声優としてTVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』などに出演、さらに映像作品や舞台俳優としても幅広く活躍する佐藤日向さん。お芝居や歌の表現とストイックに向き合う彼女を支えているのは、たくさんの本から受け取ってきた言葉の力。「佐藤日向の#砂糖図書館」が、新たな本との出会いをお届けします。

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私は我慢というのが苦手だ。

何かに耐えることは特に苦でないのだが、基本的に「嫌だ」と思ったことは気づけば声に出さないと気が済まないのだ。我慢できたとしても言わなかったことに対しての言葉にならないゴワゴワした感覚が残って、結局自宅で号泣する。自分にとっての普通の感覚が相手にとっての普通とは限らないのに、意思疎通というのは大人になればなるほど面倒くさくなる。

今回紹介するのは群ようこさんの「いかがなものか」というエッセイだ。

「世間の"ヘン"に物申す痛快エッセイ」と書かれているように群さんが日常で感じた"ヘン"を毒舌な言葉たちで切り込んでいくこれまで読んできたエッセイとは違ったタイプのエッセイ作品だった。

例えば1番最初の「私は悪くない」は群さんがたまたま聞いていたラジオで気象予報士の方が天気予報が外れるのは私のせいではない。私は悪くない。という意思表示をしたことから派生して、大人になったら自分が悪いことをした・してないに限らず相手を不快にさせたら心から謝罪をしなければならないと諭すような内容だ。

読みながらも思わず心臓がズキズキしてしまい、これまでの自分がそう言った発言をしていなかったか、適当な謝罪をしたことがないか、走馬灯の如く記憶を辿ったが自分が気づけていないだけできっと私は「私は悪くない」と言葉にしてしまったことがあるのだと思う。

目上の方や年上の方から「いい加減もう大人なんだから」と言われた経験はないだろうか。私はかなりの頻度であるのだが、いつの間にか年齢を重ねて事実上は大人になってしまっているのに、心が追いついていないからまだ18.19歳くらいの感覚で止まってしまっている。
周りに迷惑をなるべくかけずに、周りが持つ理想の"大人"にならなければと思って必死で走ってもその理想自体が人によって違うからなかなか難しい。

群さんのエッセイに詰まっている言葉はこれまでの自分の行動がもしかしたら"ヘン"と思われ何か一言、言いたいと思わせてしまっているかもしれないと自分の行動を見つめ直す作品になっていた。

見えない誰かのために自分の行動を縛り付けるつもりは全くないが、一般的に常識とされているものを知らない、無知の状態は罪だと私は思うのでなるべく常識を知る努力を怠らずにいたい。
これまでの自分の行動がヘンではなかったか、本作を読むと自分に問いをかけられる、そんな気がする。