NHK-FMで放送中の「KABUKI TUNE(カブキ・チューン)」(毎週金曜朝11:00-11:50)が2021年4月で放送開始4年目を迎えた。

若手歌舞伎俳優が歴代パーソナリティーを務めてきたラジオ「邦楽ジョッキー」の後番組として始まった「KABUKI TUNE(カブキ・チューン)」で初代パーソナリティーに就任したのは歌舞伎俳優の二代目尾上右近。

今回、WEBザテレビジョンでは、右近にインタビューを実施。インタビュー後編では、パーソナリティーを始めてからの心境の変化や現在出演中の大河ドラマ「青天を衝け」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)について聞いた。

■徐々に理想としていたスタンスに
――ゲストの方との出会いや番組を通してさまざまな体験があったと思いますが、番組が始まってからのご自身で成長を感じる部分などはありますか?

ないなぁ…(笑)。

――拝見しているとこの4年の間にお仕事の幅も広がったように思います。番組開始当初にちょうど清元栄寿太夫(右近は歌舞伎役者としてだけでなく、歌舞伎の伴奏音楽“清元”の太夫としても活躍)を襲名されていましたよね

そういう意味ではこの番組が始まったころに色んなことが始まったんじゃないかな…。そんな気がしますね。

あとはなんだろう…。ちょっとずつ人に対しても自分に対しても優しくなっている気がします。

どこか満たされない思いがあって尖っている時期があったのですが、その尾を引いていた時期にこの番組が始まって、その中で新しい出会いや経験を重ね、そして新しいお仕事もたくさん増えてきて…。

“有名になりたい”という思いに対してマイナスな気持ちがなくなってきたのですが、それと同時にとげもなくなってきていると思います。

でも、とげとげしかった自分も失いたくはないから、どこかで尖ろうかなという部分はずっと探している感じはありますよね。

ただ、基本的には誰にでも優しくできた方がいいし、徐々に自分が理想としていたスタンスに近づいているとは思います。
■僕じゃなきゃだめなんだという部分を発見したい
――お仕事の幅が広がる中、現在は大河ドラマ「青天を衝け」に孝明天皇役で出演中です。初めての大河ドラマ出演ですが、いかがでしょうか?

スタジオに入った時に「大河ドラマに出演するんだ!」という実感が湧きましたし、こしらえをして撮影に臨む時にもまた「大河ドラマだ…」と感じました。

僕は2003年の大河ドラマ「武蔵 MUSASHI」に市川海老蔵のお兄さんが出演されている時にスタジオによく遊びにいかせてもらっていたんです。なんだかその頃を思い出しました。

孝明天皇が作品で初めて登場する第9回(4月11日放送)の時には始まる前からめちゃめちゃ緊張して!
そんな自分に思わず笑ってしまいましたね。


――孝明天皇は「西郷どん」(2018年放送)では中村児太郎さんが演じていらっしゃいましたね。また、「麒麟(きりん)がくる」(2020〜2021年放送)では坂東玉三郎さんが正親町天皇を演じており、視聴者としては歌舞伎役者の方が天皇を演じられていると作品が締まるという印象を受けます

“歌舞伎役者が天皇をやる”という枠にいると思うと安心してしまうので、僕はあまり考えないようにしています。

あとは単純になんか悔しくなってしまうので。僕じゃなきゃだめなんだという部分を自分でも発見したいし、だからこそ“自分が歌舞伎役者である”というバックボーンは気にしないですね。

長袴を履いたりする時には歌舞伎役者としてのアドバンテージは感じますけど…。「支度早っ!!」みたいな(笑)。

実際にお芝居している時の勝手は違うし、普通に“役者”として参加しています。

歌舞伎との違いを1番感じるのは音ですかね。

歌舞伎は生の舞台なので、音を聞きながら自分の気持ちを作って芝居をしたりするのですが、テレビの場合は効果音などがない状態での撮影。

なので、放送を見た時にどう音が入るのか、完成した時にどう見えるのか、自分の感情を作る間はどのくらいがいいのか、そういったことを“逆算”できる力がほしいと感じました。

ここは歌舞伎と同じだから…と考えて安心するより、普段自分のやっていることと違う部分を見つけて、それに対して不安な状態でやるという方法の方が、自分は合っている気がしています。
■“尾上右近”という存在を通じて楽しんでもらう
――大森美香さんの脚本の魅力はどのように感じていますか?

(主人公・渋沢栄一[演:吉沢亮]らの暮らす)血洗島村というある意味狭い世界を描きながらも、その登場人物のスケールの大きさに感動しました。

人間の心のスケールというものは、土地や環境に比例しているのではなく、その人の心が作るもの。
全然違う環境で育った渋沢栄一と(草なぎ剛演じる)徳川慶喜という人物が出会うのも懐の深さや2人の歩みが重なっているからなのだなと思います。

大森先生の脚本は、大河という壮大なスケールの中で、すべての人にリアリティーがあり、そこに心のぬくもりを感じられるのが魅力だと思っています。


――それでは最後に読者の方にメッセージをお願いします

歌舞伎というものが自分の軸なのはもちろんですが、ただ歌舞伎を超越して“尾上右近”という存在を通じて楽しんでもらうということを目指しています。

そう思えるエネルギー源はやはり歌舞伎で、歌舞伎の舞台に立っている時は発散しながらも蓄積している時間だなと感じますし、それ以外のお仕事では歌舞伎の時に蓄積したエネルギーを変換して、その時々にあったパフォーマンスを目指しています。

そんな自分の姿を見て、楽しんでいただけるようにまい進していきますので、これからも、あたたかくも厳しい目で見守っていただければと思います。

なによりも今後の「青天を衝け」、「KABUKI TUNE」をこうご期待くださいませ!
よろしくお願い申し上げます!