年間230万人が来場し、“単一アート・グループとして世界で最も来館者が多い美術館”としてギネス認定されているデジタルアートミュージアム「エプソン チームラボボーダレス」。その仕掛人であり世界を魅了するデジタルアートのカリスマ、「チームラボ」代表の猪子寿之さんが7月3日放送の「日曜日の初耳学」(MBS/TBS系)に出演。林修を聞き役に、アートの可能性や、“チーム”として作品を生み出す理由について語った。

■全ての人に“体”を通して世界を認識してほしい

2018年にオープンした「エプソン チームラボボーダレス」は、世界の最も優れた文化的施設に贈られる「ティア・アワード」を受賞するなど、世界が注目する最先端アートの発信地だ。

目で見て楽しむだけでなく、映像の下に立つと映像が人の形に合わせて変化するなど、“体感”できるのがこのミュージアムの魅力。猪子さんは、展示作品の狙いを「全ての人に“創造することはすごく楽しい”という体験をしてもらいたいと思っているんです」と話す。

複雑で立体的なものを見て体感することは、脳にも大きな影響を与えるという。猪子さんは「イノベーションを起こすとか創造的な結果を出すといったことに対して、実は脳の空間把握能力がすごく相関関係があると言われているんです。空間把握能力には脳の海馬が非常に影響しているということが分かっているんですけど、平面的な空間で育ったネズミと複雑で立体的な空間で育ったネズミを比べると、後者の方が海馬の神経細胞が4万個増え、脳の体積も15%増えているんです」と説明する。

現代人は、より平面的な世界で生きている、と猪子さんは感じている。「放っておくとテレビを見たり、スマホを見たり、本を読んだり…“頭”だけで世界を知ったつもりになっていく」と猪子さん。現代人にありがちな、そうした認識の仕方に疑問を感じた猪子さんは「全ての人が複雑で立体的な空間で“体”を通して認識する場を作りたい」という思いから、アートミュージアムを作ったのだという。

■「チームラボ」がチームで作品を発表する理由

「チームラボ」の作品には、個人名のものは一切ない。どの作品も、デザイナーやエンジニアの他、数学者や建築家といった異分野の専門家も加わった“チーム”として生み出されたものだ。

「チームラボ」としての作品発表にこだわる理由について「単純に、一人では作れないと思ったんですね。専門家が集まってモノを作っていく、ということをしたかったんです。その名前でやること自体が、集団的創造でモノを作っていく時代だっていうメッセージでもあって」と猪子さんはいう。

世界基準ではすでに、チームで働くことが重要視されてきている。猪子さんは、日本で“チームで働くこと”がなかなか重要視されない背景には、同質(同じであること)を重視する文化がある、と考える。「同質を求めるとチームは作りにくいんです。同質だとチームを作る意味がないですね。長所が多様であるほど、短所が多いほどチームを作る意味があります。どんどん物事が複雑になっていて、一人が全部の専門性を習得するっていうことは不可能になってきていると思うんです」という指摘には、スタジオからも納得の声が上がった。

■「自分にとって意味があることを」の一心で

猪子さんは2001年、東京大学在学中に友人と「チームラボ」を創業。以来、Web開発で資金を稼ぎながら自分たちの目指すアートに情熱を注いできた。活動が世界に評価されるようになった今、その“自分たちの目指すアートを”という歩みは正しかったと感じている。

「自分にとって意味があると思えることをやれたのが良かったと思っているんです。自分にとって意味があれば、うまくいかなくても評価されなくても続けられる。評価のために生きるっていうのは短期的な消耗戦になってしまう気がするんですね。評価されようがなんて言われようが、自分にとって意味があるのであまり関係ないと思えたことが良かったし、すごくラッキーだったなと思っています」。猪子さんは、しみじみとそう振り返った。