出演者やストーリーはもちろん、主題歌も話題となっている2021年4月スタートのドラマたち。初回放送まで主題歌の詳細が明かされないものや、ドラマだからこそ実現したコラボレーションなど、趣向を凝らした楽曲で視聴者を楽しませてくれている。なかでも注目を集めている主題歌をピックアップし、起用の傾向や劇中での使われ方を通して、ドラマと主題歌の関係性を考察する。

■楽曲は初回オンエアで初解禁といった手法も話題に
ドラマ主題歌といえば、ドラマがスタートする前にアーティストや曲名、予告編で楽曲の一部を流すなど、事前に告知することで視聴者の期待値を高めるのが一般的だった。それが今回、その手法を覆したのが「着飾る恋には理由があって」(毎週火曜夜10:00、TBS系)と「リコカツ」(毎週金曜夜10:00、TBS系)だ。
「着飾る恋には理由があって」で主題歌を担当しているのは、星野源。着飾ることで自分の居場所を得ていた主人公の真柴くるみ(川口春奈)が、ミニマリストの料理人・藤野駿(横浜流星)をはじめとする面々と一つ屋根の下に暮らしながら、恋をしたり、友情を深める中で、着飾ることをやめて自分らしく生きる姿を描くラブストーリー。
このテーマを受け、星野が「恋愛というものに正面から向き合いたかった」と書き下ろしたのが「不思議」(配信中)だ。星野が主題歌を担当することは発表されていたものの、楽曲のみならず、タイトルさえ初回放送時まで一切明かされなかった。

一方、主題歌が米津玄師の「Pale Blue」(6月16日[水]リリース)であることは告知されていたものの、楽曲は初回放送時に初出しするという手法が取られたのが「リコカツ」。米津がテレビドラマ主題歌を手掛けるのは「アンナチュラル」(2018年TBS系)での「Lemon」、「ノーサイド・ゲーム」(2019年TBS系)の「馬と鹿」、「MIU404」(2020年TBS系)の「感電」以来4作目となるが、ラブストーリードラマへの書き下ろしは今回が初。北川景子演じる主人公の水口咲と永山瑛太扮(ふん)する緒原紘一が運命的な出会いを果たし、交際0日で結婚したものの、正反対の性格ゆえにけんかが絶えず、新婚早々離婚を決意するという“離婚から始まるラブストーリー”がコンセプトの本ドラマ。米津自身も「久しぶりにラブソングを作った」とコメントし、注目を集めていた。

ベールに包まれたまま初回放送を迎えたこれらの楽曲は、ドラマの中で流れるやいなやたちまち話題に。「着飾る恋には理由があって」では、くるみが涙するシーン(第1話)や、くるみと駿のキスシーン(第2話)など、場面場面で登場人物たちの心情を代弁するかのごとく流れていたのが印象的。「リコカツ」では毎話クライマックスを迎えるシーンで流れるが、“恋に落ちた瞬間”を描く「Pale Blue」が流れることで、離婚を決意した咲と紘一の気持ちが次週以降どう動いていくのかを期待させる役割を果たしている。

視聴者に絶大なインパクトを与えた2つの主題歌。その理由は、それぞれの楽曲がハイクオリティであることは言うまでもなく、さらに初回放送に初出しすることによって、どんな楽曲か知りたい!という視聴者の“耳”をひき付けたことも大きな要因と言えそうだ。

■ドラマだけのスペシャルコラボやアーティストの新しい試みにも注目
他にはないコラボや企画が実現するのもドラマ主題歌のいいところ。坂元裕二脚本による「大豆田とわ子と三人の元夫」(毎週火曜夜9:00、フジテレビ系)では、主題歌をSTUTS & 松たか子 with 3exesというスペシャルユニットが務めている。トラックメーカーのSTUTSがトラック制作と楽曲プロデュースを、ドラマの主人公・大豆田とわ子を演じる松たか子がメインボーカルを担当。3exesとは、劇中でとわ子の元夫を演じる岡田将生、角田晃広(東京03)、松田龍平のことで、コーラスとして参加している。配信中の「Presence I(feat. KID FRESINO)」では、ラップパートのリリックとディレクションを手掛けたラッパーのKID FRESINOがフィーチャリングとして参加しただけでなく、STUTSとともに第1話のドラマ本編およびエンディング映像にも登場したことも話題となった。
さらにこのドラマのユニークなところは、毎話エンディングで流れる主題歌のフィーチャリング相手が変わること。第2話ではBIMと3番目の元夫・中村慎森役の岡田、第3話ではゆるふわギャングのNENEと2番目の元夫・佐藤鹿太郎役の角田、第4話ではDaichi Yamamotoと1番目の元夫・田中八作役の松田、第5話ではT-Pablow(BAD HOP)が参加。楽曲タイトルも「Presence II」「Presence III」「Presence IV」「Presence V」……と変更しており、今後どんなラッパーが登場するのかという点も気になるところだ。

また、竹野内豊主演のドラマ「イチケイのカラス」(毎週月曜夜9:00、フジテレビ系)で主題歌を担当しているのは、和楽器バンド。彼らが担当するという事前の告知は一切なく、初回放送のエンディング映像でもアーティスト名はWGBとクレジットされたのみ。ドラマのために書き下ろした「Starlight」(6月9日[水]リリース)も、これまで和楽器をメインとしたサウンドや詩吟調の歌い回しをほぼ封印し、新たな曲の世界観を披露し、のちにWGBが和楽器バンドだと知ったファンを驚かせた。
バンド名を伏せ、サウンドにも変化を持たせた理由を、「和楽器バンドを知らない方々に、先入観なく、純粋に曲を聴いてほしいから」と語ったメンバー。ドラマ主題歌を手掛けることは、自分たちの名前や楽曲を広めるチャンスでもあるはず。けれども、和楽器バンドは敢えてそれをせず、逆に自分たちの音楽性の幅を広げるきっかけとした。こうした手法は、ドラマ主題歌とアーティストの新しい関係性の一つと言えるかもしれない。

■ドラマを観る人の心にも深く刻まれる主題歌
最近では海外ドラマ人気の流れもあるのか、主題歌を設けないドラマも増えてきた。しかし、主題歌がドラマ本編に与える影響や相乗効果は、やはり無視することはできない。また、ドラマの主題歌になったことがきっかけで大ヒットする楽曲やブレークするアーティストも多い。

例えば、「逃げるは恥だが役に立つ」(2016年TBS系)の主題歌で、星野源が歌う「恋」は、2017年の年間総合ソングチャート「Billboard JAPAN HOT 100 of the Year 2017」で首位を獲得し、エンディングでキャストが披露した“恋ダンス”も話題となり、一大ムーブメントを起こしたことも記憶に新しい。
また、今回「リコカツ」の主題歌を担当している米津も、ドラマ主題歌をきっかけに広くお茶の間に名前が浸透したアーティストの一人。それ以前もボカロP・ハチとして、メジャーデビュー後も順調にキャリアを積んでいた米津だったが、ドラマ「アンナチュラル」(2018年TBS系)の主題歌「Lemon」でその名を不動のものに。同曲は2018年最大のヒット曲となったほか、公式YouTubeチャンネルのMV再生回数も6億7238万回(5月12日現在)と、不朽の名作として多くの人に愛されている。

このほか、「恋はDeepに」(毎週水曜夜10:00、日本テレビ系)の主題歌「怪盗」(5月24日[月]配信リリース)を歌っているback numberは、2015年放送のドラマ「5→9〜私に恋したお坊さん〜」(フジテレビ系)の主題歌「クリスマスソング」が大ヒット。
「コントが始まる」(毎週土曜夜10:00、日本テレビ系)に新曲「愛を知るまでは」(5月26日[水]リリース)を提供しているあいみょんは、「私の家政婦ナギサさん」(2020年TBS系)での「裸の心」が話題に。それと前後するかのように、主題歌の常連となっているのも興味深い。

もっと遡れば、「若者のすべて」(2014年フジテレビ系)のMr.Children「Tomorrow never knows」、「愛していると言ってくれ」(1995年フジテレビ系)のDREAMS COME TRUE「LOVE LOVE LOVE」、「やまとなでしこ」(2000年フジテレビ系)のMISIA「Everything」、「ROOKIES」(2008年TBS系)のGreeeeN「キセキ」、近年においても「恋はつづくよどこまでも」(2020年TBS系)のOfficial髭男dism「I LOVE…」など、ドラマと主題歌をセットで覚えている人も少なくないだろう。
ドラマのストーリーを彩るとともに、毎週耳にすることで視聴者の胸に深く刻まれるドラマ主題歌。ドラマをきっかけにどんな名曲が誕生するのか、今後も目(耳)が離せなさそうだ。

文=片貝久美子