4月30日からJR東日本四季劇場[秋]で開幕した劇団四季ミュージカル「バケモノの子」。同作は2015年公開の細田守監督による同名アニメーション映画を原作にした新作オリジナルミュージカル。この世界に存在する人間界ともう一つの世界・“バケモノ界”の渋天街。そこに迷い込んでしまった蓮とバケモノである熊徹を中心に、色鮮やかなキャラクターたちの姿を描いていく。劇団四季はこの作品で国産ミュージカルとして最大級の長期上演に挑む。

WEBザテレビジョンでは「劇団四季ミュージカル 劇場から渋天街へ続く道」と題し、全7回に渡って俳優やスタッフのインタビュー、稽古場の様子などをお届け。ミュージカル「バケモノの子」がどのように生まれ、劇場で観客をバケモノの世界へどう誘っていくのか…作品の魅力を余すことなく紹介していく。

第4回の今回は、脚本・歌詞を担当した高橋知伽江にインタビュー。ミュージカル「バケモノの子」を作り出すにあたっての裏側を聞いた。

■「映画の魅力は損なわず、舞台ならではの楽しさもある作品を目指しました」

――原作のアニメーション映画を最初に見た印象はいかがでしたか?

細田(守)監督の前作「おおかみこどもの雨と雪」が大好きだったので、「バケモノの子」も公開されてすぐに拝見しました。そのときはまだミュージカル化のことは念頭になかったのですが、とてもダイナミックで圧倒されたことを覚えています。

――ミュージカル化に際し、どんなことを意識しましたか?

まず、舞台ならではの魅力がないと、舞台化の意味がないだろうと思いました。でも、原作アニメが非常にしっかりした骨格の話なので、ミュージカルにはしやすかったですね。映画の魅力は損なわず、舞台ならではの楽しさもある作品を目指しました。

――この作品では、“父と子”の成長が描かれています。

「バケモノの子」は、バケモノである熊徹と人間の蓮が、違いを受け入れて理解し合い、心が結びついていくという物語ですが、バケモノの世界には、熊徹だけでなく、たくさんの師匠がいます。少年の蓮がバケモノたちから掃除・洗濯・料理を教わる「修行」のシーンも、蓮を見守り育て、成長を喜ぶ人たちがたくさんいることを表現したナンバーです。自分と血が繋がっていなくても、子どもたちが夢を追って生きていきやすい社会を作っていくのが、大人たちのやらなければいけないことなのだと、この舞台を観て感じていただければありがたいです。
■「絶対帰り道に口ずさんでいただけるナンバーだと思っています」
――今回は全曲、富貴晴美さんの曲にあとから歌詞を付けたそうですが、その作業はいかがでしたか?

富貴さんには、数行の歌詞のイメージ的なものを先にお渡しして、そこから発想してメロディを作っていただいたのですが、「なるほど、そう来たか」と、私とは発想が違っていたものもあって。曲と言葉でやり取りができたのは面白かったです。

――歌詞の言葉を選ぶときに、心がけていることはありますか?

曲のなかでもサビの部分、一番作曲家が力を入れている部分に、一番伝えなくてはいけない言葉を乗せるようにしています。一度耳で聴いて、すぐわかる言葉を使うことも意識しますね。特にこの『バケモノの子』は、観客層がオールジェネレーションだと思うので、子どもが聴いてもわかる言葉で、家に帰って親子で一緒に歌えるような歌詞でなければという思いもありました。実際、テーマ曲の「バケモノの子」や「胸の中の剣」は、絶対帰り道に口ずさんでいただけるナンバーだと思っています。

――アニメが原作ということで、アニメファンやスタジオ地図作品のファンなど、四季の舞台を初めて観る観客も多いと思います。

同じストーリーを描いていても、舞台と映像で視点が変わることによって、違う魅力が見えてくると思うので、アニメーション映画のファンの方も、舞台をご覧になると、新たな発見がたくさんあると思います。あのシーンは舞台ではどうするんだろうと思ったら、こうなったかというような。でも、原作のイメージは大切にしました。ミュージカルならではの表現を、これはこれで楽しいと思っていただけたら嬉しいです。
■「劇団四季が作品を通して伝えたいメッセージにも繋がると思います」
――ミュージカル版では、猪王山の長男、一郎彦を大きく膨らませることで、蓮との対比や、父と子の絆というテーマがより鮮明になっています。

一郎彦は、成長するにつれて自分に失望し、悲しみや疑いが心の中で降り積もって、最後に闇に呑み込まれていきます。でも、蓮と一郎彦は裏表で、ふたりを書いているようで、実はひとりなんですね。“バケモノの子”は蓮だけではないんです。だからふたりは向い合わなくてはいけないし、戦うしかなかったという必然性に持って行けるように、1幕から伏線を張っています。私が書いたミュージカルは“バケモノの子たち”なんです。私は、闇も含めて人間であり、その闇を抱えてもがきながら生きて行くのが人生なのだと思っています。闇があるからダメではなくて、闇に負けてもいい、それでも生きていけばきっと美しい風景が見えてくるという考えは、劇団四季が作品を通して伝えたいメッセージにも繋がると思います。

――稽古場の様子はいかがでしたか?

演出の青木豪さんとは、私が大切に思っていること、青木さんが表現したいことをお互い理解し合った上で稽古場に入りましたし、原作と骨格は変わっていないので、最初に狙ったコンセプトからまったく揺らがずにきたと思います。私は、最初の本読みから、だいたいの流れを作るところまで稽古場に入っていて、あとはお任せしていたのですが、俳優たちも自ら工夫したり、考えたりして、稽古場に「みんなで創る」という一体感がありました。歌詞が稽古中に何度も変わったり、曲の長さが伸びたり縮んだりして、そのたびに覚えて歌うのは大変だったと思いますが、キャスト全員、本当に頑張ってくれました。新作に挑戦し、作品の誕生から参加する喜びはそれほど大きいのだと思います。ある俳優さんが、「稽古をやればやるほど、この作品が好きになっていくんです」と言ってくれて、それはとても嬉しかったですね。

取材・文=原田順子