年代ふうな個性的なもので考え方もエキセントリック、主人公たちの暮らす田舎の価値観を揺さぶる役割も果たしながら、結婚している相手には踏み込まないという節度のある役というのも好感度が高かった。

黒島には、常に溌剌として、ドジなところもあるけれど、キラリと光る知性や冒険心があって、きちんと世界を見つめようとする志を感じる。いい子過ぎないけど悪い子にはなれない。朝ドラにはぴったりの俳優である。

配信ドラマ「SICK’S」ではすこし邪悪なミステリアスな役も演じているが、それはそれで超越した不思議な魅力を放って魅力的だ。「スカーレット」「アシガール」「SICK’S」などのボブカットがお似合いだが、最近は髪を伸ばし大人の魅力。

現在はNHKの名作照明ドラマ「ハルカの光」(毎週月曜夜7:25-7:50、NHK Eテレ※3月8日最終回)に出演中。照明器具の店で働きながら、照明器具の名品の魅力に触れていくヒロイン(黒島)。きりっとした眉で照明器具を見つめ、歴史などを語る口ぶりは光の心を届けてくれる。「新感覚・文化教養 × ドラマ!」と謳うだけあって知識が得られるドラマのヒロインに黒島はふさわしい。

朝ドラ「ちむどんどん」でもドラマのテーマを全身全霊で伝えてくれるだろう。