11月20日放送の「けむたい姉とずるい妹」(毎週月曜夜11:06-11:55、テレ東系)の第7話で、夫・律(柳俊太郎)への気持ちが愛ではなかったと気付いたらん(馬場ふみか)が新たな一歩を踏み出す姿が描かれた。また、姉・じゅん(栗山千明)との関係にも変化が見られ、ただの“ドロドロ三角関係ドラマ”ではない深みのあるストーリーで、引きつけられる回となった。(以下、ネタバレを含みます)

■じゅんとの家を出る律

同ドラマは、ばったんによる同名のマンガが原作。妹の略奪愛が原因で音信不通の不仲となった姉妹が母の死をきっかけに同居することになり、姉の元カレで現在は妹の夫である男性を巡る争いを軸に、それぞれの心の傷と向き合っていく。

これまで自分を支えてくれていたのは、じゅんではなく、妻のらんだったと気付いた律は、これ以上じゅんと暮らせないと感じて家を出ることにした。「らんとはいまだに連絡が取れないが彼女と話したい」と言う律に、「あんたが人と向き合うなんて、一生無理だよ」と辛らつな言葉を浴びせるじゅん。律はそれには答えず、ただ「ごめん」と言い残して去って行った。1人残された彼女は、やっと律と通じ合えたと思ったのもつかの間、また彼が離れていったことが悔しくて悲しくてやりきれない気持ちになった。

■自分と向き合い、前を向き始めたらん

一方、律を求める気持ちが愛ではなかったことを自覚したらんは、待ち焦がれていたはずの彼からの「会いたい」という連絡に対して、会えばそのことを確信しそうで、すぐには返事ができないでいた。

らんが本当に欲しかったのは律ではなくて母の愛だったと理解した、いとこのひかる(桜田通)は、自分も過去に母の一言で大きく傷ついたが、それを訴えることで母から謝罪されたことを打ち明け、「乗り越えるのは自分自身」と助言した。

実は、らんも母に自分の気持ちをぶつけたことがあった。母が病気で入院したことを知った彼女は今まで会いに来なかったことを謝った。そして、欲しい物があるかと尋ねた彼女に、母は「じゅんを呼んで」と言ったのだ。「家のことなど大事なことを伝えたい」と言う母にショックを受けたらんは「私には何か言うことは無いの?」と言い、「母が姉のことばかり見てずっと寂しかった」と訴えた。それを聞いていた母は、ため息をついた後、「何でそんなこと言われなきゃならないのよ。私なりに一生懸命“お母さん”してたのに」と吐き捨てるように言ったのだった。

この時に、あなたも大切だ。そんな思いをさせてごめんね、と母が言っていれば、らんは救われたはずだ。忌の際まで娘を傷つけるこんな母親は最悪だ。SNSでも「毒親すぎて無理!」「姉と妹の愛情格差がつらい」「さすがにらんが可哀想」など、母親への怒りコメントが連投された。

もう亡くなってしまった母と和解することはできない。このトラウマを乗り越える方法が分からず苦しむらんを、ひかるは見晴らしの良い高台に連れて行った。目の前に広がる美しい景色を見て、彼女は今までずっと自分が律と母親の愛を求めることが全てで、他の物は何も見えなくなっていたことに気付くのだった。

■らんの寂しさに気づくじゅん

じゅんは、母の納骨式を前に遺品の整理にやって来た叔母と話す中で、自分には常に厳しかったと感じていた母が実は自分を溺愛していたことを知った。アルバムには自分の写真ばかりでらんの誕生日の写真さえ無いことに気付いたじゅんは、彼女の写真を探した。やっとらんの写った写真を見つけたが、それはどれもがメインではなく、じゅんと母を遠くから眺める姿や母の後ろにいるものばかり…。彼女はそこで初めてらんの寂しさに気付いたのだった。

■思いをぶつけ合い、距離が縮まった姉妹

納骨式にやって来たらんとじゅんは久々に再会し、気まずい空気が流れた。2人きりになり、「こいつのせいで私の人生めちゃくちゃだったんだから!」と、母の墓を蹴ろうとするらんを、じゅんは「いつも何でも人のせいにする」ととがめた。そして、自分も母を許せないが、母のせいではなく自分が選んできたことが今の自分を作ってるのだ、と諭し、「甘えんな!」と一喝した。

そんな姉に対し、「正論が吐ける人生がうらやましい」とらんは言い、欲しい物を姉が全て持っていること、母に褒められたことすら無かったことを告げ、「お姉ちゃんなんか大っ嫌い!でも、お姉ちゃんになりたくてなりたくてたまんないの!」と気持ちをぶちまけた。

自分の気持ちなど分からないと言う妹に、じゅんは「他人なんだから分かるわけない」と冷たく返した後、自分もらんが大嫌いだと気持ちをぶつけた。だが続けて、「逃げないでこの場に来たのは偉い」「頑張ったね」と心からの言葉をかけた。

ずっと欲しかった言葉をくれて、初めて自分を見てくれた。それが母でも律でもなく大嫌いな姉だったが、らんは泣き崩れた。そんな彼女を見て、泣き虫で甘えん坊でめんどくさいけどほっておけなかった幼い頃のらんが重なり、じゅんは「帰るよ」と、らんの頭を優しく撫でた。姉妹の心が少し近づいた瞬間だった。

■らんに愛を告白する律

その夜、家に戻ったらんとじゅんの元に、律も帰って来た。SNSでは「もうこの男、要らないんだけど?」「のこのこ帰って来たよ」と完全に邪魔者扱いだ。本当に、どの面下げて帰って来たのか…。そして帰ってくるなり、らんに「話がある」と言い、らんもそれに応じた。

らんは、土産の桃を律に渡すが、桃アレルギーだと言う律。13年間一緒にいて、そんなことさえ彼女は知らなかったのだ。そして、彼女は誰かに愛されないと生きていけないと思っていたために、彼の優しさにつけこんでしがみついていたことを謝った。「これからはりっくんのために人生を使ってください。私もそうするから」と告げた。彼女はこの数日で大きく成長した。彼女の目に強い意志を感じた律は、よりを戻したいという自分の思いを飲み込むしかなかった。

だが、律は意を決して、らんに「らんちゃんがいなくなるのは嫌だ。好きだ」と告げた。今まで大事なことを何も言ってこなかったことを悔やむ彼を見て、らんは、初めて律の気持ちに触れた気がする、とうれし涙を流すのだった。やっと自分と向き合ってくれた律。こちらから尋ねるのではなく自分から「好き」と言ってくれた律…。これで彼女は気持ちの整理がしっかりついて、前を向いて生きていける気がする。

2人はその後、今さらながら互いの好きな物を尋ね合ったり律の小説のことなどを話しながら、やっと対等に気楽に会話を楽しんだ。晴れやかならんの横顔を、律は思いの詰まった表情で見つめていた。

■離婚を決意したらん

その頃じゅんは、1人河原でタバコを吸いながら、自分の気持ちを伝えてできることは全部やってきた、自分は正しかったのだ、と自分に言い聞かせながらも溢れ出る涙を止められなかった。

翌朝、らんは「律と離婚することにした」とじゅんに告げ、「お姉ちゃん、今までお世話になりました」と穏やかな表情で礼を言った。

次回、最終回。らんに思いが完全に傾いた律は、もうじゅんには戻らないはずだし、律に思いをまだ残しているじゅんもそんな律をさすがにもう手に入れたいとは思わないだろう。気持ちの整理がついたらんは、律と新たな関係を築くことにするのだろうか…。3人3様の新たな第一歩の先は、どこに向かうのか。

◆文=鳥居美保

※柳俊太郎の柳は正しくは「木へんに夘」