“朝ドラ”こと連続テレビ小説「おかえりモネ」(毎週月〜土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか※土曜は月〜金曜の振り返り)の第11週「相手を知れば怖くない」ではドラマの中でもオリンピックが開催されていた。2016年、リオデジャネイロ・オリンピック開催中の夏、主人公・モネこと百音(清原果耶)は情報番組「あさキラッ」の天気予報コーナーを受け持っている。ある時、コインランドリーで菅波(坂口健太郎)と“1300万人分の2の奇跡”の再会。これはもう百音と菅波は運命の相手…?朝ドラと恋愛について、フリーライターでドラマ・映画などエンタメ作品に関する記事を多数執筆する木俣冬が解説する。(以下、「―モネ」、ほか過去の朝ドラのネタバレが含まれます)

■「4カ月間も絶妙にすれ違っていた」百音と菅波が再会

「おかえりモネ」東京編の2週め。百音が朝の情報番組「あさキラッ」の天気予報コーナーで働きはじめてはや4カ月が経過した。百音の仕事は、莉子(今田美桜)の担当する中継コーナーでコサメちゃんと傘イルカ君というパペットを操ること。

それと毎日、天気に関する小ネタも提案している。「あさキラッ」は朝の番組なので、深夜2時に起きてテレビ局に出勤、朝の番組を終えて午後は帰宅という昼夜逆転生活を送る百音。幼なじみの明日美(恒松祐里)とシェアハウスで一緒に住むことになったにもかかわらず平日はすれ違ってしまう。

それは友人のみならず、恋人ができた場合ネックになる。毎度、そのせいで別れることになると嘆く莉子は百音に注意を促す。でも百音にはそういう相手がいない。明日美は百音の心に誰かいるのではないかと怪しんでいるが、隠しているわけではなくて自分でもまだよくわかっていないだけなのである。

東京に来た百音はまず菅波に丁寧に長文のメールをした。するとものすごくそっけない返事が来て、自分の長文との差に恥ずかしさを覚えた。なぜ恥ずかしいのか百音はその気持がわからない。

実はその最初のメールを送ろうとしていた時、コインランドリーで百音は菅波とすれ違っていた。その後も、一回すれ違っている。菅波いわく「4カ月間も絶妙にすれ違っていた」。

■「1300万人分の2の奇跡」を起こした百音と菅波

百音と菅波のすれ違い、どれだけ引っ張るのか、“こんなに近くにいるのに〜”と視聴者はもやもやしていた。すれ違いの古典的名作で朝ドラにもなっている「君の名は」の前例もある。

すれ違い過ぎて主人公が途中でほかの人と結婚してしまう物語といえば「半分、青い。」(2018年度前期)もそうだった。

だが「モネ」はそこまでおおごとにはならず、第54回でふたりは4カ月ぶりに再会した。登米でお別れする時、東京で偶然出会えるかもと百音が言うと、菅波は「1300万人分の2の奇跡」だからありえないと一笑に付したもののわりにあっさりと。

だから菅波は「納得いきませんね」と不満顔をする。とはいえやっぱり菅波は百音にとって頼れる人。百音の仕事の悩みを真摯に聞いてくれる。洗濯が仕上がるまでの10分間という限定された時間もエモかった。

ところで。いまさら説明するまでもないだろうが、菅波は登米の診療所と東京の病院を行き来している医者で、百音の気象予報士の試験勉強を親切に手伝ってくれた人物。理屈っぽくて独特の価値観を持っていて意外なことにこだわる。

でも根は真面目で誠実。百音とは相性が良さそうで登米の人たちはあたたかく進展を見守っていたが、あまりにふたりの間に何も起こらずジリジリしていた。視聴者もまったく同じであった。

■朝ドラですれ違った人たち

朝ドラではたいていあらかじめ“ヒロインの夫”というように役の属性が紹介されるので、安心して見ることができる。ところがごくまれに途中まで誰が相手役なのかわからないこともある。

「―モネ」のようにどうなるの〜?と引っ張った朝ドラといえば、前述の「半分、青い。」。

主人公・鈴愛(永野芽郁)のソウルメイトとして律(佐藤健)は最初から絶対的な存在ではあったが、鈴愛は途中、別の人と結婚し紆余曲折を経て律と結ばれる。お互い、誰よりも理解し合っているにもかかわらず、なかなか結ばれないもどかしさがドラマの味わいになっていた。

「なつぞら」(2019年度前期)では主人公・なつ(広瀬すず)には心の友・天陽(吉沢亮)がいた。

ふたりは東京と北海道と生きる場所が離れていながらも心は繋がっている。精神的に強く結ばれながら、天陽は地元で結婚してしまう。なつも東京で結婚し、それでもずっと心の友でいるという不思議だけど素敵な関係を最後まで築いた。

「梅ちゃん先生」(2012年度前期)は主人公の梅(堀北真希)は医師・松岡(高橋光臣)と喧嘩しながらいい関係を築いていたが、結局は幼なじみのノブ(松坂桃李)と結ばれる。

古い作品だと、数カ月前にBSで再放送していた沢口靖子の出世作「澪つくし」(1985年度前期)は、最愛の夫(川野太郎)が遭難して亡くなったためヒロイン(沢口)が再婚したら後々、夫が生きていたことがわかり心が大きく揺れる。

再婚した夫(柴田恭兵)もいい人で子供もいる、でも最初の夫は熱愛のすえ結ばれた相手だから愛の熾火(おきび)が再び燃え盛るのではないかと、メロドラマに朝から主婦たちは悩ましい気分を楽しんだ。もどかしさの最高峰であった。

■百音の相手は菅波?

「おかえりモネ」では第55回のふたりの様子を見るにこのまま菅波と百音は結ばれそうな予感がするが、幼なじみの亮(永瀬廉)の存在もまだまだ気にかかるし、莉子が「(恋愛相手の年齢の)上限何歳?」と百音に聞いていたこともあって、気象予報士としての先輩・浅岡(西島秀俊)との可能性もなくはない。

西島秀俊は「純情きらり」(2006年度前期)で妻がいながら主人公(宮崎あおい)と芸術を通して心で結ばれるような複雑な関係を演じた経験もあるのだ。

百音が、自身の進む道は気象予報士だと確信したように、恋の相手を確信するのはいつのことだろうか。まあ「4カ月間離れてましたけど私、先生と距離が空いたとは思いません」とか「先生にずっと会いたかった」とか口にしているので、確信したようなものに感じるけれど。