井桁弘恵が主演を務めるドラマストリーム「私がヒモを飼うなんて」(毎週火曜深夜0:58-1:28、TBSほかTVer・Paraviなどでも配信)が現在放送中。同作は、TBSとマンガボックスが共同制作している完全オリジナル漫画「私がヒモを飼うなんて」(通称「わたヒモ」)を実写化。原作のエッセンスを活かしながら、ドラマオリジナルのストーリーが展開されている。
主人公・蒼井スミレを演じる井桁弘恵、年下の“ヒモ男子”竹之内宗一を演じる一ノ瀬颯、スミレを一途に思い続ける“幼馴染男子”桐谷森生を演じる西垣匠、そしてスミレが憧れる女性であり本作のキーパーソンとなる叶百合を演じるトリンドル玲奈が魅力たっぷりにそれぞれのキャラクターを演じている。企画・プロデュースを行った飯田和孝氏(「マイファミリー」・7月日曜劇場「VIVANT」など)と、プロデューサーの佐久間晃嗣氏(「#家族募集します」など)に、「私がヒモを飼うなんて」の制作の裏側や、プロデューサー視点からの役者の魅力などについて語ってもらった。
■“ヒモ”という設定がストーリーを生む
――「私がヒモを飼うなんて」というタイトルからキャッチーですが、飯田さんは同名の原作漫画の企画から携わっていると伺っています。“ヒモ”を題材にした決め手は?
飯田和孝:原作はマンガボックスという電子マンガの出版社とTBSの共同制作で進めてきたんですけど、漫画のシナリオを書いている本山(久美子)さんと一緒に題材を考えている中で、「ヒモとかどうですか?」って話になって。ヒモという状況というか、形態って、一見、主従関係のような上下関係がありそうだけど、それがやがて本当の愛に…どう変わっていくのか。形式上の関係があるからこそ互いを苦しめたりする、そこにストーリーが生まれやすいなと。そこから、まさか自分がヒモを飼うなんて思ってもみなかった“ピュアな女の子”を主人公にしようとなり、タイトルもこれがいいねって決まっていった感じです。
■スミレが井桁弘恵さんじゃなかったら嫌われていたかも…
――そのピュアな主人公・スミレを演じている井桁弘恵さんをはじめ、ヒモ男子・宗一役の一ノ瀬颯さん、スミレの幼なじみ・森生役の西垣匠さん、スミレの憧れの上司で宗一を“ヒモ“として飼っていた・百合役のトリンドル玲奈さん、皆さん役にハマっていますね。
佐久間晃嗣:“ヒモ“というあまり馴染みのない題材なので、あの4人のビジュアルの強さ、あの4人だから成立しているところは大いにあると思います。原作を読んだときに、スミレはすごくピュアでかわいくて、でもちょっと鈍感な女性で…だけどそれを映像化する、生身の人間が演じるとなると、ともすればちょっと視聴者から嫌われてしまわないかなという不安があったんです。「女性から見て、好かれる主人公になるだろうか?」と。
井桁さんは、天性の明るさと聡明さに加え、芯の強さを感じる佇まいが印象的で。井桁さんならきっと、魅力的なスミレにしてくださるだろうと思いました。実際、撮影中には井桁さんから「今のセリフの言い方、大丈夫ですか?私だったらイラッとしてしまうかも」とか、細かいニュアンスまで気にして演じてくださっていて。多分、ご自分の中にスミレの要素があまりないと思われていて。ご本人はとてもサバサバしている方なので、スミレを意識し過ぎるとやり過ぎな方にいっちゃうんですよね。だから、その塩梅を気にしながらやってくださっています。初回から最終話までのスミレの成長も、そのグラデーションを計算してお芝居してくださっていて、素晴らしいなと思いました。
飯田:原作のイメージとは結構違う、その違うところが逆に良かったね。原作を読んでいる人もドラマを見るまで想像しないスミレ像だっただろうけど、確かに漫画とドラマは違うから。漫画だといろんな方向から描けるし、むしろ「傷ついたり、落ちていくスミレがどうなるのか?」っていう視点もあるだろうけど、ドラマはやっぱりどこか共感できたり、好きになれる主人公が求められる。そういう意味で原作とは違うスミレを生み出してくれたから、良かったなと。
■注目の俳優・一ノ瀬颯、西垣匠の芝居へのこだわり
佐久間:井桁さん演じるスミレと同じく、かなり難しい役だと思うのが、一ノ瀬くん演じる宗一です。非常にミステリアスな役どころで、原作を読んだ時に「なんなんだこいつは!?」と、とても斬新な相手役像だと感じました。
物語の構成上、宗一の本心が分かるのはドラマの後半になってしまうので、物語の前半はやはり、「この彼なら、危ないとわかっていても好きになるのは仕方ないよね」という説得力がないといけないなと思っていました。そこを一ノ瀬くんは見事に表現してくれて。スミレと宗一のシーンは1話の雨宿りや2話のピアノの連弾など、原作にはない恋愛パートをかなり増やしています。一方で宗一は、原作のイメージよりも口数をかなり減らしていて。スミレが何か質問しても、それには答えず別のことを言ったり。でもデートしましょうってはっきり言ってくれたり、急にタメ口になったり。視聴者の方が何か気になってしまうような“猫っぽい“キャラクターになればいいなと。
ルックスは原作に一番近いキャラクターになっていると思いますし、真面目そうに見えてちょっと天然っぽい、ご本人の個性も加わって、不思議な魅力のある宗一になっていると思います。後半でやっと彼の本心が分かってきてからの表情の変化、こんな顔するんだって僕も驚きましたが、皆さんにも楽しんでいただきたいですね。
飯田:一ノ瀬くんはピアノの練習をすごくしてくれて、原作ではある理由でピアノが弾けなくなってしまったピアニストっていう設定なんですけど、1曲だけ、すごく大切な曲があり、それが弾けなくなってしまったという風にドラマでは変えたので。佐久間に言われて、そりゃそうだよねって。映像としてはピアノを弾くシーンがあった方がいいから。僕もドラマを作ってきて、原作の方からこうしたいって言われたときに、いや映像だとこうした方が…とかって思っていたのに、自分が原作サイドになったら映像的な考えをしなくなっていて。でも佐久間に言われて、何も壁がなく、その方がいいねって思えた。漫画とドラマの都合を2人で合わせられたし、1曲だけにしたことでエピソードに深みも出たし。後半に向けての伏線にもなったし。ピアノのシーン、すごく良かったです。
佐久間:一ノ瀬くんがビジュアル的に原作に一番近いとすれば、一番かけ離れているのが西垣くん演じる森生かもしれない。キッチンカーで働いているのと、幼なじみのスミレを一途に思っているところ以外は結構違う。宗一が自由奔放なネコなら、森生は忠犬。そういう対比も付けたくて、原作では結構ちゃんとしている男性だけど、明るくてちょっとおバカなキャラクターに変えています。隣に住んでいるっていうのもドラマオリジナルの設定ですね。スミレのことが好きだけど、今の関係性を壊すのが嫌だしスミレも困るだろうからそれは言わないとか、自分がスミレを幸せにしたいというより、彼女が幸せだったら自分じゃなくてもいいって思えるとか、二番手男子の要素を凝縮したキャラクターにしたのですが、実際、そんな人現実にはいないじゃないですか。
そんな原作よりも漫画っぽいキャラクターでも、西垣くんが演じるとすごく人間っぽくなる。初回放送後すぐに、「#森生にすればいいのに」ってTwitterとかでつぶやいている方がいて、そのハッシュタグが広がって。そう思ってもらえたらいいなと思っていたので、嬉しかったですね。本人もそれを認識していたみたいですが、手放しで喜ぶでもなく、とてもハングリーで。空き時間も監督モニターの辺りにいるんですよ。モニターを見たり、監督と相談したり…本当にお芝居が好きなんだなぁと。飯田さんは「ドラゴン桜」の頃から知ってるから、感慨深いんじゃないですか。
飯田:「ドラゴン桜」のときは、ずっと声のトーンを、彼も声がちょっと高い方なので。もっとトーンを落としてって言い続けていて。あのころとは演技も全然変わっていて。佐久間から、ずっとモニターを見ていて自分の演技を客観的に見ているって聞いて、先日ちょっと話したら、やっぱり現在の自分の演技をちゃんと分析していて、こういう風になりたいから、今これをしないといけないとか、「ドラゴン桜」の本当に初めてっていうころからすると、すごく成長したんだろうし、まだまだうまくなりたいっていうのが感じられました。
■物語のキーパーソン・トリンドル玲奈演じる百合に注目
佐久間:百合は主人公の憧れで、目標となる存在なので、お芝居だけではないオーラというか、華のある方にお願いしたくて。トリンドル玲奈さんは、今すごくお忙しいじゃないですか。前クールも掛け持ちでドラマをやられていて、今クールも2本出演されていて。そんな中で受けていただけて、本当にありがたかったです。ご本人はすごく笑い上戸で常に笑っていて、現場の雰囲気を明るくしてくださって。ただお芝居になると本当に真摯で真面目で、1つのセリフもすごく悩みながら、丁寧に演じてくださっています。上司である百合が、このセリフをスミレにどういう風に言うだろうかとか、役の立場ですごく考えられていて。宗一への感情も、好きとか恋とかで単純に割り切れるものではないので、特に最終話のとあるシーンは、ご本人と相談して制作していきました。
飯田:原作では百合はアラフォーなんですけど、トリンドルさんが演じる上で設定を下げたことで、確かに百合は社長で、成功もしていて、強い女性ではある。けれども、強く見えていても弱い部分があるんじゃないか。ヒモを飼っている理由もそこだったりしたので、百合をトリンドルさんに演じてもらって、より魅力的なキャラクターになったと思います。
佐久間:トリンドルさんご本人の希望もあって、実際に百合のモデルとなったランジェリーデザイナーさんにも会っていただいて。髪形や服装から仕草に至るまで、いろいろとお話して研究されていました。百合のランジェリーにまつわるセリフは、そのデザイナーさんがお話しされていたことが元になっているのですが、トリンドルさんが演じることでより魅力的なキャラクターになったのではないかと思います。あと、森生とのシーンも個人的に結構好きで。お互いに一番何でもない相手だからこそ、肩肘張らずに気楽に、コーヒー片手に語り合えるシーンにしたいなという思いで作っています。
■井桁弘恵と一ノ瀬颯がジャズクラブで「ネコふんじゃった」を猛特訓
――もう撮影は全て終了していると伺っていますが、印象に残っているシーンや好きなシーンはありますか?5月16日(火)放送の最終回の見どころも含めてお願いします。
佐久間:印象に残っているのは第2話のジャズクラブでスミレと宗一がピアノの連弾をするシーン。原作にはないシーンで、これがうまくいくかどうかで決まってしまう、キーになるシーンだと思っていました。撮影前は上手くいくだろうかと結構緊張していたんですが、現場でモニターを見て、これならうまくいくんじゃないかなと安心したのを覚えています。ジャズアレンジのネコふんじゃった、すごく2人で練習していたんですよ。台本にはサラッと書いてあるだけだったけど、実際やるとなったら大変だったと思います。
あと、第1話の雨宿りをする、2人の出会いのシーン。このシーンも原作とはかなり違うので、このドラマの空気感を作った印象的なシーンだったと思います。あと個人的に一番好きなシーンは、最終話のスミレと森生のキッチンカーのシーン。まるで狐の嫁入りのような天気雨のシーンがありまして…2人のお芝居がとても素敵なので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。
飯田:僕も2つあって、1つはスミレが一歩踏み出す瞬間のシーン。ランジェリーを付けた瞬間に、道が開けるっていうシーンで、あそこは漫画のときからこだわっていました。ただ女優さんがランジェリー姿になるって、かなり勇気がいると思うんですが、この作品において重要なシーンでもあるので絶対に外せないなっていうところで。井桁さんがそこを快諾してくださった。後ろ向きだったスミレが一歩を踏み出す、女性が自分の力で歩くという意味が込められていて、そこからいろんな物語が始まっていく。ヒモに出会ったり、その後もいろんな経験をしていくっていう、欠かせないシーンだったので、そこが成立したのは良かったですね。
もう1つは楽曲。ピアニストの角野隼斗さんが手掛けてくれた「かすみ草」という曲は、いいシーンで流れるので。これはもう自己満足でしかないですけど、漫画のときから宗一くんのイメージは角野さんだったので、劇伴を絶対作ってもらいたくて。それが実現して映像になって。すごく素敵な曲だし、意味のある曲なので、最終回で出てくる、一番いいところでメロディーが流れるので、どんなシーンになるのか期待してください。
佐久間:第7話の終わり方からして、「これを残りあと1話でどうまとめるんだ?」って、見ている方は思うかもしれないですが、濃密な最終回になっていると思います。これまでの回では、他人にどう言われようと関係なく惹かれてしまう、恋ってそういうものだよなという“恋愛のどうしようもなさ“を描いてきたつもりで。最終回では4人の恋模様だけじゃなく、それぞれが選ぶ“今“を見届けていただけたらと思います。ドラマの最終回を楽しんでいただいて、その後、原作漫画を読むのもいいかもしれないですね。ネタバレでもないですし、違った楽しみ方ができると思います。
飯田:はい、漫画も並行して進んでいて、7月に電子コミックス7巻が発売されるので、そちらもぜひ、よろしくお願いします!
井桁弘恵主演ドラマストリーム「私がヒモを飼うなんて」プロデューサー陣が語る、ドラマ版「わたヒモ」制作裏話
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