放送中のTVアニメ「SYNDUALITY Noir」(毎週月曜深夜0:00-0:30ほか、テレビ東京系ほか/ディズニープラスで独占配信)でノワールの声を担当している古賀葵が、8月24日に誕生日を迎えた。「SYNDUALITY Noir」は、未来の地球でエネルギー資源を採掘する冒険者になることを夢見る主人公・カナタ(CV:大塚剛央)が、記憶を失ったノワールを発見したことから始まる物語。AI搭載の美少女ヒューマノイドであるノワールは、記憶がないが故にどこか無機質な感じであったり、抑揚のない感じであったりするキャラクターで、古賀の声はうまくハマっている。無機質で抑揚がないと言っても、単純に“機械的”とは違う、透明感がありつつ心地よく響く声は、聞く者を安心させる何かを持っている。物語の展開も気になるところだが、古賀がどういう声優なのか、これまでの活動を振り返りつつ、その魅力を探ってみようと思う。

■NHKの人形劇をきっかけに声優を志す

古賀は幼い頃、NHKの「おかあさんといっしょ」や人形劇を見ることが好きで、“お人形たちと仲良しになりたい”と思ったことが声優を志すきっかけになったという。その頃は声優という職業をまだ意識していなかったようだが、小中学生の頃にアニメにハマり、「カードキャプターさくら」「おジャ魔女どれみ」などを好んで見ていて、どの声もキャラクターに合っていて声優ってすごいと思い、具体的に声優という仕事をやってみたいと明確に思うようになった。

直接的な大きなきっかけとなったのは、古賀が小学生の時に見ていたアニメ番組にアフレコ現場を紹介するコーナーがあり、自分が好きなキャラクターたちに声を当てている様子を見て、漠然と描いていた夢の輪郭がはっきりしたという。しかし、中学生になっても、高校生になっても「声優になりたい」ということは誰にも言えなかったそう。声優への憧れや思いは強くなる中、高校を卒業したら声優になるための勉強をしたいと思い、覚悟を決めて親に打ち明けた。

■「封印勇者!マイン島と空の迷宮」で声優デビュー

高校卒業後、「代々木アニメーション学院」福岡校の声優タレント科に通い、2014年3月に同校を卒業。意を決して上京し、現在所属している事務所「81プロデュース」の声優養成機関「81ACTOR’S STUDIO」に入所すると、ゲーム「封印勇者!マイン島と空の迷宮」のマギア役で声優デビューを果たした。

2015年に81プロデュースに所属し、本格的に声優としての活動をスタートさせると、「六花の勇者」「終物語」「ジュエルペット マジカルチェンジ」「櫻子さんの足下には死体が埋まっている」などに出演。2016年には「僕だけがいない街」「アイカツスターズ!」「魔法少女?なりあ☆がーるず」の他、「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」第29話にアケミ役で出演。

2017年には「天使の3P!(スリーピース)」の金城そら、「つうかあ」の宮田ゆりのように、主要なキャラを担当することが増えた。「天使の3P!」は、古賀が学生時代に軽音楽部でドラムを担当していたことも生かされている。幼稚園の時に和太鼓をたたいた経験があり、小学生の時はマーチングバンドでドラムを担当。中学生の時に本格的にドラムセットに触れ、ドラム教室にも通っていたほどハマっていたという。この作品では違う役でオーデションを受けたものの、その経歴が決め手となって金城役になったようだ。そんなふうにしてフィールドを広げていき、2018年も前年以上に多くの作品に出演している。

■ターニングポイントは“かぐや様”

そんな古賀の大きなターニングポイントとなったのが2019年。アニメ「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」で主人公・四宮かぐや役を務めた。出演作品数は増えていくけれど、オーディションで苦戦することも多かったそうで、この主演によって大きな自信につながったのは間違いない。「かぐや様〜」は駆け引きというか、テンポのいい会話・対話が大きな魅力だが、まさにハマり役となった。

視聴者の反応がいいのはもちろん、これによって古賀葵の存在をより知らしめることができ、2020年3月7日に開催された「第十四回声優アワード」で主演女優賞を受賞した。受賞時のスピーチで「私にとって見える世界を180度変えてくれた、いろんな景色を見せてくれた大切な作品」と思いを語っているように、ここがターニングポイントとなり、さらなる飛躍の起点となった。

2019年に橋本環奈主演で実写映画化された「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」にも古賀は出演。こちらでの役柄は”古賀葵“という名前の映画館スタッフ。これが実写映画初出演となったが、実写版かぐや(=橋本)ともさりげなく共演していて面白いのでぜひ実写版もチェックしてもらいたい。

「かぐや様〜」の中でもいろんな声の表現を楽しむことができるが、キャラによって全く違う雰囲気を出せるのが古賀の大きな武器であり、魅力となっている。2019年の「賢者の孫」での気の強そうなクリスティーナ=ヘイデン、2020年のゲーム「原神」の元気で子どもらしいパイモン、「恋する小惑星」の滑舌の良い伊部小百合、「ダーウィンズゲーム」の意志の強そうな志藤アカネ、2021年の「異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術」の言葉が強めのロゼ、「ぼくたちのリメイク」のゆったりした空気感を持つ志野亜貴、さらには「古見さんは、コミュ症です。」の古見硝子役など、同じ人が演じているとは思えないくらい振り幅が広い。

■言葉数が少ない役でも存在感を発揮

“伝えたいけど伝えられない”古見硝子はセリフの量は少ないが、表現が難しい役でもうまく演じている。声優になりたいことを誰にも伝えられなかった古賀自身と重なる部分も多く、共感して気持ちをリンクさせることができたのかもしれない。

放送中の「SYNDUALITY Noir」のノワールも、周囲の人たちと関わることでセリフの表現や印象、感情なども変化していっているので、どのような表現をせりふで聞けるのか楽しみだ。

さらに、10月から放送スタートする「16bitセンセーション ANOTHER LAYER」の主人公・秋里コノハ役を古賀が演じることも決定している。今後もますます活動の幅を広げていきそうだ。

◆文=田中隆信