栗山千明主演、馬場ふみか、柳俊太郎出演のドラマプレミア23「けむたい姉とずるい妹」(毎週月曜夜11:06-11:55、テレビ東京系)の第6話が11月13日に放送された。律(柳)が、自分にとって妻・らん(馬場)がどれだけ大きな存在だったかに、やっと気づいた。一方、らんは律への気持ちが愛なのか孤独の穴埋めなのかわからなくなり、愛のベクトルの方向が大きく変わる展開となった。(以下、ネタバレを含みます)

■夢見た2人きりの生活を始めたじゅんと律

同ドラマは、ばったんによる同名漫画が原作。妹の略奪愛が原因で音信不通の不仲となった姉妹が母の死をきっかけに同居することになり、姉の元カレで、現在は妹の夫である男性を巡って壮絶なバトルを繰り広げるストーリーだ。

心療内科で働き、真面目で道徳心が強い異父姉妹の姉・東郷じゅんを栗山が、母親の愛情を集めた姉を妬んで生きてきた異父姉妹の妹・三島らんを馬場が、妹の夫であり高校時代の姉の元カレで、姉妹を狂わす存在の三島律を柳が演じる。

律を繋ぎ止めたくてついた「妊娠」の嘘が律にもバレてしまったらんが家を飛び出してから2週間が経った。じゅんは、遂に手に入れた律との2人きりの生活に幸せと安らぎを感じていた。

そんな彼女に友人は、「一度不倫した男は、また繰り返す。浮かれていられるのも今のうち」と釘を刺した。そんなわけない、と反論するじゅんだったが、思えばこの2週間、律が全然自分に触れてこない事を思い返して、不安がよぎった。

そんな中、らんがSNSに律の寝顔の写真と共に「明後日は私の誕生日。夫と2人で祝う約束をしたの!」とアップして、じゅんは混乱する。そして、LINEを未読スルーして帰宅しても声もかけず、朝も目も合わせずにそっけない態度で出勤する律に、さらに不安を募らせた。

■律の愛を信じきれないじゅん

このまま律がらんの元に行ってしまうんじゃないか…と思ったじゅんは、らんの誕生日の朝、「今夜、デートしよう」と誘ってみた。唐突な誘いに戸惑っているような律に、高校時代に初めてデートした時みたいに夜景を見に行きたいのだと訴えた。だが、強引には誘わずに「考えといてよ」と引き下がった彼女に、律は「何時?仕事、頑張って早く終わらせるよ」と答え、じゅんは一気にテンションが上がるのだった。

律の態度が昨日からおかしかったのは、意を決して書き始めた小説を編集長に「才能がない」と一蹴されたのが原因だった。律の心は、じゅんへの想いでいっぱいのままだった。じゅんは、またしても律の気持ちが信じられなかったようだ。

■律が戻ってくる事を信じるらん

一方らんは、誕生日当日も毎年律と祝っている店の前で「今年も楽しみー!」とSNSを上げていた。そんならんの態度を心配するいとこのひかる(桜田通)は、彼女に律を諦めたんじゃなかったのか?と尋ねた。らんは、諦めたんじゃなくて距離を置いているだけだ、と言い、「そばにいる方が有利だとは限らない」と、自信を見せた。そして「りっくんは、とっても優しくて最高の夫」と、何の不安もない表情で、ひかるに告げた。

■「来なかったら死ぬから」

その夜、高校時代に戻ったように幸せな時間を過ごすじゅんと律。その時、らんはレストランで律を待ち続けていた。「早く来て」とLINEを連投しても既読は付かず、たまらなくなったらんは、律に電話を。じゅんとのデート中に非通知でかかってきた電話に出た彼に、「今日、何の日か知ってるよね?」と、らんは言い、店に来なかったら死ぬ、と脅しをかけた。

らんは「妊娠」とか「自殺」とか、いちばんついてはいけない嘘でいつも律を縛ろうとする。特に「自殺」は彼にとってはトラウマだ。高校時代、じゅんとの同棲計画を知った律の母親が自殺未遂をした為に、彼はらんの嘘を信じたじゅんの誤解を解く機会を失い、彼女を諦めるしかなくなったのだ。律は、あの時の事がよぎったが、「もう二度と同じ間違いはしない」と、今回はじゅんを選んだ。

■ 「1人になりたくないから、律と一緒にいたの?」

待ち続けるらんの元にやって来たのは、ひかる。律から「代わりに行ってくれ」と連絡を受けて来た彼は「いい加減にしなよ。いくら脅してもムダ」とハッキリらんに告げ、律はもうらんを見てないのだと、諭した。そんな事は、とうに彼女もわかっている。だが、母親の愛情を受けられず(と、らんは思っている)、孤独を感じて生きてきた彼女は、同情だろうが何だろうが自分を見てくれていた律を手離す事ができないのだ。

もうひとりぼっちに戻りたくない、と言うらんに、ひかるは「ただ1人になりたくないから、律と一緒にいたの?」と、核心を突く問いかけをした。律が好きで一緒にいたのではないとすれば、13年もらんに付き合わされた律が可哀想、とのひかるの言葉に、らんは、誰でもいいわけじゃなくて律だから一緒にいいのだ、律じゃなきゃダメなのだ、と自分に言い聞かせるように、強い口調で反論した。

だが1人になり、「ただ孤独がイヤで律と一緒にいたのか?」というひかるの言葉を思い返し、それを律が聞いたらどう思うのか、と考え始めた。すると、律の反応がわからなかった。律は怒るのだろうか。らんは、律が怒るところを見た事がなかった。それどころか、彼が喜ぶ事、嫌がる事――彼について実は何も知らない事に気づいてしまった。

■やっと気づいたらんの存在の大きさ

一方、律は、自分の小説が他社の編集者からも「量産型」「才能がない」「魅力がない」と酷評を受けて心が折れていた。そんな事を知らないじゅんは、彼の夢を応援しようと力になろうとするが、今の彼には負担でしかなかった。同じ方向を向けなくなっていた2人は、一緒にいてもお互いを遠く感じた。

じゅんは、少しでも律を感じたくて、出勤時の信号待ちの時に彼と手をつないだ。律は信号を2人で渡りながら、らんと同じように手をつないで渡った時の事を思い出す。そして、ダメな自分の小説の内容を興味深そうに聞いてくれたり、「いるだけで私を幸せにしてくれる。世界で一番すごい事」と存在を肯定してくれたらんとの思い出が甦り、実は自分がらんを支えていたのではなく、らんに支えられ救われてきたのだと、13年経ってやっと気づいた。手を繋いで、隣で共に歩くじゅんと、引っ張って自分を走らせていたらん。

■ 「手に入らない物は美しい。ただそれだけ」

「手に入らない物は美しい。でも美しいだけ。ただそれだけ」。律にとって、じゅんは気持ちを残したまま別れてしまった後悔と郷愁で美化され、当時の美しい思い出をなぞっていただけなのかもしれない。13年間共に過ごしたらんの存在の大きさに今さら気づいた律は、じゅんの手を思わず離し、自分の愚かさに自責の念にかられながら「ごめん…」と涙を流した。感情をあまり見せない彼が流す涙は重かった。

らんへの想いに気づいた律と、律を愛していたのかどうかわからなくなったらん。次回予告では「離婚する事にした」と言うらんの姿が。この状況で、唯一変わらずに律を愛するじゅんは、律の“心変わり”をどう受け止めるのか気になる。

※柳俊太郎の柳は正しくは「木へんに夘」

◆文=鳥居美保