先日、映画「ミッドナイトスワン」('20年)で第44回日本アカデミー賞最優秀作品賞と、最優秀主演男優賞をいただきました。皆さん笑顔で祝福してくれて、うれしかったです。ありがとうございます。授賞式前日の僕は、思い出すとそんなに緊張はしていなくて。当日会場に入ってからは…あー、いや正直、あんまり覚えてないんだけど、映画を作ってる人たちの、美術さんとかカメラマンさんとか、本当に映画が好きな人の集まりってこういう感じなんだなって。うちらのチームはみんな初めてだったから緊張感もあったけど、ところどころ柔らかい雰囲気もあったりしてすごく心地よかったんです。あっという間に終わっちゃった感じもあるけど、でも僕のこの手の中にはトロフィーがあって。これはうれしい現実なんだなって。
 この場所に連れてきてもらえただけで幸せだったから、まさか賞をいただけるとは全く思っていませんでした。だから受賞スピーチは何も考えてなかった。自分でも何を言ってるか分かんない。後で見て、ああ、俺、こんなこと言ってたんだって。最後の方とか、まとまってないし。でもそれがそのとき思ったことで。素直な気持ちが出ていたんだと思う。


■「凪沙の気持ちもあるんじゃないのかなと思うんです」
 スピーチしながら、いろんな方の顔が頭をよぎっていたのかもしれないね。「ミッドナイトスワン」の内田英治監督、森谷雄プロデューサー、スタッフの方々はもちろん、例えば「日本沈没」('06年)の樋口真嗣監督や「山のあなた〜徳市の恋〜」('08年)の石井克人監督や、今までやってきた監督さん、共演させてもらったキャストの皆さん。一つ一つどれも簡単じゃない作品だし心に残っている。それこそどれも僕にとって代表作。
 一緒に地図を広げて走ってきた(香取)慎吾ちゃんや(稲垣)吾郎さんのことも浮かんだかな。吾郎さんのラジオに生電話したときに、僕がそう言っていたらしいから、きっとそうだと思う。頭が混乱して記憶があやふやだけど、でもその言葉にはうそはないので。 そして何より、NAKAMAの皆さんの応援がなかったらここまで来られてなかったわけで。“追いスワン”なんて言葉も生まれて、それがいろんな後押しになった。ありがたいことに公開して半年以上たった今でもアンコール上映されて、見てくださっている方がいる。もう感謝しかないです。
 スピーチの後半で、自分では意識してなかったけど、僕はこんなことを言っていたと知りました。「一人一人の人生がよりよく自由に全うできるような、そんな役作りと人との関わりの中で、これからも自分の人生を全うしていきたいと思います」ここ、思い返してみると、自分でも何でこんなことを言ったのか分からないんですよね。分からないんだけど、このあたりは凪沙の気持ちもあるんじゃないのかなと思うんです。「ミッドナイトスワン」で受賞できたから。多分映画の自分なりのコンセプトというか、凪沙のテーマというか、そういう思いが「よりよく自由に人生を全うする」という言葉になった気がします。それは僕自身のテーマでもあるのでね。凪沙ちゃんもきっと喜んでくれていると思います。本当にありがとうございました。

■「何かしら影響を起こしてくれる財産」
 僕にとって映画とは人を楽しませるもの。やってる自分もそうだし、見てくれる人もやっぱり最高のエンターテインメントだと思う。この世界、特に映画の世界は、職人気質の方が多いので、そういう方々の中に自分が身を置くことによって、少しでも流されない自分だったり、地に足を着けて生きていく大切さみたいなことを学んで…学んでじゃないな。楽しませてもらえる。映画ならではの魅力ってやっぱりあるような気がします。数々の作品に参加させてもらって、今の僕がある。どれも心の中に残っている作品だし、そのときの経験がないと新しい役も演じられない。全てがつながっていて、僕が演じるにあたって何かしら影響を起こしてくれる財産だなと。
 だから、また頑張ろうと思います。映画に限らず、次のステップに進んでいこうと。今は大河ドラマ「青天を衝け」(NHK総合ほか)にまい進中。今日はリハーサルしてきました。赤いノート? もちろん持ってる。赤いノートは、今日やるシーンを書き込んでいるスケジュール帳のこと。“ななにー”でゲストの要潤さんにリハーサルで謎の赤いノートを開いているとと暴露されちゃいましたね(笑)。そんな慶喜さんで充実しています。