10月27日より公開中の映画「愛にイナズマ」。豪華キャストが織りなす、笑いと感涙の痛快エンタテインメント作品で、今の社会を予見したような“アフターコロナ”の世界が舞台となっている。そんな本作の主演に抜擢されたのは、今年夏クールドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」での教師役の熱演が記憶に新しい松岡茉優だ。今回はそんな松岡が主演を務める「愛にイナズマ」のあらすじや見どころに加え、彼女のこれまでの経歴や魅力について深堀りしていく。

■「愛にイナズマ」では崖っぷち新人映画監督を熱演

主人公の折村花子(松岡茉優)はやっとの想いでデビューが決まった新人映画監督。お金がない中で、日々映画作りに奔走するが、助監督(三浦貴大)にパワハラやセクハラを受けプロデューサー(MEGUMI)に騙され監督デビューの話も奪われてしまう。

そんな中バーで偶然出会った正夫(窪田正孝)に“夢を諦めるのか”と感化され、長年疎遠だった家族の協力を受けながら「見返してやる!」と誓う花子。

その後実家に戻り、父親の治(佐藤浩市)、長男・誠一(池松壮亮)、次男・雄二(若葉竜也)と久々の再会を果たすものの、口だけが上手い長男に、ストレスをため込んだ次男、母親に愛想をつかされた父親、と家族の状態は見るにも堪えぬ“バラバラ状態”だった。

それでも花子は家族とともに衝突しながら過ごしていくことで次第に会話が生まれ、修復不可能かと思われた関係が変わり始める。中でも“治の秘密”が明らかになるシーンでは、涙が止まらない感動が押し寄せてくる――。

■“新人映画監督役”を通して見せる葛藤や成長

本作における松岡の役どころは、“理不尽な状況でも自分の主張を貫きたいが、社会の中でうまくやっていくには「普通」を演じなければいけない”という状況にもがき苦しむ新人映画監督だ。

仕事現場では理不尽なことを次々とぶつけられ、挙句の果てにはセクハラを受けたりと状況は最悪…。その恨みを晴らすように、家族や正夫へ怒りの感情を爆発させるシーンは、どこか痛々しくも、一筋縄ではいかない26歳の女性を見事に表現していた。

また、自分の家族に対して嫌悪感を抱いていた花子が、“家族”を通して徐々に成長していく姿も必見。本作で見せる松岡の表情や言動は、多くの人の心を突き動かすだろう。

ちなみに松岡は、以前インタビューで「もっと大変になってしまった世の中で、勝ち上がってやるんだ、という花子の全身全霊を、私が止めてなるものかと挑みました」と語っていた。本作では、全力で挑んだという松岡の迫真の演技が映し出される。

■ある時は「冷厳な教師」、またある時は「家出女子高生」…幅広い役柄を担当

1995年に東京都で生まれた松岡は、8歳の時に妹が芸能事務所からスカウトされ、母親とともに妹の面接に同行した際、面接官に誘われて芸能事務所入りをする。

世間に知れ渡るようになったのは2013年に放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」で、アイドルグループ「GMT47」のリーダー、入間しおりを演じた時だった。責任感が強くグループ想いで熱い役どころは、世間から多くの支持を集めた。

それ以降数多くの映画やテレビに出演し続ける松岡だが、記憶に新しいのは「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」(日本テレビ系)の教師、九条里奈役だ。自身初となる学園サスペンスで、冷静で淡々と振る舞いつつも内に熱いものを秘めた難しい役どころを好演し、話題を呼んだ。

もちろん、松岡が評価された作品は他にも数多く存在する。例えば2016年放送のNHK大河ドラマ「真田丸」では、真田信繁(堺雅人)の正室・春役を担当。一途で愛らしい女性かと思いきや、娘に夫の前妻の名前を付けたり、嫉妬すると障子に穴を開けてしまったりと変わった行動を見せた。これまでのイメージを覆した松岡の“見事なギャップ”を演じたことも相まって、ネット上では春について「ヤンデレ」などのコメントが続出。強烈的なキャラクターとして注目を集めた。

また2016年、2018年に3作シリーズで上映された映画「ちはやふる」では、“クイーン”と呼ばれる主人公のライバル的存在の若宮詩暢役を熱演。近寄りがたい雰囲気と毒舌なキャラクターで新境地を開拓している。

さらに2018年、第71回カンヌ国際映画祭パルムドール「最高賞」受賞作品「万引き家族」では、家族との関係に悩んで家出をする女子高生を演じた。“JK見学店”で働くというハードな役どころに体当たりで挑み、その女優魂は世間から多くの称賛を得ている。

そして2020年に放送されたドラマ「おカネの切れ目が恋のはじまり」(TBS系)では、お金や恋に一途な女性を演じ、金銭感覚が自分と真逆の浪費家男子とのラブコメをさわやかに表現した。

このように出演する作品によってさまざまな表情を見せてくれる点が、松岡の魅力の1つと言えるだろう。そして“難しい”とされる役どころも猪突猛進で挑んでいく姿は、まさに「愛にイナズマ」の花子に通ずるものがある。同作では窪田正孝と“芝居の殴り合い”というべき激しい感情演技をぶつけあう姿が視聴者の胸を打つだろう。