4月より放送がスタートし、ポップなビジュアルを裏切るストーリー展開やクールな楽曲で注目を集めるアニメ「オッドタクシー」。主人公である41歳の個人タクシードライバー、小戸川を人気声優の花江夏樹が演じているほか、ミキの昴生・亜生、ダイアンのユースケ・津田篤宏ら意外な面々も声優として参加し、ユルく、それでいてどこか緊張感ただよう世界を彩っている。

そして今回、俳優の高杉真宙が芸人コンビ「ホモサピエンス」を追いかけるハガキ職人の高校生、長嶋聡役として出演決定。これを機に、花江との初対談が実現した。

――まずは、共演前の印象と「オッドタクシー」でのお芝居を見たときの印象を教えてください。

高杉 僕はアニメが好きなので、花江夏樹さんといったらもう、たくさんの人気アニメに出られているすごい大御所声優さんだと思っています。

花江 そんな、大御所じゃないですよ(笑)。

高杉 いえいえ、僕にとっては本当にすごい大物声優さんです。今回「オッドタクシー」の収録は1人だったので、現場で花江さんとはお会いできなかったんですよ。台本を読むと小戸川って渋いキャラクターなので、これを花江さんが演じるんだ、どんな風になるのかなと思ったら、すごいボソボソした口調でのツッコミがすごくすてきで。最高でしたね。

花江 正直に言うと、僕は高杉さんのお名前を今回の「オッドタクシー」で初めてちゃんと認識したんです。調べたらいろんな作品に出られていて、すごい方なんだって。長嶋のお芝居って、飾らない良さがある。声優ってデフォルメしたお芝居を求められることが多くて、それはそれでプロフェッショナルなことだと思うんですけど、そこにとらわれない純朴さが高杉さんのお芝居にはあるなって。ピュアな感じが声やお芝居から感じられて、本当にいいなって思いました。

高杉 お恥ずかしい…。でもすごくうれしいです!

■謎多き「オッドタクシー」は「一気に見たいタイプの作品」
――作品の印象も教えてください。動物のキャラクターたちが繰り広げる、ハードボイルドでミステリータッチの群像劇ですが…。

花江 最初は本当によくわからなかったです(笑)。台本を徐々にいただいていたので、順番に読んでいったのですが、序盤から伏線がかなり散りばめられているんですよね。何となく見ていたことが、後半で重要になってきたり。読んでいくうちにどんどん、この世界にのめり込んでいきました。毎週見るよりも一気に見たいタイプの作品だなとも思いましたね。キャラクターたちは動物の姿だけど、現代の人間社会の闇に切り込んでいる。ゲーム課金や地下アイドル、YouTuber的な人たち。そんなトレンドを入れつつ、「絶対分かんないでしょう」っていうネタも入ってたりして。そのバランスがすごく面白いなと思いました。

――41歳のセイウチで低音ボイスという、小戸川の役柄については?

花江 41歳であのビジュアルなので、最初はもっと低い声で作っていったんですよ。すると木下(麦)監督に「そんなに無理して低くしなくていいですよ」って言われて。ナチュラルな会話が多いし、無理なく出せる低さで最終的に落ち着きました。小戸川は心が子どものまま大人になってしまった41歳という設定なので、そういう部分が僕の芝居からにじみ出てほしいと。そういう意図をうかがって「なるほど」と。なので確かに低い音は意識していますが、そんなに無理はしていませんね。

――一方、高杉さんは「オッドタクシー」に対してどんな印象をお持ちですか。

高杉 僕は以前、此元和津也さんが原作の漫画を描かれていたドラマ「セトウツミ」(2017年、テレビ東京系)に出演していまして、あのドラマも会話劇ですごい好きだったんです。だから此元さんが脚本を書かれた「オッドタクシー」に参加させていただけることになって、本当に嬉しかったですね。キャラクターたちは動物として描かれているけれど、アニメを見るとポップな中にダークさが隠れていて、僕はそこがすごく好き。ちょっとしたやり取りで笑わせてくるけど、現代の闇が入っているところもあって、此元先生の色がすごく出ているなと思いました。

――高杉さんが演じるのは、芸人を追いかけるハガキ職人でキリンの高校生という役どころです。

高杉 大きくストーリーの本筋に関わってくる役ではなかったので、皆さんと会話することもなく終わってしまったことはちょっと寂しかったです(笑)。でもオーディオドラマの方ではたくさんしゃべらせていただき、キャラクターたちの裏の顔をたくさん見ることができました。樺沢くんみたいにYouTuberっぽい感じでやってみたり、楽しく演じました。

■花江&高杉が気になるキャラ&キャストは?
――とても豪華なキャスティングですが、他に気になるキャラクターやキャストはいましたか?

花江 自然な会話が多いので、声優には出せないようなニュアンスを持ってる人たちにオファーしたんだろうなと思いました。でも完成したものを見ると皆さんすごく作品に溶け込んでいますよね。特にダイアンの2人はうまいですね。

高杉 ダイアンのお2人、素敵ですよね。

花江 当て書きなのかなって思ったんですけど、そうだとしてもすごく自然体。しかもコンビで2人ともうまいって、これはすごいなと思いました。
高杉 僕はキャラクターで言うと、ヤノ(CV:METEOR)が好きですね。

花江 うん、ヤノいいよね。

高杉 こんなキャラクター作りがあるんだって驚きますよね。ずっとラップ調で、韻を踏み続けているっていう。刺々しさもあって、だけどちゃんと聞き取りやすい。言葉遊びの要素が多い「オッドタクシー」ならではのキャラクターだと思います。

――収録はプレスコ(セリフを先に収録する手法)だったそうですね。

花江 一応絵コンテはあったんですけど、「尺は気にせずしゃべっていいですよ」ということでした。人によってテンポがだいぶ違う作品なので、プレスコじゃないとこの空気感は出せないかもなって思いましたね。監督の頭の中に完成図が鮮明にあって、それをもとに細かくディレクションしていただいたので、分かりやすかったです。

高杉 僕もスタジオに入って、どうやろうかなって悩んでいたんです。だけど監督から、「高杉くんのままでやってほしい」っていう話をされて。そのまますぎて、僕の声が予告で流れてすぐに、視聴者の皆さんから「あれは高杉真宙じゃないか」ってバレてしまったんですけど(笑)。

花江 名前隠してたのにね(笑)。

高杉 そうなんですよね。でも「普段通りに」ということだったので、リラックスしながらできました。オーディオドラマの方では、細かくディレクションしていただいて。でも全体的にはのびのびと自由にやらせてもらいましたね。

■高杉の演技に「ちょっと昔の自分を思い出せる」
――お互いのお芝居を最後までご覧になって、どんなことを感じましたか。

花江 高杉さんの長嶋は、狙ってしゃべってやろうっていう感じが全然ないところがいいんですよね。学生の役と声がすごくマッチしていますし。彼がやってることって盗聴やそれを無断で配信したりと、良くないことなんだけど、あれぐらいの年齢のときってそういう無駄な正義感や好奇心に駆られて「自分がやってやるんだ」っていう信念みたいなのがあると思うんです。そういう感情がすごくお芝居に乗っていてすごいなと思いました。ちょっと昔の自分を思い出せますよね。

高杉 うれしいです(笑)。「オッドタクシー」でそういう役をやらせていただけたのは嬉しかったですね。小戸川は1話から徐々に熱量が上がっていく感じがあって、僕はそれがすごく好きなんです。最初は閉ざしていたものがどんどん開かれていく感じ。周りに巻き込まれて動かざるをえなくなったり。特に好きなのは小戸川のツッコミ。あんなローテンションでのツッコミってあまりないですよね。花江さんって若いキャラクターが多いイメージなので、41歳のセイウチというのが意外でインパクトがあったこともあって、ボソボソしゃべりがさらに印象に残るんです。少年時代の小戸川は花江さんのいつもの声で、そこはちょっと安心しました(笑)。

花江 よく聞くやつだよね(笑)。当たり前ですが少年時代のほうがやりやすかったです。小戸川ってツッコミの言い回しが特殊なんですよね。日常で絶対使わないだろうなっていう言葉をチョイスしている。それをこの作品の主軸である自然な会話劇に落とし込むのは大変でした。小戸川は基本ボソボソしゃべりで、ツッコミもダウナー系。周りのキャラも個性が強いので、そっちに引っ張られないように気をつけていましたね。

■オーディオドラマだけのミステリー展開も
――「オッドタクシー」YouTubeチャンネルで配信中のオーディオドラマでは、長嶋がこっそり盗聴したキャラクターたちの会話を聞くことができますね。

高杉 独特のセリフの言い回し、ツッコミとボケなどは本編と変わらないですね。本編にリンクしていく部分があったり、オーディオドラマで分かることがあったりするので、こちらを聞いていただくと本編がより楽しめるんじゃないかなと思います。アニメがもっと面白くなるラジオドラマって素敵ですよね。

花江 本編がオンエアされるとオーディオドラマが1話ずつ公開されていくので、僕も毎週聞いています。本編を最後まで見た後に、オーディオドラマを聞いても面白いと思いますよ。「裏でこんなことをやってたんだ」っていうのが分かる。僕のお気に入りは第2話でミステリーキッスの3人が、「大きい秘密と小さい秘密、そして1つ嘘をつこう」って話している回。

高杉 あれ怖かったですよね(笑)。

花江 うわ、誰か「人を殺した」って書いてるよ…って(笑)。これとこれは本当のことを言ってるなって分かったり。さらにオーディオドラマの終盤でまたその話が出てきたりもするので、オーディオドラマだけのミステリー展開もあるんですよね。作品をいろんな角度から楽しめるドラマです。
――アニメは折り返し地点です。後半の展開を楽しみにしている方や、これから見てみようかなと考えている方に、お2人からメッセージをお願いします。

高杉 全部を疑ってかかった方がいいぐらいの作品だし、そのほうが気持ちいいと思うんですよね。それぐらいの気持ちで見ていくと、一つ一つの伏線に気づけるんじゃないかな。でも結局だまされるほうが気持ちいいかもしれない(笑)。奥深い作品世界をじっくりと楽しんでほしいですね。

花江 何気ないシーンやセリフが伏線になっている作品です。いったんここで1話から見返してみると、この後の展開がより楽しめると思いますね。ここから物語がさらに発展していき、すごいラストが待っています。楽しみにしてくださいね!